雨用タイヤ先行投入の賭けに出たWRT、逆転優勝目前まで迫るも「グリップを欠いた」/スパ24時間

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2021年08月02日 17:51  AUTOSPORT web

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アイアン・リンクスの51号車フェラーリ488 GT3 Evo(前)と熾烈なトップ争いを繰り広げたアウディスポーツ・チームWRTの32号車アウディR8 LMS
ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された2021年のトタルエナジーズ・スパ24時間は、レース最終盤にトップに立ったアウディスポーツ・チームWRTの32号車アウディR8 LMSと、アイアン・リンクスの51号車フェラーリ488 GT3 Evoの一騎打ちとなり、ラスト10分でアレッサンドロ・ピエール・グイディ駆る後者が再逆転に成功し栄冠を勝ち取った。

 フェラーリに次ぐ総合2位となった32号車アウディのドライバーであるドリス・ファントールは、レースの大部分を支配していたライバルから順位を奪い取った彼の最終スティントで履いたレインタイヤが「グリップを欠いていた」といい、アウディR8 LMSのポテンシャルを充分に引き出せなかったと説明した。

 フィニッシュまで残り約53分、上位陣では一番後ろで最後のルーティンピットタイミングを迎えた32号車アウディは直後の降雨を予想し、まだ路面が乾いている状況のなかウエットタイヤを装着してピットアウトした。
 
 地元ベルギーのチームであるアウディスポーツ・チームWRTの驚くべき戦略はこの直後、見事にはまり“スパウェザー”を味方につけてアイアン・リンクスのフェラーリを逆転することに成功する。

 しかし、レース時間残り27分でセーフティカーランが解除されると、2番手に順位を落としたフェラーリが猛追を開始する。ピエール・グイディがドライブする51号車はまたたく間に複数台のバックマーカーを処理してファントール駆るアウディの背後につけると、雨が降り続くブランシモンでアウト側からオーバーテイクを決め首位の座を奪還。勢いそのままにトップチェッカーを受け、跳ね馬に2004年以来となるスパ24時間の総合優勝をもたらした。

「僕は何年もアウディを運転してきたのでウエットやドライでのフィーリングは熟知している。リスタートしてまもなく、すぐに思うようなグリップが得られていないことに気がついた」と語るのは、ケルビン・ファン・デル・リンデとシャルル・ウィーツとともに32号車アウディをシェアして今戦を戦ったファントール。

「やがて彼(ピエール・グイディ)が僕に追いついたと知らされた。その時点で僕はできる限りのことをした。しかし、最後に小さなミスをしてしまい、ブランシモンで彼に横に並ばれてしまった」

「僕たちは非常に接近していたが、お互いに信用しあっていたと思う。僕は接触しないように努め、彼もまた同様にしていたのでフェアないい動きだったよね。もし、2台が接触していたら結果は違っていただろう」

「彼らのクルマはドライでもウエットでも速かった。一方、僕の方はフロントのグリップが足りなかった。縁石を正しく使おうとしてもまったく機能しなかった。そこが苦労したところだね。濡れた路面でクルマをスピンさせずに走らせることは、とても難しいことなんだ」

■勝ちに行くために残された唯一の戦略を実行

 前述のとおり、アウディスポーツ・チームWRTは雨が降り始める前にウエットタイヤを履いたマシンをコースに送り出す“ギャンブル”を行い、一度はそれを成功させた。

 しかし2度のスパ24時間優勝経験を持つWRTのスポーティングディレクター、カート・モレケンスは優勝を狙うための主要な戦略オプションであったにもかかわらず、レースの最終段階でアウディを危険にさらすことになったと説明した。

 彼はSportscar365に対し、「フェラーリがタイヤ交換のために追加のピットに戻ったとき我々のクルマは最終コーナーを通り抜けていた。これによって得たギャップは約75秒で、仕事は終わったようなものだった」と語った。

「突然の雨はクラッシュのリスクを高め、実際に起こった。それによって一度は大きく開いたギャップは(セーフティカーによって)元に戻されたが、私たちのクルマと彼らの間には複数台のクルマが挟まっていたので最後の30分を生き残るには充分だと思っていた」

「とはいえ、乾いた路面にウエットタイヤのクルマを送り出したのだから多少は苦しくなるのは当然だ。半周以内に雨が降り始めたが、セクター2の大半は乾いた路面を走らなければならなかった。そうするとラバーの表面が焼けてしまう」

「ピットレーンで雨が降っていたので『これで大丈夫。仕事は終わった』と思っていたのだが、実際にはセクター2は完全にドライだったんだ」

「そこでゴムブロックの表面が解け、その上で転がり始めてしまう。そのようになったタイヤで雨量が増えるとグリップが低下してしまうんだ。しかし、我々にはあれ以外に選択肢はなかった。最後のピットストップをスリックで出ていき、他のクルマと同じように、もう一度ピットに戻っていてはチャンスはまったくなかっただろう」

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