安東弘樹のクルマ向上委員会! 第49回 ひけらかさない魅力がある? 安東弘樹、マクラーレンに乗る!

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2021年08月10日 11:01  マイナビニュース

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安東弘樹さんが「マクラーレンGT」と「720Sスパイダー」に試乗した。超高級スポーツカーはたくさんあるが、マクラーレンに乗ることで得られる楽しみや満足感とはどういったものなのか。日本で乗っても、マクラーレンを楽しむことはできるのか。率直な感想を聞いた。

マイナビニュース編集部(以下、編):乗ってみてどうでしたか?

安東弘樹さん(以下、安):首都高速や東名高速道路を中心にそれぞれ2時間ちょっと、距離にすると100キロ前後、運転することができました。試乗後の最初の印象は、両車ともに「普通に乗れる」でしたね。GTが最高出力620PS/最大トルク630Nm、720Sスパイダーに至っては720PS/770Nmという途方もないスペックですが、スポーツモードを選択して走っても、うまくクルマが制御してくれているんでしょうね。

安:GTの方は、私が好きな紺色の外装に明るいベージュ内装で、エレガントともいえるたたずまいで好印象です。実は、ヘッドライトの造形が、これまでのマクラーレンの中で「最も私の好み」といえるものでした。

これまでのマクラーレンは垂れ目で、正面から見ると「ニヤッ」と笑っている顔に見えて、実はそんなに好きではなかったのですが、GTは素直に「洗練されていてクール」だと感じました。

安:720Sスパイダーの方は、「黄金色」というのにふさわしいボディに睨みつけるような目で、これぞスーパースポーツカーといった造形です。後ろからこのクルマが迫ってきたら、思わず道を譲るでしょうね(笑)。エンジンの咆哮もうるさくない程度に聞こえてきますし、面白かったのはフルディスプレイのタコメーターなのに、昔のアナログメーターのように「あえて」震えて針が動くようになっているんです。思わず笑ってしまいました。より「正確に」表示しているのかもしれません。

安:どちらのクルマも、一般公道で気難しい挙動はなかったです。720Sの試乗時には、首都高で事故による大渋滞に30分も巻き込まれてしまったのですが、少し水温、油温は上がったもののエアコンは変わらず効いていましたし、問題は起こりませんでした。ただ、GTの方のナビゲーションは広報の方いわく、「少し調子が悪いので、あまり頼らないで下さい」とのことでした。今回は知っている道で試乗したので、実際のところは分かりません(笑)。720Sのナビは全く問題なく道案内してくれました。

公道での試乗ですので、620PSと720PSを体感するのは困難でしたが、東名高速道路の料金所でETCゲートに20Km/hで入り、そこから加速する際には、GTで0-100km/h(停止状態から時速100キロへの加速に要する時間)3.2秒、720Sスパイダーで同2.9秒の片鱗を感じることはできました。しかも暴力的な加速ではなく、気付いたら速度に乗っている、という感覚です。

安:こういったクルマを所有するには、例えば上に跳ね上がるドアなど、普通とは違う部分が結構あるので、慣れが必要でしょうね。駐車の際は、前も後ろもなのですが、クルマ止めにタイヤが当たってしまうと、ボディ下部にもれなく傷が付いてしまいますので、このあたりも要注意です。ただ、前にも後ろにもセンサーやカメラが装備されていますし、所有すればすぐに慣れると思いますよ。

ちなみに、オーナーになるにはGTで2,695万円〜、720Sスパイダーで3,859万円〜が最低限、必要になりますが……(苦笑)。

編:超高級スポーツカーは数ある中で、マクラーレンを選ぶ理由とは何でしょうか? マクラーレンならではのよさとは何ですか?

安:実はクルマを借りる時、某ビルの地下駐車場で引き取ったのですが、その駐車場には、世界の名だたるスポーツカー、スーパーカーが、「普通に」とまっていました。そこで改めて、マクラーレンのデザインを含めた「独自性」に気付いたんです。

このクラスのクルマにはもちろん、それぞれに独自性はあるのですが、デザインが極めて「有機的で」、一目で「マクラーレン」だとわかる主張が、モデルの年式に関わらず表現されています。GTの内装は色遣いや素材感が上質で私は好きですし、メーターの造形、パワーの盛り上がり方など、あくまでアンダーステートメント(ひけらかさない)に徹しているのを感じます。まあ、ひけらかさないといっても否が応でも目立ちますが(笑)。その方向性が好きであれば、このクルマを選ぶ価値はあると思います。

ここだけの話、駐車場でマクラーレンGTの隣にとまっていた、某イタリア製のスポーツカーの方が価格は上でしたが、パッと見た感じ、マクラーレンGTの方が高価に見えました!

ただ、富裕層の皆さんの気持ちはわからないのですが、数千万円のクルマでありながら、ナビの調子が悪いというのは残念です。変な言い方かもしれませんが、では1,000万円値上げしてでも、完璧なナビを付ければいいのに、なんて考えてしまいます。

富裕層の方は、そんなことは気にならないのかもしれませんね(笑)。

編:比べるべきではないかもしれませんが、「GR 86/BRZ」(トヨタ自動車とスバルの共同開発スポーツカー)に乗られたばかりだと思うのでお聞きします。スポーツカー(スポーツカーづくり)における日本と海外の違いはどういったところだと思いますか?

安:まず第一に、日本にはスポーツカー専門メーカーがないですよね。

安:今回のマクラーレンはイギリスのブランドです。近年はドイツ製のパワーユニットを使っていたりはするものの、イギリスにはアストンマーティン、マクラーレン、ロータス、ケータハム、モーガン、BACなど、メーカーの大小に関わらず、ほとんどスポーツカーしか作ってこなかった、あるいはスポーツカーしか作ったことのないメーカーが現存しています。日本とは歴史が決定的に違いますよね。

ヨーロッパ、特にイギリスのクルマの歴史は、すなわちスポーツカーの歴史です。

日本メーカーは「実質」、戦後から歴史が始まり、最初から「実用車」をいかに安く、大量に作るかを目標に頑張ってきたんだと思います。ですから、戦後から今日まで、軽自動車も全メーカー同価格帯ですし、登録車も実質、同価格帯、同クラスのクルマで競い合って成長してきました。

そこに、ごく稀に「名車」といわれるスポーツカーは存在してきましたが、あくまでメーカーの中の「亜種」であり続けてきたのが現実です。

GDPが世界で2位になっても(今は3位ですが)、社会に本当の余裕は生まれてこなかったのかもしれませんね。

スポーツカーは存在として無駄な乗り物ですが、EVになってもヨーロッパでは存在し続けるでしょう。

ですから、日本メーカーが作る「スポーツカー」は、どこか「実用車」から脱却できないものが大勢を占めますが、イギリスのスポーツカーは走るためだけの特別な「マシン」が多いのは確かです。いつも自分のロータス「エリーゼ」を運転するたびに、「これは日本メーカーには作れないだろうな」と実感します。エンジンが日本製(トヨタ製)なのにも関わらずです。

少し寂しいですね。

安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら(安東弘樹)

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