大人になり、結婚をして、旦那の海外赴任先に着いて行きました。私は自由になれたような気がしました。母親の支配から解き放たれて自由になることができ、旦那はダメな部分も認めてくれ、すべてを包んでくれる毎日が平和でした。そんななかで妊娠――。
今まで自分の中で思い描く「親」というイメージが、娘を支配し続けた「母」の姿しかない私。そんな私が実際、母になることが分かったとき、嬉しさと共に「母と同じように自分の子どもを思い通りにしてしまうのではないか」という一抹の不安がよぎってしまうのでした。
同じマンションに住んでいる駐在組の奥様のエリコさんが私に声をかけてくれました。私の暗い様子を見て、エリコさんは何か感じ取ってくれたのかもしれません。
私は黙ってエリコさんの話に聞き入っていました――。
後編へ続く。
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