フェミニズムは女も男も癒やす? 底抜けに明るいフェミ本とは

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2021年10月16日 16:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 ライター・研究者のトミヤマユキコさんが選んだ「今週の一冊」。今回は『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』(アルテイシア、幻冬舎文庫 825円・税込み)を取り上げる。


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 フェミニズムに関する本はここ数年でとても増えた。日本の作家、海外の作家、学術的な本から、小説、エッセイ、絵本まで。種類が増えれば、好みの一冊と遭遇する確率も上がる。本書は敷居が低くて、ノリが軽くて、底抜けに明るいフェミ本だ。きちんと勉強してからじゃないとフェミニストを名乗ってはいけないんじゃないかと考えるまじめな方にこそ、この愉快なコラムをオススメしたい。


「かつてはフェミニストと名乗ることに抵抗があった」と語る著者は、45歳の「JJ(熟女)」になったいま「オッス、おらフェミニスト!」と宣言するまでになっている。ヘルジャパンを変えるべく、クソなものにはクソと言い、怒りのエア法螺貝をブオオー!と吹き、共感の膝パーカッションを打ち鳴らす。セクハラ・パワハラ発言を撒き散らすならず者には、プーチン顔をお見舞いし、グレッチでぶつ用意もしている(意味不明な部分があるかもしれませんが、元ネタ探しも楽しみのひとつなので、解説はしないでおきます)。独自の言語センスが炸裂する文体はドライブしまくり。なんだかこちらまで勢いづいてしまう。


 愉快な本だが、重いところはしっかり重い。いわゆる毒親に育てられたことで自尊心をゴリゴリに削られた著者は、男性中心的な社会から女らしさを押し付けられ、さらにゴリゴリと削られた。彼女の半生は過酷だが、多くの女性にとって他人事ではなく、むしろ「地続き」のものだろう。女であるというだけでおかしな目に遭う。悔しいけど、今あるルールに従ってうまくやるしかないのかな。そんな諦念を覆してくれるのが、フェミニズムなのだ。


「私にとってフェミニズムは、生きるための心の杖だった。フェミニズムに出会ったことで、奪われたものを取り戻すことができた」


 奪われたものを取り戻すとは、過去の自分を救済することを意味する。フェミニズムに疎い人は、この思想に癒やしの効果があることを知らない。それは実にもったいないことだ。しかもこれ、癒やされるのは女だけではない。男らしさの押しつけが苦しい男性諸君の傷も、もれなく癒える。


 ちなみに「私は難しい文章を書けないので、中高生でもサラッとサラサーティに読めると思う」と書いてあるだけあって、入り組んだ議論は一切出てこないので安心してほしい。


「私のフェミニズムは『性差別を含む全ての差別をなくしたい』『大人の責任を果たしたい』というシンプルなもの」「フェミニスト=男嫌いと誤解されがちだが、私は『男』じゃなく『性差別』を憎んでいる」


 なにも難しいことは書かれていない。なんというか、人として当たり前のことのようにも思える。しかし、この当たり前すら守られていないのが現在の日本社会なのだ。本書で紹介される数々の事例が、それをイヤと言うほど思い知らせてくれる。NGT48のメンバーが暴行を受けた事件。テレビの『ワイドナショー』でベテラン俳優が「セクハラは必要悪」と語ったこと。モデルでタレントのマリエによる過去の性被害告発。いろいろと出てくるが、芸能界のひどさが抜群に安定している(褒めてない)。


 怒れるJJは満身創痍だ。目がかすみ、膝が痛み、物忘れが激しくなる。だが本書を読むと、若い世代を元気づけ導く力はたっぷり蓄えているのがわかる。昔は怖くてできなかった異議申し立ても、エア法螺貝片手にやってのけるのがJJだ。アンチはそれを女のヒステリーと呼ぶんだろうが、怒りが尊い感情であることを知ったJJはもう止まらない。わきまえてたまるか、ブオオー!

※週刊朝日  2021年10月22日号



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このニュースに関するつぶやき

  • そういえば、援助交際で辞職した人が国会議員になってましたね。フェミニスト議員連盟はダンマリなんだろうか。特定政党だと全く叩かれない風潮どうにかするべきだよな。
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  • 男性中心社会と表現するとまるでオトコは何の苦労もなくやりたい放題に聞えるのだが…オンナが女を強要されている以上にオトコは男である事を強要され続けている事実は無視されている現実。
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