女の子が抱えている困難をぶっちゃけた映画、人気コラムニストが『ビルド・ア・ガール』に込めた意味

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2021年10月20日 15:11  ウートピ

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『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズや『レ・ミゼラブル』などを手掛けたプロデューサーが、10代で音楽雑誌の人気ライターとなった英国の人気コラムニスト、キャトリン・モランの半自伝的小説『How To Build A Girl』を映画化した『ビルド・ア・ガール』(コーキー・ギェドロイツ監督/10月22日公開)。『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のビーニー・フェルドスタインを主演に迎え、自己実現、セックス、家族との関係など、少女が抱えるさまざまな問題を赤裸々にぶっちゃけたこの作品に込めたメッセージを、モラン自身が語った。

10代で経験したあれこれを、「すばらしい時間だった。あの頃に戻りたい」と思い出せる人はかなり幸せではないだろうか。あらゆることがトライ&エラーの繰り返しで、恥ずかしくて何十年たっても人には言えない失敗は一つや二つではない。ただ「10代という若さには価値がある。10代のうちにキラキラの経験をしなければイケてる女にはなれない」という謎の自意識だけは過剰で、理想と現実とのギャップに絶望的な気持ちになることも。自分の中の小さな世界しか知らないがゆえに真っ暗闇に包まれても、周りに「やり直しは何度でもできる」と肩をたたいて笑い飛ばしてくれる人はいなかったように思う。

映画『ビルド・ア・ガール』(10月22日公開)の原作者で、英国の人気コラムニスト・作家のキャトリン・モランは、「女の子が実際に人生の中で抱えている困難について取り上げることが、彼女たちにとって大きな助けになる」という思いを込めて本も書いたと語る。

田舎の女子高生が人気ライターに大変身

主人公は、イギリスの田舎町のさえない女子校生ジョアンナ。大家族で家計は厳しく、学校に行けば肥満体形をバカにされる。だけど彼女の頭の中は果てしないイマジネーションと“私のはなし”でいっぱい。何者かになりたい彼女は、人気音楽雑誌のライターに応募。運よく仕事を手に入れ、毒舌批評を書きまくる人気ライターへと大変身を遂げるが……。

自身もジョアンナと同じようにイギリスの田舎町で育ち、16 歳で音楽雑誌のライターとなり、17 歳でタイムズ紙の週刊コラムニストとなるなど、10代の頃から文才を発揮してきた原作者のモラン。30代で自分の少女時代を振り返った原作を映画化するにあたり、一番やりたくなかったのは、「女の子が間違いを犯して、泣きながらゴミ箱に放り投げられて、『私は学ばなければならない。旅に出るわ』と言うような映画を作ること」だったと語る。

「主人公の女の子に、本当の意味での悪いことが起こらないようにしたかった。彼女には少し傲慢なところがあって、いくつか間違いを犯し、そこから学んでいく」

「10代で味わう危険を全部ぶち込んだから一緒に見よう」と言える映画

この映画の大きな見どころは、個性的なキャラクターを面白がられて音楽雑誌のライターに採用されたジョアンナが、取材対象のロック・スターに恋をし、舞い上がった記事を書いて大失敗。いい子ではウケないと考えた彼女は、毒舌批評を書きまくり、一躍人気ライターとなるジェットコースター展開だ。

有名人に取材するだけで自分まで特別な存在になれたと勘違いしたり、いわゆるバズり記事を連発して調子にのってしまったりする新人ライターは相当イタい。ジョアンナもその例にもれず、「イタい」では済まないことをやらかして奈落の底にたたき落とされる。ポップに描かれているが、相当ハードな青春だ。

「自傷行為について、映画の中で面白おかしく書いたり話してはいけないとされているんだけど、私は今世紀に入ってからの10代の女の子の自傷行為の統計は知っているし、私自身も数週間、自傷行為をした経験がある。でも、それを秘密の、暗い、怖い、重いテーマとして、真面目な顔でしか語れないようにはしたくない。女の子が実際に人生の中で抱えている困難について取り上げることが、彼女たちにとって大きな助けになると私は思う。

困難を笑い飛ばし、自分を笑い飛ばすことで、自分が抱えている重荷を軽くする方法を教えてあげるのよ。

私が13歳の時、母が言ったことを覚えている。『今後10年、あんたをワードローブに閉じ込めることができるなら、そうしたい。あんたはこれから地獄を見ることになるのよ』って。『10代がどれだけ危険で、ダークになることを私は知っている。それをすべて映画にぶち込むから、一緒に見ましょう。最後には何もかも万事解決するから』と言ってくれる作品が必要だから」

“魂の旅”を経験する必要はない…セックスを重苦しく描かない

この映画では、10代のジョアンナがマスターベーションにふけり、セックスに憧れ、それを楽しむ様子も描かれる。男子中高生の性の目覚めを取り上げた映画は古今東西たくさんあるが、少女が主人公の映画ではまだまだ珍しい。

「私がこの映画でやりたかったもう一つの重要なことは、10代の女性のセクシュアリティを楽しく、面白く、重荷にならないものとして表現することだった。繰り返しになるけど、彼女はこの件で魂の旅を経験する必要はないの。重大な教訓を学ぶ必要もない。10代の男の子がセックスするのは見たことがあるけど、10代の女の子がマスターベーションをしたり、何のしがらみもなく男の子とセックスしたりする映画は見たことがない。でも、10歳の女の子が公園でブランコや滑り台で遊ぶのと同じように、セックスは端的に楽しいことのはず。セックスとは基本的にそういうものでしょ。多くの10代の女の子がこの作品を見て、『初めて映画で自分自身の姿を見て、自分が普通だと思えた』と感じるはず」

自分に喜びを与えてくれるものだけに関心を払うこと

『ビルド・ア・ガール』に込めたメッセージを、モランはこう語る。

「10代のロック評論家だった頃の私は、大衆文化について全国誌に書くという、かなり珍しい力を持っていた。でも、そこで私が選んだのは、あることについて『これは素晴らしい』と言うのではなく、別のものを指して『これはひどい。このバンドは死ぬべきだ。こいつらは最悪だ。この音楽はゴミだ』と書くことだった。

それから30年たって、今では世界中の10代の女の子や男の子のほとんどが当時の私と同じ力を持っている。ソーシャルメディアのおかげでね。そして、彼らがソーシャルメディアでしているのは、何かを指さして嫌いだと言ったり、ゴミだと言ったり、荒らしたり、破壊したりすること。それよりはるかに有益な選択肢は、優れたものを見つけて『これは素晴らしい。ここに未来がある。自分に喜びを与えてくれる』と言うこと。嫌いなものについて何かを言う必要はないの。自分に喜びを与えてくれるものだけに関心を払うことを学べば、残りの人生を支えてくれるはず。

冷笑的な態度は、特に若い人にとっては、最初は大人や他の冷笑的な態度から自分を守るための殻になる。でも、冷笑主義という殻の問題点は、その中にいたままでは成長できないということ。とても制限があって、成長もできなければ、ダンスもできない。どこかの時点で、冷笑主義の殻を破って、再び何かを信じるようにならなければならない。実は、それがひそかにこの映画の本質的なテーマになっているの」

やがて自分の間違いに気づき、真摯にものを書くことで新しい道を開いていくジョアンナ。自分が“特別な誰か”ではなく、かといって“卑下すべき存在”でもなく、“普通の存在”として自分の個性を大切にして進んでいく。

大人になる道をちょっと間違えても、何度でもやり直せる。10代の頃に私たちが人に言えなかった悩みや痛みに悪態をつき、ガンガンやらかしてくれるジョアンナには、モランのそんなメッセージが込められているように見える。

■映画情報
『ビルド・ア・ガール』
公開日:10/22(金)より全国公開
(C) Monumental Pictures, Tango Productions, LLC, Channel Four Television Corporation, 2019
配給:ポニーキャニオン、フラッグ

(新田理恵)

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