「1点」にこだわる高津野球が結実! ヤクルトがセ界の頂点に【夢追うツバメたち】

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2021年10月27日 07:51  ベースボールキング

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セ・リーグ優勝を果たし、記者会見するヤクルト・高津監督
◆ 第24回:6年ぶりのリーグ制覇を遂げた要因

 高津ヤクルトが、セ・リーグの頂点に立った。マジック「2」で迎えた10月26日。横浜スタジアムで行われたDeNA戦に勝利。試合後、2位の阪神が中日に敗れて6年ぶり8度目のセ・リーグ制覇が決まると、高津臣吾監督は5度、横浜の夜空に舞った。
 
 昨年、「投手陣再建」を掲げて就任した高津監督は、2年目で連続最下位のチームを優勝に導いた。

 投手陣は、チーム防御率4.61と12球団ワーストだった昨年から、ここまで「3.45」と大幅に改善され、打撃陣に関しては、チーム得点数が600得点を超えた。投打にわたってチーム再建に成功した要因は何だったのか。

 チーム内に浸透させたのは、「1点」にこだわる野球だった。そのひとつとして、投手陣がいかに最少失点で抑えられるかが勝負の分かれ目になるが、投手出身の高津監督を始め、石井弘寿投手コーチや今季から加入した伊藤智仁投手コーチが、投手陣のコンディションを管理し、状態を見極めながらの起用法を徹底して行ってきた。また、新たな球種に挑戦させるなど、「失敗を恐れずにチャレンジしていく」ことの意識を植えつけていった。

 守備面に関しては「1つのアウトをしっかり取る」ことを念頭に取り組んできた。今季、三塁のポジションを守り続けた村上宗隆について、森岡良介内野守備走塁コーチは「スローイングが安定してきた」と評価。守備練習に関して選手が自主的に考えて取り組んでいることも明かした。

 攻撃面では「次の1点」をもぎ取るための策を講じてきた。積極的な盗塁に加え、バントや勝負所でのスクイズなど、細かな戦術も光った。下位を打つ西浦直亨や元山飛優、控えの渡邉大樹らが試合前にバント練習に励む姿は、自分の役割を把握して試合に臨んでいる証でもあった。

 野手陣だけではない。チーム最年長の41歳・石川雅規は“打席”での1点にこだわる姿勢について、こう明かしてくれた。

「9番目の打者ですし、やはりピッチャーがしっかりバントを決めるとか、ヒットでつなぐとかということになると、上位に回って得点のチャンスが増えるので、1打席も無駄にすることなくやりたいなと思いますし、打席でも何とか粘って1球でも多く相手ピッチャーに投げさせたいという気持ちもある。まずはバントですけどね。しっかり決めていくというのは心がけています」

 マウンド上ではもちろん、打席でも粘りを見せるのが石川の特長でもあり、得点圏に走者を進める送りバントも、きっちりと決める。勝つためにどうするべきかをベテランが率先して示した。


◆ “つなぎ役”に徹した中村悠平

 「1点」をもぎ取るため“つなぎ役”に徹したのが中村悠平だ。今季は「扇の要」として投手陣を引っ張ってきたが、打者としてはシーズン序盤から「2番」に座り、クリーンアップにつなげる役割を担ってきた。

 新型コロナの濃厚接触者に認定された青木宣親が復帰して2番に定着し始めると、今度は主に「6番」を務め、オスナとサンタナの間をつなげる重要な打順を任された。中村はこう話す。

「自分が決めるというか、後ろに回したい。後ろにサンタナとか、西浦が打っていますけど、そこにいい形でつなげられればいい。もちろん、四球もそうですし、ランナーがいても何とか後ろにつなげたい。ランナーがいなければチャンスメイクです」

 中村が言う「チャンスメイク」の場面として印象的だったのが、10月15日の巨人戦(神宮)の6回、2点を追いかける場面で先頭打者として打席に立つと、右中間へ二塁打を放って出塁。続くサンタナの同点2ランにつなげた。

 また、中村は「自分が決めるというのはこの前の二死の場面だけ」と話し、9月22日のDeNA戦(横浜)の9回二死一、三塁の好機でセンターへ決勝の適時打を放って勝利に貢献した。

 チームはこの試合で今季初めて首位浮上を果たし、巨人と阪神を振り払って混戦の上位争いを制した。11月10日から始まるCSファイナルステージを勝ち抜き、6年ぶりの日本シリーズ出場を目指す。

 短期決戦こそ、「1点」の重みが勝敗を左右する。次なる目標である「日本一」を手にするため、目の前の「1勝」を全員でつかみ取っていく。


取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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