スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキング Vol.18 伊沢拓也さん

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2021年12月04日 11:21  AUTOSPORT web

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2021年はModulo NSX-GTをドライブした伊沢拓也
2021年も、ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす企画をお届けしております。今回はYogibo Drago CORSEの道上龍選手から、Modulo Nakajima Racingの伊沢拓也選手に繋がりました。

 しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークのようなものができないか……? という企画が編集部内で出てきたのが2月。第1回の石浦宏明さんから阪口晴南さん、新田守男さん、高木真一さん、さらに片岡龍也さん、柳田真孝さん、星野一樹さん、本山哲さん、吉田広樹さん、蒲生尚弥さん、大嶋和也さん、松田次生さん、織戸学さん、篠原拓朗さん、坪井翔さん、立川祐路さん、道上龍さんと繋がっています。

 ちなみにこの連載、おかげさまで18回目なのですが、最近いろいろな関係者の方から「読んでますよ」という声をうかがっております。ありがたい限りですが、今回の伊沢さんもそのクチ。初のホンダGT500ドライバーとして、伊沢さんらしく連載の今後まで考慮していただいての取材となりました。ではどうぞ!

* * * * *

■ペットについてお悩みの道上家にオススメの解決策はコレ!
──さて。そんなこんなでお時間をいただきましてありがとうございます。大した取材ではないのですが、オートスポーツwebにて連載を行っておりまして。
伊沢拓也さん(以下伊沢さん):アレね。知ってるよ。

──おや。お読みになってます?
伊沢さん:けっこう楽しく読んでる(笑)。

──それはそれはありがとうございます。そんなわけで、今回は道上さんからお悩みを預かってまいりまして。
伊沢さん:お悩みを相談する人は、取材を受けた人が自分で決めて『この人で!』という感じなんですか?

──そうっす。『どうしようかな』というときもありますけどね。まず道上さんの悩みとしては、『いつまでチームを続けられるかという不安がすごくある』みたいなだいぶ重い内容でした。
伊沢さん:それはどちらが先? 僕が聞く人を決めるのが先? 悩みに答えるのが先? まず道上さんの悩みはそれということ?

──悩みに答えていただくのが先で。まずは伊沢さんに解決していただこうかと。
伊沢さん:ファーストタッチで言うと、僕が解決できそうにない悩み。

──そう思いまして、道上さんと『その悩み相談は無理じゃない?』という話になり、だいぶプライベートなお悩みになりました。道上家の下の娘さんが『最近すごく犬を飼いたい』そうで。伊沢さんも会ったことがあるとか。
伊沢さん:あります!

──でも道上家では犬を育てられる気がしないし、娘さんも絶対に世話が続かないだろうということで、道上さん的には絶対飼わせたくないということでした。それを『どうやって阻止したらいい?』というお悩みです。
伊沢さん:最近ね、無性に犬が欲しいなと……(笑)。

──聞く先間違えた(笑)。
伊沢さん:そう思って、ポロッと妻に(犬を飼いたい旨)聞いたら『無理』と言われました。無理なのは分かっていたうえで、犬にペロペロされたいなと思っています(笑)。でも最近、昔のAIBO(アイボ)みたいなロボットペットみたいなものがあるじゃないですか。この間テレビで観たんですよ。それで良くないですか?

──ほう。
伊沢さん:そう。なんだっけ。ロボット……いや、LOVOT(らぼっと)。これ、けっこう学習能力もあってお着替えもできて、この前テレビでやっていてカワイイなと思ったんですよ。どうすか?

──ちなみに伊沢さん、今までの人生においてペットを飼ったことはあります?
伊沢さん:僕のおばあちゃんが犬やネコのブリーダーをやっていたので、何年かウチにいたり、おばあちゃんの家に行けば結構いましたね。でも実際ちゃんと最後まで見届けたことはないです。

──なるほど。伊沢さんが反対された理由は何?
伊沢さん:『犬を飼いたい』と思っているだけで、実際は自分もやりきれないだろうし。それで言うと、ウチは子どもが動物がダメなので、家族のなかで僕だけが犬を飼いたいと思ってます(笑)。

──珍しいタイプかも。なるほど。
伊沢さん:なので、道上さんのお悩みに対しては『らぼっとはいかがですか?』という答えで。けっこう反応も面白そうなんですよ。

──でもペットを飼ったら飼ったで、特に子どもは責任感などが出たりするかなという気はするんだけどねぇ。
伊沢さん:ヒラノさんはネコ飼ってますもんね。でも家の事情で、毎日昼間は誰もいないという状況でしか飼えないのなら、それはちょっとペットが可哀想かなと。特に犬は毎日朝から晩まで一緒にいられる環境じゃないといけないと思います。ネコはそうじゃないのかもしれませんが。そのペットを飼って幸せにしてあげないといけないと思うと、ウチはたぶん難しいと思う。

■次回はあのドライバーに繋がりました
──なるほど。良い回答いただきました。で、そんなこんなで伊沢さんのお悩みを誰かにぶつけて欲しいのですよ。
伊沢さん:まず聞きたいんですが、立川さんから道上さんへのお悩みはどんな感じでした?

──ザックリ言うと、現役を引退するときが来て、その後にすぐ何かがあればいいけど、ちょっと間が空いて『どうしよう』となったときにどうすればいいのかというお悩み。
伊沢さん:僕の年代から上のドライバーにに聞くと、まずその悩みですよね。この取材の打診が来たときに、今までの連載をいろいろと見ましたが、今の内容だけでいきなり質問にいったら僕の内容少なくないですか? 今回『やっとホンダ系に来たな!』と思って。今まであっち側でグルグル回ってるな〜なんて思ってたんですよ。

──そりゃお気遣いありがとうございます(笑)。
伊沢さん:この悩み相談の相手も、とりあえずいったんこちら側(ホンダ内)で揉んだ方がいいかな……ということも含めて、まず誰かと言うと、『そこ聞きづらいかな?』ということも含めて山本(尚貴)に聞こうかなと思います。あまり若いドライバーからだと『山本さん、ちょっとこれを聞いて下さい』というのは言いづらそうな雰囲気もあるし、逆に山本が次は誰に相談するのかというところもちょっと気になる。

──気になりますねぇ。
伊沢さん:で、僕の悩みでしょ? やっぱり『この先の人生どうしたらいいですか?』ということでしょ。

──そんな若手ドライバーみたいな(笑)。
伊沢さん:いやいや。逆に僕も、もうレーシングドライバーとしてはカウントダウンの人生ですからね。

──伊沢さん今おいくつになったんでしたっけ?
伊沢さん:37歳。あと何年レーシングドライバーをやるか……しかないので。斎藤佑樹くんの引退を見てやっぱり思うところもあり、松坂大輔さんを見て思うところもある。同世代や下の世代のスポーツ選手がみんな辞めていく。僕も何年か前にそういうのは一瞬味わったときもあった。

 やっぱり自分のことは客観的に見られないから『オレは何をしたらいいんだろう』ということを漠然的に聞きたいんだけど、これも答えられたらでいいけど、山本にちゃんと聞いてみたいのは、スーパーフォーミュラ(SF)とスーパーGTで二度ダブルタイトルを獲って、SFでは2013年に獲っていて、合計で5回もチャンピオンを獲得している。ザックリ言うとその秘訣じゃないけど、たぶんみんな聞きたいだろうなというところはある。

 たとえばSFとGTで『意識していることは違うのか』とか、いつもスーパーGTではレースでメチャクチャ強いから、レースに向けて言える範囲で、若いドライバーたちにアドバイスになるようなことを山本から言って欲しい。山本はあまりそういうのを言うタイプではないから、逆にそれを聞いてみたい。

──なるほど。それをあえて伊沢さんから聞くと。
伊沢さん。そう。それで、若いドライバーたちが『こういうふうに山本選手はクルマを走らせているんだ』というヒントになるようなことがあれば。僕も2008年にSFとGTにデビューしてから十何年経つけど、昔とはまるで走り方が違う。すごい意識を変えて最近は乗っているので、そういったところも含めて、秘訣じゃないけど、このくらいは言ってもいいかな……という範囲で。

──ちなみに今ってそんなに昔とは走らせ方が違うもの?
伊沢さん:違うね。GTも違うし、SFも変わった。

──当然クルマが変われば変わるんだろうけど。
伊沢さん:世の中のトレンドもありますからね。(SFは)特にダラーラだから、そのときのレギュレーションのダウンフォースの出方などもあります。昔はとりあえず飛び込むだけ飛び込んでいくイメージで乗っていたのが、今はセッティングなどで車高を調整するけど、自分のドライビングでも車高を調整しながら走らないといけないようなイメージ。ブレーキもただ踏むのではなく、すべてを把握しながら乗ってあげないと速く走れない。

■「肩書き」の大きさ、大切さ
──ちなみに、先ほどの伊沢さんの悩みにあえてワタクシから言わせていただくならば、この間(スーパーフォーミュラ第6戦もてぎ)の大津(弘樹)くんもそうだけど、伊沢さんの人や物を育てる力はスゴいと思う。
伊沢さん:そんなことないでしょ。別に何にもしていない。大津が頑張っただけですよ。本当に何もしていない。でもひとつ、大津とやっていて僕がプラスにできるのは、さっきの走り方の話じゃないけど、『いま何をしなければいけないか』というのは分かってあげられる。

 大津には僕ができないこともたくさん言っています。それを自分ができていればもう少し成功しているんだろうし、僕はできなかったけど、やらなきゃいけないことはなんとなく判断できるから、そういったところでは伝えやすいかもしれない。でも、それで人を育てる、僕が育てられるような人ではないかな。

──チーム運営には興味ない?
伊沢さん:これはね、僕のいちばんの悩みで、お金を集める能力が極端になさすぎて、自分がチームをやっていると言ってもお金を出してくれるところがまずいない(苦笑)。そういう意味では山本みたいに、チャンピオンの称号が僕にはひとつもない。それはレーシングドライバーとしてはすごく大きい。

──そういうものなんですかねぇ。
伊沢さん:だと思います。山本がチームをやるとなったらお金を出してくれるところはいっぱいあると思いますけど、僕のネームバリューとやってきた内容ではなかなか難しいと思う。やっぱり、それが“成功者”とそれ以下の違いかなと。逆にチャンピオンを獲った人たちには分からないだろうけど、“称号”を持っていない自分からしたらそれほどうらやましいものはないです。それは自分の力だから仕方ないんだけど。

──『そんなことないよ』と否定するのもちょっとアレかな。
伊沢さん:やっぱり肩書って大事だからね。なので、僕がチームをやることはまずないかなと思う。でも分からないですよ。来年GTでチャンピオンを獲ったらそれもあるかもしれないし。

──たしかに!
伊沢さん:でもこんなにマジメな内容の企画じゃないと僕は思っていました。この企画にこの内容はダメでしょ。ちょっと撮れ高が少ないと思う(笑)。

──たまには良いんでない?
伊沢さん:たまにはでしょ? でもそれは企画の趣旨とはズレてない? 僕から山本に繋いで、僕がこのままこの感じで行くと、その後のホンダ系がちょっとやりづらいと思うな。たぶん山本も今くらいのマジメな質問が来たら逆に『えっ!? ちょっとマジメすぎません?』ってなると思う。そこからまたマジメに繋がると、ホンダ系ドライバーの一面がなかなか見られないかもしれない。

──あえてそれでもいいんでは? こちらは聞いてて面白いですよ。
伊沢さん:ヒラノさんがそれでいいなら。これが山本から僕の流れだったら外せるんですよね。僕が外せばその後もやりやすいけど、僕がマジメにやると他が苦しくなると思う。

──じゃあ、他の話題は何かある?
伊沢さん:ない! だから僕、この取材の打診が来たときから眠れぬ夜を数日……(笑)。今までの流れからしてユルいところが必要で、道上さんのお悩みもだいたい予想ができていて、この先に繋げる相手も想像していたら……と考えて今に至っています。苦しかった。『これじゃダメだ!』と思いながらいいアイデアが浮かびませんでした……。

──いやなんかスミマセンね(笑)。では次回は山本さんということでいいですか?
伊沢さん:ここでもう一度トヨタ/ニッサン系に返すと一生帰ってこないと思うから、ここでちょっと一度ホンダ側で少し揉んで、逆に誰がどこにパスするかを見たいですね。山本に繋いでその次は誰に行くか。

──気になりますな。山本さんも悩みは多そうだけど絶対に出さなそう。
伊沢さん:そうね。でも僕は悩みの7〜8割くらいはいつも聞いている気がするけど(笑)。

──山本さんを取材するなんて相当ひさしぶりっすわ(編注:若い頃はよく伊沢さんと3人で話したりもしたのですが、こちらの取材カテゴリーの変化で最近はあまり取材していませんでした)。
伊沢さん:緊張しちゃうね。

──そう。緊張しちゃう。チャンピオンの肩書がついてオーラがすごいから、緊張しちゃうんだよね。
伊沢さん:それを言うと、僕と山本の関係で言うと肩書は1ミリも関係なく、一生ポジションは変わりません。ただ、山本がチームを持つことになったら運転手くらいで雇ってもらいたいな(笑)。

* * * * *

 というわけで、次回はスーパーGT第8戦富士でのドラマも記憶に新しい、TEAM KUNIMITSUの山本尚貴選手です。第7戦もてぎの際に取材済みですが、先に予告しておくと、伊沢選手の予想どおりマジメな感じにはなりましたが、読み応えはかなりディープにあるはず……。お楽しみに!

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