「相続税ルール大改正」の前に!今なら間に合う、駆け込み“生前贈与”のススメ

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2021年12月06日 08:00  週刊女性PRIME

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写真生前贈与 ※画像はイメージです
生前贈与 ※画像はイメージです

 相続のルールを激変させる動きが加速している。早ければ2022年4月から、年間110万円までに定められた「生前贈与」の非課税枠が廃止されるかもしれないのだ。タイムリミットが迫る節税対策の方法と岸田内閣が目論む増税の行方を検証!

相続税のルールが変わるかも

 近年、相続税の対象になる人が増えているのをご存じだろうか。かつては相続税がかからない金額が「5000万円+1000万円×法定相続人数」だったのが、2015年から「3000万円+600万円×法定相続人数」までにダウン。これにより、亡くなった人のうち4%程度しかいなかった相続税を払う人が、8%程度と倍増。地価の高い東京圏では約16%の人が対象になっているのだ。

“相続税なんて、お金持ちしか関係ない話でしょ”と思うかもしれないが、都会の一戸建てを相続した人なども対象となることが増え、遺族が困惑することもままあるという。そのため節税対策として、元気なうちに少しずつ財産を配偶者や子に渡す「生前贈与」を行う人も数多くいる。

 そんな中、気になるのが、相続税と贈与税が一体化されるという動き。

 昨年12月に自民・公明両党が公表した『令和3年度税制改正大綱』という資料には、こう記されている。

《相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める》

 む、難しい……。一体どういうこと?  税理士の西原憲一さんに解説してもらった。

「相続税と贈与税の一体化が進めば、多くの専門家が『暦年贈与』の非課税枠が廃止されるとみています」

 暦年贈与とは、年間110万円以下であれば贈与税が非課税になる仕組みを利用し、毎年行う生前贈与の方法。

「これを使って、多くの人が非課税枠の範囲内で生前贈与を繰り返し、相続税がかかる財産を減らし、節税対策をしてきました。しかし制度が変わると、この方法が使えなくなります」(西原さん、以下同)

 しかもそのXデーは、間近に迫っているおそれもあるという。

「今年12月に『令和4年税制改正大綱』が公表される予定ですが、そこで具体的な時期や内容が示されるかもしれません。そうなれば、最速で来年4月には改正がスタートする可能性さえあります」

生前贈与の節税効果

 ただ、贈与税そのものがなくなるわけではない。

「生前贈与を受けたときにまず贈与税を払っておき、くれた人が亡くなったときに相続税を計算しなおすのです。それで差し引きして、すでに払った贈与税のほうが多かったらその分は戻ってくるし、少なかったら追加で納税するという形になるでしょうね」

 いずれ使えなくなりそうな相続税対策、どのくらいの効果があるのだろうか。

「例えば遺産が10億円で妻と子が2人いる男性がいたとします。こうしたケースは、早くから生前贈与を毎年続けておく(=『連年贈与』する)と結構な節税効果を得られるんです。このケースで、まったく生前贈与しなかったら相続税額は1億7810万円かかります。一方、子2人に、贈与税は多少かかりますが700万円ずつ15年間、生前贈与したとしたら、試算では差し引き2275万円の節税になるのです。しかし、贈与税と相続税の一体化が実現すれば、この2000万円以上もの節税ができなくなります」

 改正されると“どうせ相続税がかかるなら、さっさと財産を渡してしまおう”と考える人が増え、「高齢世代から現役世代へスムーズに財産が渡るよう促す国の目論見もあります」と西原さん。その結果、経済にも好影響が及ぶという狙いがあるようだ。

富裕層だけじゃない税制改正の影響とは

 一体化が予想される贈与税と相続税。どのような段取りで行われるのだろうか。

「現在、生前贈与をしていた方が亡くなった場合、亡くなる3年前までの生前贈与財産が相続財産とみなされ、相続税の対象となります。ちなみに外国はどうかというと、アメリカは無期限にさかのぼって課税されますし、フランスは15年、ドイツが10年です。日本もこうした国々にならうと考えられます。

 もちろん、いきなりすべての生前贈与を相続税の対象にしてしまうと影響が大きすぎますから、今後、亡くなる前の5年前、10年前、15年前と徐々に対象が拡大されていく可能性が大です

 ただし、すでに非課税となっている贈与財産までさかのぼって相続税の対象となる心配はない。

「今まで相続税対策でこつこつ生前贈与を行ってきた人は、ルールが改正されるギリギリまで粘って、粛々と贈与をしていけばいいでしょう」

生前贈与の始めどきかも…

 ちなみに、相続税がかかるほどの財産がない場合、“自分には関係ない”と思ってしまいそうだが、私たち庶民でも何かやっておいたほうがいいのだろうか?

「実はもう1つ、ゆくゆくは改正される可能性が高いものがあります。それが、相続税の非課税枠(基礎控除額)です。これをさらに減らして、相続税がかかる人を増やしていく可能性はあります」

 自分は金持ちではないから大丈夫と思っていても、いずれは相続税がかかるようになってしまうかも!

「だから、妻や子、孫に渡したい財産があるのなら、生前贈与に関する非課税枠がある今のうちに、贈与をスタートしておくのもひとつの手だと思いますよ。

 暦年贈与の場合、2022年4月から改正スタートの場合は、今年の年末までと'22年3月末日までの2回、110万円の非課税枠を利用できるチャンスがあります。ほかにも表のとおり、贈与税非課税の特例がいろいろあるのですが、利用条件が厳しくなっているのが現状。期限がくる前に活用するといいでしょう

実は増税路線!? 岸田政権の目論見

 西原さんによれば、税制改正は「政治家の思惑が大きく影響することが多い」そう。そこで注意したいのが、岸田政権の動きだ。

「岸田内閣になってから少しずつわかってきたのが、やはり岸田総理は財政再建をやりたいんじゃないかということ。財政再建をするには、税金を増やしつつ国の支出は減らさなくてはなりません。コロナ禍に配慮しておおっぴらには言いませんが、18歳未満の10万円給付に所得制限つけたり、Go Toトラベルの枠を下げたりするなど、歳出を圧縮したい思惑が感じられます。

 言ってしまえば、今回の改正は増税案です。相続税は富裕層にかかる税金というイメージがあるので、“相続税の節税は許さない”という姿勢への反発は少ないかもしれません。そういう意味で、改正が早期に実施される可能性は十分にあります

 ただ、政治の状況によっては、この増税案を押し返すことが可能かもしれない。

「コロナ禍の今、それも来年夏の参議院選挙を控えた大事な時期に、こんなインパクトの大きい案を実施するのかなという疑問はあります。世論の動向を見極めつつ、進めていくのではないでしょうか」

 まずはできるうちに生前贈与は進めておくこと。そのうえで、贈与税・相続税一体化の行方に目を光らせておかなければ!

相続税がかからない額(基礎控除額)
3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:夫が亡くなり妻と子2人が残された場合、4800万円が基礎控除額に。これを超えると相続税の対象になる。

生前贈与の主な制度・特例はココに注意!

・暦年贈与

内容
 その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産のうち、110万円までは非課税となる。
期限
 最速で2022年4月から廃止の可能性あり。
注意点
 他の非課税特例とは併用できない。110万円を超えた贈与分については、金額に応じて10〜55%の贈与税がかかる。

・住宅取得金等資金の贈与

内容
 父母や祖父母から、自分が住むための住宅を新築、取得または増改築等するためのお金をもらった場合、一定の条件を満たすと贈与税が非課税に。非課税枠は、新築等で省エネ住宅なら1500万円。
期限
 2021年12月31日まで。
注意点
 税務署での申告手続きが必要。取得等した住宅の種類(新築か中古か、省エネ住宅かなど)によって、非課税となる金額が異なる。

・教育資金の一括贈与

内容
 30歳未満の人が、教育資金用に財産を父母や祖父母から受け取った場合、一定の手続きを踏めば1500万円まで贈与税が非課税となる。
期限
 2023年3月31日まで。
注意点
 信託銀行などで専用の口座を開設し、所定の手続きを行う。30歳までに使いきれなかった分は、贈与税の対象となる。使いきる前に贈り主が亡くなると残額は相続財産扱いに。

・結婚・子育て資金の一括贈与

内容
 20歳(2022年度からは18歳)以上50歳未満の人が、結婚・子育てのために財産を父母や祖父母から受け取った場合、一定の手続きを踏めば1000万円まで非課税となる。
期限
 2023年3月31日まで。
注意点
 信託銀行などで専用の口座を開設し、所定の手続きを行う。50歳までに使いきれなかった分は、贈与税の対象となる。使いきる前に贈り主が亡くなると残額は相続財産扱いに。

※非課税になるには、さまざまな条件を満たし、所定の手続きを行うことが必要となるので、贈与を行う前に、税務署や税理士に相談すること!

(取材・文/鷺島鈴香)

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