「野村野球」の継承とともに…高津ヤクルトの次なる挑戦【夢追うツバメたち】

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2021年12月14日 18:10  ベースボールキング

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野村克也さんをしのぶ会で弔辞を述べるヤクルトの高津臣吾監督
◆ 第26回:恩師へ日本一の報告

 晴れ渡る空の下で喜びの報告をした。12月11日、野村克也さんのしのぶ会が神宮球場で行われ、高津臣吾監督が野村氏に感謝の思いと決意を語った。

 新型コロナの影響で延期となり、この日を迎えた。就任2年目で「日本一」の報告ができたのも「野村監督が仕組んだことなのかな。優勝させてくれたのかな」と、亡き恩師に思いを馳せた。

 訃報が届いたのは、前年最下位からの浮上を目指して臨んだ監督1年目の春季キャンプの最中だった。高津監督は「必ずどこかで見てくれているので、恥ずかしくない野球をしたいなと思う」と、悲しみの中で心を奮い立たせた。

 高津ヤクルトの1年目は同じく最下位に沈んだ。2年連続で味わった屈辱をバネにチームの課題を潰していった。投手陣の再建を図り、20歳の奥川恭伸や24歳の高橋奎二ら若手を大事な試合で先発させ、経験を積ませた。

 4番の重責を担ってきた村上宗隆に対しては「そういう立場なので、それで潰れるようでは4番を打てないです」と、21歳の主砲への期待が大きいからこそ、ときには厳しい言葉も述べた。

 選手たちのコンディションを見極め、伸び伸びとプレーできる環境づくりに力を注いだ。ミスを恐れずに全力でプレーすることを説き、信頼してグラウンドに送り出した。若手とベテラン、外国人選手がひとつになったチームは今季、20年ぶりに日本一の栄冠をつかむことができた。


◆ 「野村野球」は準備野球

「野村監督に出会えてここまで来られましたし、その出会いというのはすごく大きな出会いだったと思います」。

 「野村野球」を継承しながら、自身が目指す野球を融合させて勝負に挑む。90年代のようなスワローズ黄金期を再び築き上げたい。

 「いまのスワローズがやっている野球は、野村野球の延長線。それに新しいものを加えて、基盤となるものを生かしつつ、伝えていくのが大きな役目」と、高津監督は話す。

 「野村野球」は技術だけでなく、頭を使った野球。試合に臨む前のしっかりとした準備を欠かさないことだった。

 高津監督は、野村監督が1993年の日本シリーズ第7戦、西武ライオンズとの最後の戦いを前に「勝負は時の運や。人事を尽くして天命を待とう」という言葉を発したことを伝え、選手たちを鼓舞したこともあった。

「良いプレーをすれば勝つチャンスはもちろんあるけども、そこまでの準備をどうやってやったか、どういう気持ちでグラウンドに立ったかということを野村監督は言いたかったと思う」。

 指揮官はいまを生きる選手たちに「野村野球」の真髄を伝えた。そして、次に狙うのは、恩師でも成し得なかった2年連続の日本一だ。

「もちろん簡単な道ではないと思いますけど、そこをチャレンジしないということだけはしたくない。全力でぶつかって敗れることはあっても、狙わないということは絶対ありません」。

 常に前のめりになって進んでいく。王者として受け身になることはない。高津ヤクルトは再びチャレンジャーとして、次なる偉業に挑むに違いない。


取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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