カラテカ入江さんに聞いた、年末の大掃除に使える"プロの家そうじ術"

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2021年12月16日 18:01  マイナビニュース

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カラテカ・入江慎也が、清掃業で培った経験を活かした著書『汚部屋がピカピカになると世界が変わる! 業者の(秘)家そうじ』(主婦の友社)を2021年11月1日(月)に発売した。23年にわたりお笑い芸人として活動した芸能界を離れ、アルバイトとして清掃業の世界に飛び込んだ入江は、一から清掃スキルを身に付けた後、現在は清掃会社「株式会社ピカピカ」を立ちあげ、従業員と共に充実した毎日を送っているようだ。この本には、キッチン、トイレ等、空間ごとの清掃のやり方が事細かに書かれており、どんなに面倒臭がりな人でもきっと年末の大掃除に役立てられるはず。セカンドキャリアとして始めた清掃業への想いを語ってもらうと共に、ご家庭・オフィスでの清掃のチェックポイントを教えてもらった。


○芸能界を離れ、清掃業を始めたきっかけ



――『汚部屋がピカピカになると世界が変わる! 業者の(秘)家そうじ』発売おめでとうございます!



入江:ありがとうございます!


――まず、この本を出すもとになった、清掃業を始めたきっかけを教えてください。



入江:僕は吉本興業で23年間芸人をやっていて2年前に契約解除になってしまったんですけど、これからどうしようかなと思いながら家を掃除したり、ボランティアの掃除に参加しているうちに、意外と自分に向いてるかなと思うようになったんです。清掃業という世界もまったく知らなかったんですけど、「掃除っていいかもな」と思って相方(カラテカの矢部太郎)に相談してみたら、「地に足を着けてできることを頑張っていったらいいと思う」と言われて、手に職が付くのもいいなと思って。それと、技術が進歩していくとしても、掃除ってたぶん一生誰かがやらなきゃいけない仕事だし、なくなることがないと思うんですよね。2年前に仕事がなくなるっていうことを経験したので、なくならない仕事がいいなと思って、アルバイトを始めたのがきっかけです。



――アルバイトというのは、お知り合いの方の会社で始めたんですか?



入江:いや、自分でネットで調べて一番上に出てきた会社に電話しました。とにかく最初に決めてたのは、「家から近いところにしよう」ということだったんですよ。近くないと辞めるなと思ったので。行きたくなくなるじゃないですか、絶対(笑)。42歳からのアルバイトだったので、相当抵抗があったんですけどね。正直、自分で会社(株式会社イリエコネクション)もやっていたし、貯金もあったので生活はできたんですけど、そういうことをやっていたら前に進まないと思ったんですよね。それで、掃除のアルバイトを始めたんです。


――面接に行ったら驚かれたのでは?



入江:まだ世間をお騒がせしている最中だったので、めちゃくちゃ驚いてました。「えっ!?」って言われたんですけど、「すいません、アルバイトやらせてください」って頭を下げて。



――そこからはどんな生活をしていたんですか?



入江:毎朝7時半に起きて、8時半に社長の家に行って、仕事が終わったら5時とか6時に帰る生活でした。

○清掃のプロのテクニックが詰まった一冊



――本には、清掃についてかなり詳しく書いてありますよね。こういう知識、スキルはアルバイトをしながら身に着けていったわけですか。



入江:1年間、社長と先輩に仕事を教えていただいて。そこから協力会社の方と出会って行ったんです。この本も、協力会社の方にめちゃくちゃアドバイスをいただきました。みなさん、清掃について少しでも理解を深めて欲しいというお気持ちで御協力いただいたんです。コンサル料をお支払いしようと思ったんですが、無償で御協力してくださいました。


――入江さんご自身がコンサルタント会社もやっているだけに。



入江:自分がやっているだけに、申し訳ないなと思って。プロの方から「これはこっちの洗剤の方が落ちますよ」とかアドバイスをいただいたり。でもむずかしいのが、清掃を実際にやるのと本に落とし込むのはまた違う話で。



――そうですよね。書籍化にあたってはかなり苦心されたのでは?



入江:そうなんですよ。まず、本を手に取っていただいた皆様が安全に実践できるかということを考えました。本に載っていることを一般の方が実践して家にキズがついたり、事故が起こったら対処できないので、ちょっと弱めの洗剤にしようとかスポンジを変えようとか、その辺は苦労しましたね。だからこの本に載ってることを一般の方が実践しても失敗しないように作ってあります。



――清掃する場所ごとに使う洗剤の種類がすごいですよね。



入江:聞いたことがない洗剤ばかりだと思います。僕も2年前までまったくわからなかったので(笑)。本当に経験の長い方にご協力いただきました。

○芸人時代から変わらない働き方のポリシー



――現在は清掃会社「株式会社ピカピカ」(以下・ピカピカ)を設立して代表をされていらっしゃいますが、代表になるよりも、いち従業員として働く方が気持ちは楽だったのではないかと思います。会社を立ち上げようと思ったのは何故ですか。



入江:芸人時代から、常に目標設定をして生きてきたので、アルバイト、従業員のままだと変わらないと思ったんですよね。例えば、こうやって取材を受けることもなかったでしょうし、ましてや従業員が本を出すわけにもいかないし。それと、世の中の方に認めてもらうには何か結果を残すしかないと思っているので。そう考えたときに、セカンドキャリアで自分がどこまで行けるか見てみたかったのもあります。最初は、「2ヶ月で独立します」って言ってたんですよ。辞める前提で会社に入るって今考えると頭おかしいなって(笑)。


――まったくの初心者なのにさすがに2ヶ月は無理ですよね(笑)。



入江:冷静に考えるとそうなんですけど(笑) 、本当に必死だったんだと思います。社長がすごく良い方で、「頑張ればできると思いますよ」って言ってくださって。結局1年間働かせていただきました。そのときは、「早く認めてもらわないと」って焦ってたんですよね。



――社会に対する負い目があったわけですか。



入江:もう、めちゃくちゃありました。見られ方とか。



――それが、清掃の仕事をしていることで心が晴れやかになるというのが続けられている理由でしょうか。



入江:まあ、そんなに大それたことじゃないんですけども。僕が清掃をやっている事に関して、重く受け止められてしまう方が多いんですよ。「禊でやってるんですよね?」とか結構言われるんです。芸能界と清掃業界ってかけはなれたイメージがあるみたいで、(芸人の)後輩とかはそう思うんでしょうね。僕が作業着で歩いているときにすれ違ったけど、声を掛けづらかったとか言うんですよ。「声かけてよ!」って言ったら、「いや、キツかったっす」って。確かに、彼らの目線からしたらそういう気持ちにもなるのかもしれないです。今までテレビに出てた先輩が作業着を着て台車を引いてたらそう思うのかなって。だけど、仕事をやってみると奥が深いし、いろいろある仕事の1つとしては、ビジネスチャンスがたくさんあると思います。資本金がそんなにかからないですし。


――作業に使う道具がひと通りあればできるということですか。



入江:そうですね。あとは軽自動車、それがなければバイクでも自転車でも行けますし。要は技術を学んで1人で始める分には、始めやすいビジネスの一つだと思いますよ。

○入江さんの一日の仕事の流れ

――清掃に行く先はどんなところが多いんですか?



入江:今朝も行ってきたんですけど、一般のご家庭が多いですね。ありがたいことに、清掃をご依頼頂くのはオフィスや店舗よりご家庭の方が多いんです。僕の知り合いの経営者の方からもたくさんご依頼頂いています。



――そうしたお客さんのご家庭ではどんな清掃をするのでしょうか。



入江:エアコン、レンジフード、キッチン、ベランダの清掃が一番多いです。他には、定期清掃でオフィスに行ったり、僕が芸人時代にお世話になったテレビ局の制作会社の清掃とか、お世話になっていた社長のお店とか。ありがたいことに、今までの人脈が全部繋がってます。それと、先日Yahoo!ニュースにこの本のインタビュー記事が出たら新規のお客さんからのお問い合わせがめちゃくちゃ来ました。



――年末に向けて繁忙期に入ってお忙しいですよね。入江さんの一日ってどんな感じなのか教えてもらえますか。



入江:7時半に起きて、8時すぎにスタッフを迎えに行って、現場に9時に着いて清掃を始めます。だいたい、午前に1件、午後に1件清掃の仕事をして、帰ってからイリエコネクションの打ち合わせをして、みたいな流れです。

○芸人時代と変わらない上司としての振る舞い



――従業員の方は何名ぐらいいらっしゃるのでしょうか。



入江:今は正社員が2名です。千葉、神奈川、大阪、名古屋ではフランチャイズ展開をさせて頂いている形です。47都道府県にフランチャイズを作るのが夢ですね。あとは、若い人材にどんどん清掃業に入ってきて欲しいんです。僕がメディアに出ると、「結局芸能界に戻りたいのか」というお言葉を頂戴することもあるんですけど、そういうことじゃなくて、若い人材に来て欲しくて会社の宣伝のために出てるだけなんです。


――今働いているお2人はどんな方なんですか?



入江:今の社員は2人とも、極楽とんぼの山本(圭壱)さんの家に僕が清掃に行かせてもらって、山本さんの心意気でYouTubeチャンネルで正社員の募集をさせてもらったんです。それで15名ぐらいきた応募の中から採用しました。1人は役者を15年やっていてコロナ禍で仕事がなくなって先が見えなくなったときに募集を見て踏ん切りをつけて役者を辞めて応募してきたんです。もう1人はずっとフリーターをやっていてうちで社員になりました。



――上司として、どんな教え方、接し方をしているのか教えてください。



入江:芸人の後輩みたいに接してますね。変わってると思います。いわゆる会社の経営者と社員の関係性より、だいぶくだけた言葉でコミュニケーションを取ってますね。ご飯代は全部僕が持ちます。僕といる限りはお金は使わせないので。それって吉本にいたときにやっていたことそのままなんですよ。



――芸人時代の感覚がそのまま活かされているわけですね。



入江:そうです。やりたいことがあれば、僕がお金を出してあげてますし、それは芸人時代と同じ感じです。教えるとしたら、まず挨拶ですね。あとは「ごちそうさま」は大きな声で言うこと、お客さんの家には靴を揃えて入ってくれとか。とにかくサービス業なので、明るくいてくれということですね。それと、ピカピカのハガキを作ったので、それを渡してお客さんにお礼の手紙を書かせています。最近は、自主的に書くようになってますけど。スタッフの成長過程を1番近くで見られることが、今の僕にとって一番の喜びであり、この仕事での最大のやりがいですね。

○清掃のプロが教える、年末大掃除のコツ



――「イリエツイン」(歯ブラシと軍手で作ったオリジナルのそうじグッズ)が本の中でいろんな掃除の場面に登場します。どんな使い方するのか紹介してもらえますか?



入江:ご家庭の掃除でどこが困るかって、絶対に「窓のサッシ」なんですよ。どの家庭でも、他の場所がどんなにキレイでも、サッシが汚れていることが多いんです。じゃあサッシをどうやって掃除すればいいのか考えたら、いらなくなった歯ブラシが結構役立つんですよ。でも歯ブラシだけ使っていても効率が良くないので、いらない軍手の切れ端を付けて、歯ブラシ側でゴミを取って軍手側で拭くとか。トイレにも使えるし、めちゃくちゃ便利なんです。


――こういう発想って仕事しながら出てくるわけですか。



入江:そうですね。掃除していると、「これがあったら便利だな」っていうことがよくあるんです。今考えているのは、サッシを削る「サッシノミ」みたいなものがあるんですけど、ステンレスなので、素人がやると傷をつけちゃうんです。それをカーボンとかで作れたらいいなと考えたりはしていますね。「イリエツイン」もいずれ商品化できたらいいなと思ってます。



――オリジナルの家庭用洗剤「White Man」も発売されているんですよね。



入江:僕がプロデュースさせていただいた洗剤なんですけど、めちゃくちゃ落ちるんですよ。ECサイトだけの販売なんですけど。



――年末で大掃除をしなきゃいけないのはわかってるけど、面倒くさいという人は多いと思います。家庭や職場でどんなところから手を付けたらいいかアドバイスをいただけますか?



入江:まず僕が思うのは、お風呂ですね。お風呂って毎日入るじゃないですか?だからやっぱりお風呂はキレイにして新年を迎えて欲しいなと思います。あと意外と、音楽を流しながら清掃すると意外と早く時間が過ぎますよ(笑)。空室の清掃をするときにたまにやってるんですけど、好きな曲をかけながらやってると体が自然に動くというか。あとは、カップルで住んでいる人は、キレイにしておくと彼氏、彼女に絶対褒められますから。そこはフラれないようにがんばっていただいて。ご夫婦でしたら、休みの日に旦那さんが掃除してあげたら奥さまは超喜ぶと思いますので。



――オフィスの清掃に行ったときに気になる場所ってありますか?



入江:イスですね。イスにホコリが溜まっていることがよくあります。あとはPCの下とか。だいたいみんな床を気にするんですけど、意外と自分のデスクがホコリまみれなことはよくあります。それと、これまでリモートが多くて最近になって出勤するようになったオフィスが多いので、結構ホコリが溜まってますね。あと、オフィスによるんですけど、カップラーメンとか作れる共用のスペースのシンクの中は麺の残りとかお茶葉とかでドロドロになっていたりするので、そこはキレイにした方が良いと思います。それと、本にも書いてありますけど、トイレの便利グッズとかもあるので、男女兼用のトイレなんかはそういうグッズを活用するだけで全然違うと思います。尿が飛び散らないようにする「隙間パッド」とか。



――「便座用取っ手」とか、この本ではじめて知ったことも多いです。「イリエツイン」はトイレ掃除でも活躍しそうですね。



入江:そうなんですよ。ウォシュレットがついた便器なら「ノズル掃除」っていうボタンを押すとノズルが出てくるんですけど、そこがめちゃくちゃ汚れているんです。それを「イリエツイン」で掃除して欲しいです。ノズルが汚れていると、汚いところで洗ってることになるので、そこはオフィスでもご家庭でも常にチェックして欲しいですね。

○入江さんが抱く、今後の夢とは



――入江さんの今後の夢、目標があれば教えてください。



入江:目標は、先ほどもお話したように47都道府県にピカピカの支店ができたら嬉しいなということです。いろんな方に、「清掃業って楽しいんですか?」って訊いたことがあるんですけど、「入江さん、楽しいとかじゃなくて、仕事だからやってるんです」と答える方が多いんです。そこを、「清掃業は楽しい」とおっしゃって働く方が増えたら嬉しいです。それで言うと、今の従業員たちが育ってくれて、「僕らもセカンドキャリアで入ったんですけど、すごく楽しくやってます」って、彼らが清掃業の中で表現者になってくれたらいいですよね。役者をやっていた従業員には、清掃業で上手くいけばまた役者をやればいいと思うし、いつの日か役者で成功できたときに、「清掃業があったから今の僕があります」って言えたら良いと思いますし。そのためには色んなことを変えていかないといけないですし、大それたことは言えないですけど、協力できることがあれば、協力していきたいなと思っています。


――「こんな人たちと一緒に働きたい」というイメージはありますか?



入江:強いて言うとするなら、清掃×〇〇などを、新たな清掃のカタチを考えてみたいと思っている方と御一緒したいですね。たとえば、「清掃×IT」とかを考えている人ですかね。

今はわざわざ見積もりを取りに行ってるんですけど、例えば写真をアップするだけで全自動で見積もりを取れるシステムを考えるとか、「清掃×老人ホーム」「清掃×介護」とか、何か新しいことを考えたいと思っている人と仕事をしたいです。僕も、清掃業のユニフォームがカッコイイと人が来ると思って、ピカピカのユニフォームもファッションブランドの「FR2」とコラボしたり。そういう新しい試みをこれからもしていきたいです。



――では『汚部屋がピカピカになると世界が変わる! 業者の(秘)家そうじ』について改めてひと言お願いします。



入江:「どうやって清掃するの?」「うちでもできるかしら?」という声がいっぱいある中でこの本を出させていただいたので、この本を読めば絶対ご家庭、オフィスで誰でも簡単に清掃できます。清掃してキレイになったときの達成感は本当に半端ないので、「うわ〜これを維持したい!」っていう感動を体感していただきたいですね。



岡本貴之 おかもと たかゆき 1971年新潟県生まれのフリーライター。音楽取材の他、グルメ 取材、様々なカルチャーの体験レポート等、多岐にわたり取材・ 執筆している。趣味はプロレス・格闘技観戦。著書は『I LIKE YOU 忌野清志郎』(岡本貴之編・河出書房新社)」 この著者の記事一覧はこちら(岡本貴之)
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