外国人先発左腕に“当たりなし”のヤクルト　新加入のスアレスが連覇のキーマンに？

◆ 連覇目指し先発候補2投手を補強

　20年振りに日本一となったヤクルトが、今オフは外国人選手を中心に積極的なチーム編成を行った。単年契約だったオスナ、サンタナ、サイスニードの外国人選手たちとそれぞれ契約を延長。そして、右腕のA.J.コールと左腕のアンドリュー・スアレスを獲得した。

　新外国人投手に対して高津臣吾監督は、「ふたりには先発を期待しています」と先発での起用を明言しているが、コールはMLB109試合の登板で19試合の登板しかなく、2019年以降はすべて中継ぎでの起用だった。

　一方のスアレスは、2018年にMLBで先発ローテーションを任され7勝を挙げた実績がある。その後は目立った成績を残すことができなかったものの、今年移籍したKBO(韓国リーグ)では10勝2敗、防御率2.18と結果を出している。先発投手は何枚いてもいいわけであって、こうして先発として結果を出しているのはチームとしても心強い限りだろう。

　今シーズンのヤクルトは、左腕の先発として高橋奎二、石川雅規、田口麗斗といった選手がマウンドに上がった。しかし、3人とも1年間を通して先発ローテーションを守ることはできておらず、先発左腕を補強するべくドラフト1位指名で左腕の山下輝（法政大）を獲得している。だが、山下にはプロでの実績はもちろんない。そこで、即効性のある外国人投手の補強で穴を埋めにかかったという見方でいいのではないか。

　ヤクルトは、外国人選手の発掘には定評があるチームだ。野手では2021年に加入したオスナ、サンタナをはじめ、ペタジーニ、ラミレス、バレンティンといった強打者がチームを支えてきた過去がある。投手でも、林昌勇、バーネット、マクガフといった歴代の守護神。先発ではブキャナンやグライシンガーらが優良助っ人としてローテーションを守ってきた。しかしながら、投手はいずれも右腕であり、左腕に関しては大活躍した選手がいない。


◆ 配置転換がハマった例はあるものの…

　2005年以降、ヤクルトは外国人左腕を7人獲得してきたが、先発投手として結果を残した選手はひとりもいなかった。2014年にはナーブソンが先発ローテーションに定着し24試合（137回）に先発したが、4勝11敗、防御率4.53の成績にとどまり、物足りない数字に終わっている。

　2018年には、前年に規定投球回には届いていなかったものの、中日で6勝、防御率2.30と結果を残していたアルメンゴを獲得。しかし、故障で離脱したことや素行不良もあり、1試合も登板することなく6月には早々に退団。戦力にはまったくならなかった。

　中継ぎとしては、李恵踐とハフのふたりが一時はセットアッパーを務めるなど一定の結果は残しているものの、もともとは先発ローテーション候補としての加入であり、先発として振るわず中継ぎに配置転換されたという経緯がある。

　今年も、シーズン途中に育成目的でケリンを獲得していたが、制球難を改善できる見込みがなく新シーズンの契約を結ばなかった。

　先発の右腕や野手と比べて、左腕の外国人選手、とりわけ先発投手で「当たり」を引けていないのがここしばらくの現状だ。

　高橋という未完の大器が覚醒したことで、左先発投手の軸となりうる存在は台頭してきた。そこに新加入のスアレスが先発として機能してくれれば、一気にチーム力は高まる。

　もともと打撃に定評があるチームゆえ攻撃力が一気に低下する可能性は低く、課題の投手陣も整備されてきた。まだ見ぬ左腕・スアレスが連覇のキーマンになる可能性は十分にあるだろう。


【2005年以降に在籍した外国人左腕の通算成績】

アレックス・ラミレス・ジュニア（2005−2007年）
登板なし

リッキー・バレット（2009年）
7試合（11.1回） 0勝1敗1ホールド 防御率7.15

李恵踐（2009−2010年）
61試合（54.2回） 1勝2敗1セーブ17ホールド 防御率4.12

クリス・ナーブソン（2014年）
24試合（137回） 4勝11敗 防御率4.53

ルイス・ペレス（2016年）
19試合（21.1回） 2勝2敗1ホールド 防御率8.02

ジョーダン・アルメンゴ（2018年）
登板なし

デーブ・ハフ（2018年-2019年）
103試合（160回） 4勝11敗3セーブ33ホールド 防御率4.50

ケリン・ホセ（2021年）
登板なし