オリックス・湊通夫球団社長が決意を新たに「自分が甘かった。もっともっと上を目指す」

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2021年12月29日 21:12  ベースボールキング

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笑顔で今季を振り返るオリックス・湊通夫球団社長〈写真=北野正樹〉
◆ 不退転の決意で臨んだ今シーズン

 オリックスの湊通夫球団社長が球団の仕事納めの29日、京セラドーム大阪内で記者会見し25年ぶりのリーグ優勝を果たした今季を振り返った。

 年末恒例となった社長会見。コロナ禍で日頃、コミュニケーションを取りにくいメディアへの配慮として、質問がなくなるまで取材対応。この日も、予定の1時間を大幅に超えて質問に答えた。

 1年前の同じ日に開かれた会見では、2年連続で最下位に終わったことから「あってはならないこと。申し訳ない」と、反省の弁とファンへの謝罪から始まった。

 この日も、反省の言葉が口をついた。しかし、その内容は全く次元の違うものだった。「リーグ優勝は感動。クライマックス(CS)優勝は喜び。日本シリーズは見ていて楽しく面白かった。しかし、楽しいと思った自分は、まだまだ甘かった」。そして、「シリーズで絶対に勝たなくてはいけない球団にならなければいけない。もっともっと上を目指していきたい」と続けた。

 果たせなかった日本一への強い思い。日本シリーズで1点を争う好試合を展開するまでに成長したチームに目を細め、純粋に野球を楽しむ姿を誰が批判できようか。それでも経営トップとしての別の自分がそう言わせるのだろう。

 社長として不退転の決意で臨んだシーズンだった。「中嶋聡監督に就任をお願いした段階で、ターニングポイント。腹を決めている」「決意を持って臨みたい」「本当の勝負の年だと思う」と、言葉の端々に決意がみなぎった。

 その時の気持ちを「優勝は、ロッテや楽天にも可能性があったように、難しいもので100%はない。ただ、CSに出て(チームの)方向性が見えるようにしなければいけないと考えた」「結果を出していかなければいけない。成果をしっかりと見せていくためにも、最低でもAクラス入りが必要だった」と振り返る。

 リーグ優勝が決まった10月27日に無観客の本拠地のグラウンドで行われた「祝勝会」での挨拶で「約束した通り、出すものは出します」と、選手らに大盤振る舞いを宣言した。キャンプイン前日のミーティングでの約束だったそうで、優勝争いをしていた9月にはオリックス本社の井上亮社長(グループCEO)からも「頑張った時にはしっかりと報いてあげなさい」と話があったそうだ。

 宮内義彦オーナーからの指示はないが、祝勝会での発言を隣で聞いて「ニヤッと笑っていただいた」というから、総帥も同じ思いだったのだろう。

 コロナ禍で、大阪市内の目抜き通り御堂筋を使ったパレードは出来ず、12月4日に開かれたファン感謝デーで、場内を一周する「バーチャル御堂筋パレード」を行った。来季は「リアルで御堂筋パレードをしたい」と意気込む。

 そのバーチャルパレードで、湊社長が中嶋監督と吉田正尚・選手会長を乗せたオープンカーの運転手役を務めたことを、自身の口から初めて公表。「自宅で就寝中にウトウトしていて、思いついた。御堂筋パレードが出来ず悔しかったので、夢に出てきたのでは」という。

 「球団のかじ取りをし、選手たちを安全に導くのが社長の仕事で、ちょうどいいかな」と、一部球団職員に相談して即決。中嶋監督や吉田正にバレないよう、帽子とベストを購入。マスクをしてメガネも普段の黒ぶちから銀ぶちに変える徹底ぶり。その変装ぶりはパレードが終わり、下車する際にドアを開け、声を掛けてネタばらしをするまで、2人は気づかなかったという。唯一、気付いていたのは、2年目の今季、13勝を挙げた左腕・宮城大弥だけだったらしい。

 リアル御堂筋パレードでの運転には「老人が運転して暴走すると困る」と否定したが、湊社長の遊び心は、失敗を恐れず常に新しいことに挑むオリックスのトライ&エラーの精神が、球団に根付いていることを物語る一コマだ。

 来季も柔らかアタマで、チームの連覇と日本一に、力強いバックアップをしてくれることだろう。


文・写真=北野正樹(きたの・まさき)

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