◆ 「正尚さんよりは下です」
オリックスの山本由伸投手(23)が27日、大阪市内の球団施設で契約更改交渉を行い、2億2000万円増の年俸3億7000万円(金額は推定)でサイン。
プロ6年目での年俸3億円到達は、吉田正尚(2億8000万円)とイチロー(2億6000万円)を超える球団史上初のこと。「将来の話も、何かが決まったわけではないが、しっかりと時間をかけてお互いが納得するところまで話せた」と、自身の思いもしっかり伝えたようだ。
「オリックスのエース」から、「日本を代表する投手」へ…。大きく飛躍した山本由伸を評価するのに相応しい金額提示だった。
昨季は15連勝を含む18勝(5敗)を挙げ、チームを25年ぶり優勝に導いた右腕。最多勝に最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率と個人タイトルを独占し、リーグMVPやベストナインに加え、「沢村賞」にも輝いた。
また、東京五輪でも侍ジャパンの金メダル獲得に大きく貢献。1年を通じての大活躍に、球団も最大の提示を行った。
会見場に姿を見せたエースは、「サインしてきました。しっかりと評価していただき、満足しています」とひと言。
金額を問われると、「正尚さんよりは下です」と、先日更改した吉田正尚の4億円には届いていないことを明かしつつ、『ダルビッシュの6年目(=3億3000万円)は超えているか』の質問には、「超えています」と笑顔で回答。球団史上初、プロ6年目での年俸3億円突破が判明した。
◆ 明言は避けるも「将来の話」を
キャンプイン5日前の更改。オリックスはもちろん、球界で最後の契約更改交渉となった。
そのことについては、「シーズン(終了)が遅かった」ことを理由として挙げ、このオフは獲得したタイトルの授賞式や岡山県民栄誉賞の授与式など、公私に多忙を極めたことが大きい。
さらに「将来の話」も要因として挙げ、「何かが決まったわけではないが、お互いが納得するところまで話すことができた。そこまで話していただいた球団には感謝しています」と、今後の野球人生について話し合いを重ねていたという。
つづけて、「真剣に時間をかけて話をしたのは初めて。しっかりと理解してくださったと思っている」とし、最後まで“明言”はしなかったものの、自身が描いている将来の展望をしっかりと伝えることができたようだ。
福良淳一GMも、「じっくりと話していくしかないでしょうね」と、こちらもメジャー挑戦などの話には否定も肯定もなかったが、「元から、そこは持っているんではないですか」とコメント。
「ゆっくり話していこうというか。シーズン中はシーズンに集中してもらいたい」と続け、エースの意向を汲み取ったとみられる。
◆ 「昨年の自分を上回りたい」
五輪にクライマックスシリーズ、さらには日本シリーズと続いたタイトな日程を、大車輪でこなした右腕。
「途中で離脱することなく、シーズンを終えることができたのは初めてで自信になる。目標にしてきただけに嬉しかった」と、手応えを口にする。
また、山岡泰輔が「追いつき、追い越したい」、宮城大弥も「タイトルのひとつでも奪いたい」と話していたことについては、「とてもありがたい。こちらもたくさん練習しているので、負けないようにしたい」と、挑戦を大歓迎していた。
チームの連覇と、昨年果たせなかった日本一が山本に課せられる大きな使命。さらに、「開幕戦の連敗ストップ」にも期待がかかる。
もちろん、まだ開幕投手は確定しているわけではないが、現時点では山本が開幕投手の最有力候補であることは間違いない。
昨年は初めての大役も、7回4失点(自責は1)で敗戦投手に。味方の拙守に足を引っ張られるところもあったが、2012年から続くチームの開幕戦の連敗は「10」に伸びてしまった。
「昨シーズンの中でも、開幕戦の負けは悔しかった。次も任されて勝てるようにしたい」と、悲願の連敗ストップから開幕ダッシュを目指す。
忙しいスケジュールの中でも、調整は順調だ。
「練習をしっかりと、時間をかけて毎日できた。充実したオフだったと胸を張って言える」と頼もしく宣言。
「獲れるタイトルは全部獲って、昨年の自分を上回りたい」
ライバルは自分自身。6年目も飛躍しかない。
取材・文=北野正樹(きたの・まさき)
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