WRCの頼れる妖精さん。モンテカルロでサポート受けた勝田貴元「何も言わなくても全部やってくれた」

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2022年01月28日 12:20  AUTOSPORT web

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写真SS13でのスタック時に観客に助けられ、デイリタイアの危機を逃れた勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第1戦モンテカルロ
SS13でのスタック時に観客に助けられ、デイリタイアの危機を逃れた勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第1戦モンテカルロ
 モナコを中心に1月20日から23日にかけて開催されたWRC世界ラリー選手権第1戦モンテカルロ。競技車両の一新、ならびにハイブリッド化という、シリーズにとって新たなチャプターを開いた一戦となった同ラウンドでは、『セバスチャン対決』が注目集めた一方、同時に“ラリーの妖精”たちの活躍も目立った。日本人ラリードライバーとして唯一、トップカテゴリーに参戦している勝田貴元も今回、彼らの助けを借りたひとりだ。

 2022年は『トヨタGRヤリス・ラリー1』のステアリングを握りシリーズにフル参戦する勝田は、総合5番手で迎えたデイ3のSS13で、ペースノート上では轍の中は氷が溶けていることになっており、グラベルクルーからの直前の報告でもそのようになっていた箇所での想定外の凍結に足をすくわれてコースオフ。時速30キロほどで道路を横断した後、コース脇の側溝にはまってしまう。このアクシデントの際に観客のサポートによって脱出に成功しラリーを続けられたことが、翌日の総合8位フィニッシュにつながった。

「観客の人たちのなかには(サポートの)経験がある人がいたり、フランスという土地柄ラリーが好きな方も多いというのもあって、『どうやって(スタックした車両を)引き上げたらいいのか』を知っている人がたくさん居ます。フィンランドも同じような感じですね」と勝田は説明した。

 WRCを含むラリー競技では本来、SSのスタートからフィニッシュの間はドライバーとコドライバー、そしてオフィシャル以外の人員が「マシンに触れてはならない」とされている。

 しかし、クラッシュした車両やコースを外れて立ち往生するマシンに多数の観客がすぐさま駆け寄って乗員を救助したり、スタックからの脱出をサポートするといったシーンは珍しいものではなく、むしろ当たり前の光景となっている。しばしば“妖精”と呼称される彼らの存在を選手権側も黙認しており、こうしたシーンはひとつの文化として捉えられている。

 開幕戦モンテカルロでは、オリバー・ソルベルグ(ヒュンダイi20 Nラリー1)とエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)がコースオフを喫した直後、急斜面で止まった車両を近くで観戦していた観客たちに引き上げてもらったことで、デイリタイアを免れた。また、前述のとおり勝田もスタックからの脱出を手助けしてもらい競技を継続することができた。

 当時の状況を勝田は次のように振りかえった。「最初は3、4人しか居なかったので、なかなか引き上げることが難しかったのですが、(スタックから)10分くらい経った頃、他のコーナーからどんどん人が集まってきました」

「ステージ上は歩けないので、みんな山の中をかいくぐって来てくれるんです。最終的には14、5人になって、それでようやくクルマが持ち上がり(側溝から)出してもらったという感じです」

「(自分たちが)呼んだというよりも、観客の皆さんがそれぞれ自分の仕事を……仕事ではないんですけど(笑)、ふたりは(後方で他の競技者を)スローダウンさせる人で、残りの方は(周りの他の人を)呼んでくれたりとか、僕たちが何も言わなくても全部やってくれた、というのが正直なところです」

「やはりラリーが活発というか、ラリー人気が高い国ならではの光景だったんじゃないかと思います」

 また、勝田は彼らの安全に対する意識にも感銘を受けたという。

「コースオフをしたときは次のクルマが来る可能性があるので、そういったときのために注意喚起などは僕たちドライバーももちろんしているのですが、それだけではなく彼ら自身がつねに(安全の確保を意識)していたところがあったので、そのあたりも『もう本当に流石だな』と思いました」と語っている。

 なお、これらの行為は先にも述べたように本来は禁止されているものであるため、イベントの主催者より車両に触れることなどを明確に禁ずる告知等がある場合は、当該の指示に従ってほしい。

 WRC公式YouTubeチャンネルで公開されているデイ3ハイライトでは、勝田のコースオフシーンや引き上げ時の様子を確認することができる。
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