まるでラグビー?見る方も疲れる「伝説の大乱打戦」を振り返る

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2022年04月05日 07:12  ベースボールキング

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後方のスコアボードにご注目… (C) Kyodo News
◆ 合計得点が最も多かった試合は「35点」

 プロ野球が開幕してまもなく10試合。開幕ダッシュに成功した球団があれば、逆に躓いてしまった球団もあり、各チームの勢いの差が徐々に見えてきた。

 中でも心配が集まっているのが、開幕9連敗中の阪神だ。開幕戦では8−1と大きくリードしながら終盤で大逆転負けを食らい、その悪夢からなかなか抜け出すことができないでいる。




 セ・リーグでは開幕2戦目にも広島がDeNAに10−5で打ち勝つなど、出だしからド派手な打ち合いが目についた。

 年に数回は“ノーガードの打ち合い”が見られるプロ野球。今季はまだないが、時には両チームとも2ケタ得点を記録するスーパー打撃戦も展開されることもあり、ネット上では“バカ試合”と呼ばれたりもする。

 80年以上にわたるNPBの長い歴史の中で、両チームの合計得点が最も多かったのは、2リーグ制が始まった1950年3月16日の西鉄−東急の「35」だ。



 0−0の3回、西鉄は4安打を集中して東急の先発・浜田宏をKO。代わった米川泰夫にも長谷川善三・武末悉昌・原田晃が3本塁打を浴びせるなど、大量9得点。さらに4回にも深見安博の本塁打や6四球などで5点を追加し、試合を決めた。

 西鉄の先発・武末は4回に大下弘と山県富人の安打で2点を失ったものの、許した安打はこの2本だけ。16−2とリードした6回でマウンドを降りる。7回にもダメ押しの4点を加え、20−2とリードを広げた西鉄だったが、エースの降板後はリリーフ陣がピリッとせず、7回に5点を奪われると、9回にも7点を献上してしまう。

 だが、前半の貯金がモノを言って、21−14で逃げ切り。両チーム計35得点は、40年の南海−阪急の34得点(32−2)を上回るプロ野球新記録だった。


 ちなみに、東急は5月31日の毎日戦でも、11−23の“ラグビースコア”で大敗……。

 両チーム計34得点は歴代2位タイ。チーム防御率もパ・リーグ7球団中ワーストの4.51と“投壊”に泣いた。


◆ 5時間46分の死闘

 つづいて「両チーム合計33得点」を記録したのが、1993年5月19日のヤクルト−広島だ。

 ヤクルトは1回に池山隆寛の二塁打などで2点を先制すると、広島も2回にマーティ・ブラウンの一発で1点を返したあと、3回にも野村謙二郎・江藤智・小早川毅彦の3本塁打で5−2と逆転した。

 だが、ヤクルトもその裏、池山の満塁弾を含む1イニング2本塁打など一挙11得点の猛攻で、13−5と一気にひっくり返す。これに対し、広島も4回以降小刻みに毎回得点を記録して食い下がり、10−14まで追い上げたが、ヤクルトも7回に荒井幸雄とジャック・ハウエルの2発で16−10。これで勝負あったかに思われた。


 ところが、勝負事に“絶対”はない。

 広島は8回、高津臣吾と山田勉から四球を挟む6連打を記録して1点差まで追い上げると、二死後に山崎隆造が右前へ適時打。ついに16−16と追いついた。

 その後はこれまでの大乱打戦が嘘のように、一転して広島・佐々岡真司とヤクルト・山田、その後に登場した西村龍次による投手戦になり、9回裏から14回表まで計12個のゼロが並ぶ。


 そして14回裏、ヤクルトは広沢克己の四球と佐々岡の暴投で一死二塁のチャンスをつくる。

 さらに、ハウエルの敬遠と池山の四球で満塁と押せ押せムードのなか、代打・八重樫幸雄は三振に倒れて二死となったが、“恐怖の8番打者”レックス・ハドラーが中前に弾き返して17−16。5時間46分の死闘に終止符を打った。

 試合終了は、日付が変わった午前0時6分。一人で8打点を挙げた池山は「(3回の1イニング2本塁打は)まるで昨日のことだよ」とコメントしたが、「まるで」ではなく、本当に昨日の出来事になっていた……。


◆ 王監督の檄に奮起、大逆転から大量得点

 5点差の劣勢から豪打で一気に逆転したばかりでなく、その後も打線が火を噴きつづけた結果、両チーム計32得点を記録したのが2003年6月17日のダイエー−オリックスだ。

 ダイエーは1回・2回に1点ずつを挙げて2−0とリードしたが、2回裏に先発のルーキー・新垣渚が二死二塁から5連続長短打で4点を失う。

 これに対し、ダイエーも3回にペドロ・バルデスの3ランで5−4と再びリードしたが、その直後に新垣のけん制悪送球なども祟り、同点を許してしまう。

 これで勢いづいたオリックスは、4回に2安打と4四球で2点を勝ち越し。5回にも3安打と四死球で3点を加え、10−5と突き放した。


 だが6回、「あと4回も攻撃が残っているんだ。この試合展開なら、5点なんかすぐ返せる」というダイエー・王貞治監督の檄にナインが奮起する。

 先頭のバルデスの二塁打を口火に四球と安打で無死満塁としたあと、代打・村松有人の二塁打などで1点差。なおも二死一・三塁で、大道典嘉の「16年間のプロ生活でも3本の指に入るヒット」という会心の左中間2点適時二塁打が飛び出し、この回一挙6得点で11−10と逆転した。

 さらに7回にも城島健司・大道・バルデスの3連続弾と村松の3ランなどでダメ押しの10得点。終わってみれば、21−11の大勝だった。

 高校野球ならコールド負け寸前から一転コールド勝ちとしたに等しい極端な試合展開に、王監督は「5点差をよくひっくり返したけど、その後はどうなってるんだか……。21得点は(ダイエーの)チーム記録?もっと分散してくれよな」と苦笑いだった。

 その後もダイエーは、オリックス戦になると打線が爆発。7月27日は26−7、8月1日も29−1といずれも球団最多得点記録を更新。9月14日も20−11の乱打戦となり、年4度の20得点以上を記録した。


 ちなみに二軍戦では、2010年5月12日のヤクルト26−20湘南の両チーム計46得点が最多記録になる。

 壮絶な打ち合いを好むファンも多いが、あまり度を越してしまうと、見ているほうも疲れてしまう。

 やはり野球を愛したフランクリン・ルーズヴェルト米大統領が評したように、8−7くらいのスコアがちょうどいい?


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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