VTuber界でも屈指のMC力を誇る早瀬走 人を惹きつけるキャラクターと意外なギャップに迫る

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2022年04月09日 12:01  リアルサウンド

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早瀬走(C)ANYCOLOR

 現在のVTuberシーンにおけるトップランナーの一社であるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。


 メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ1年ほどはエンターテインメントのフィールドで、アーティストとして陽の目を浴びる者も増加している。


 今回は、関西出身らしいノリの良さを活かし、場の空気をまとめて切り盛りしている早瀬走について紹介したい。


【動画】早瀬が涙ながらに「Virtual To Live」を歌い上げる3Dお披露目ライブ


 2019年9月21日にYouTubeで初配信を行い、健屋花那、シェリン・バーガンディと同じくデビューを果たした早瀬走。彼・彼女ら3人については先に執筆させてもらった2人の記事内でも言及しているように、「チューリップ組」としてデビュー直後から多くの配信を共にしてきた。


 初配信時にはリレー企画「強制サムネ配信」と題した企画を実施。同期にサムネイルを作ってもらい、作ってもらった人は1週間以内にその配信をしなくてはいけないというかなり攻めた内容をこなすことになる。


 健屋からバトンを受け取った早瀬に課せられたのは「とびきりのロリボイスで配信する」というもの。声のトーンが低く、声質はスモーキーでハスキーな彼女に対し、デビューしてすぐにこんな無茶ぶりを行える辺りに、3人の関係が出会った直後からかなり良好であることがうかがい知れる。


 にじさんじの公式番組がファンの間で人気を博しているなかで、早瀬走は『にじさんじのB級バラエティ(仮)』でメインMCを担当。同じくMCを務めるイブラヒムやゲスト陣がどこか浮ついたムードで茶々を入れたりするなか、早瀬は台本に則してコーナーやトークを進めていく姿が印象的だ。


 「収録時間と放映時間がほとんど変わらない」「なんなら収録時間が短いくらいにノーカット」「手ごたえがあまりにもなさすぎて不安」「打ち合わせ用の台本が紙っぺらで複数枚」など、収録時間・内容が通常のバラエティ番組とはまったく別種というのは幾人かのカミングアウトでリスナーにも知られているところ。


 どこか緊張感が生まれづらくなりそうなムードにあって、ゲスト陣やスタッフらを瞬間的にイジったりボケたりする早瀬と、イブラヒムの持つバラエティセンスが番組の支えになっているのは言うまでもない。


 2人からポっと出る天然気味な発言もかわいらしく、ゆるいムードで進行していく当番組の性質とも重なってか、早瀬の司会やトークを見ていると「キッチリ」「襟を正す」といったマジメな印象を一層強く与えてくれるようだ。


 2021年9月下旬ごろから彼女が病気により手術・治療を余儀なくされたことで、現在もバーチャル関西に在住し、収録するためにバーチャル東京まで往復移動をしなくていけない状況などが考慮され、3〜4か月ほど番組MCを休養。その際にはリスナーたちから彼女の不在を惜しむ声が続々と上がった。


 復帰したあともコロナ禍の影響で番組放映が中止されていたが、2022年3月23日には今年に入って初収録された第27回が放映され、彼女にとってのリスタートとなった。


 屈託なくゲラゲラと笑い、様々なことに鋭くツッコミをいれていく早瀬。デビュー間もない新人に対してもツイッターを通してリプライを送るのはもはや恒例行事にもなるほど、声をかけることを躊躇わないコミュニケーション力や、パーソナルカラーである黄色にも紐づけされるような陽キャ・明るいキャラクターは、にじさんじのファン・所属タレントにも広く知られているところだ。


 そんな彼女だが、子どものころは家族のしつけが厳しく、料理・礼儀作法に至るまでキッチリと教え込まれたこともあり、会話の随所に「礼節を重んじる」ことが感じられる。彼女のキレキレだが“間違えない”ツッコミは関西人らしさというだけに留まらない、自身の性格や生い立ちからくるものだということがうかがい知れる。


 場の空気が凍らないように止めどなくトークを続けられ、ボケとツッコミもバッチリ、気心知れた相手ならかなり突っ込んだ言葉と煽りも厭わないという、まさに司会やMCに向いている彼女。裏表のないオープンな性格である早瀬はお酒を使った「呑みニケーション」を通して一気に仲良くなることが多い。


 2019年11月中ごろに腹腔鏡手術を行ない、12月17日に全快祝いとしてでびでび・でびるとベルモンド・バンデラスという酒にお強い2人に加え、「酒雑」と題して飲酒雑談を好んでいたニュイ・ソシエールも加わった4人があつまり、酒を飲むだけの配信を行なったこともある。


 4人ともに映画好きという趣味が奏功し、その後4人は「にじさんじ映画部」として視聴者と同時視聴して楽しむグループを結成、数か月に1度集合して映画をみるような定期部会のようになった。


 早瀬・ベルモンド・ニュイの3人に、渋谷ハジメとドーラが加わった5人ではMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の映画作品を公開順に同時視聴していく「にじさんじアベンジャーズ祭り」を定期的に開くことになり、映画好きの輪が広がっていくことに繋がった。


 そんな彼女のトーク力を如何なく楽しむならば、にじさんじの同僚らを呼んで1対1で酒を飲み交わし合う「オンラインサシ飲みコラボ」だろう。


 事前に視聴者からトークテーマやお題を募り、そのテーマをツマミにしながらゆるくトークとお酒を楽しもうというこの企画配信は、いっさい台本ナシ、早瀬が率先してぶっちゃけたトークをぶつけていくことで、対談相手も徐々にぶっちゃけた話をしていく展開が多い。2時間前後ほどに渡ってトークしていくなかにも各回それぞれに濃密なトークがくり広げられる企画配信となっている。


 2020年4月のコロナ禍が始まりだしたタイミングで、同期の健屋花那を先頭に「オンラインサシ飲みコラボ」がスタート。シェリン・バーガンディ、ニュイ・ソシエール、フレン・E・ルスタリオ、相羽ういは、でびでび・でびると仲の良いメンバーが続き、徐々に「友人の友人」「自分の趣味を知る同志」なライバーから、顔見知りではあるがこれまで配信上ではほとんど繋がりがなかったようなライバーに至るまで、これまでに15回に渡って配信されてきた。


 早瀬を「常識ある振る舞いでキビキビとしているタイプ」とするならば、「ルールを知りながらあえてルールを破ろうとするタイプ」や「そもそもルール知らずに突っ切っていくようなタイプ」といったまったく違うカラーを持つ演者との絡みも面白い。


 グウェル・オス・ガールと相羽ういはと3人で絡む「ういにんグらん」がまさにその組み合わせになるだろう。


 リスナーからの質問などを集めて恋愛・結婚・人生相談をこなし、3人それぞれがバラバラな意見を持つがゆえに、ゲーム配信でも意見が分かれて対立するなど、3人のバラエティ豊かで突飛な答えが人気を集めている。


 どこか浮世離れしたアイディアや深い洞察力に加え、並外れた努力家としても知られる相羽ういはとのコンビは、ニュイ・夜見れなとの「うにゅれそう」などほかにも多くの場面で見られる。


 フッと思いついたエグい内容を相羽がウキウキと声に出し、「いやそうじゃないねん、ういは」とうなだれてツッコむ早瀬、ふたたび2人での配信が見られる機会があれば、是非目にしてほしい。


 周囲を明るく盛り上げ、グループの輪を切り盛りするタイプの早瀬。この姿は多くのファンにとってパブリックかつ最も知られた一面であろう。彼女が子どものころに厳しい教育を受けているなかにあっても、マンガやゲームといった知識を備えていったのは、近所に住んでいた幼馴染のお姉さんの影響があるようだ。


「近所に住んでいた幼馴染のお姉さんがガチの腐女子だった。そこでオタクの知識をすべて取得したと言っても過言じゃない」


「本棚にBLの本がドン! と隠さずに置いているような方だったんだけど、そこで『るろうに剣心』を読んでいて、読み終わって本棚に返しに行ったとき、背表紙に剣心が描かれていて、『なんか絵柄が違うなぁ…?』と思って手に取ってパっと読んだら、剣心と左之助が…アタシが初めて見たBLはそんな出会いでしたね」


「そのあとは自分でもハマってアンソロジー本を買いまくりましたね、ハマったのは小学校のころ。巷にジャンプのアンソロジー本が沢山あったので読みまくった」


 それまでの配信でも下ネタやエロいネタについてはオープンであった早瀬だが、にじさんじのなかでも屈指のBL好きとして知られる鈴鹿詩子を相手にして、彼女に比肩するほどのBLへの知見の深さや嗜好性を語り合い、多くのリスナーを置いてけぼりにしてしまった。


 「東の鈴鹿、西の早瀬」と概要欄には書かれているが、「あのころを懐かしむ」ような話題が多数あり、2013年に撮影された早瀬の本棚をみた詩子も「これはやばい」と答えるほど。


「まえに数えたときは2000〜2500冊あった、いまはもっと増えてるかな」(配信時:2020年9月14日。おそらく約7年ほど前のこと)


「スライド式の本棚なんだけども、スライドの間にも本を挟んでいるから奥の本が一生取れないのよ」


「いまはもうKindleで全部買ってる。いまの時代を生きるオタクは電子書籍に感謝すべきだと思う」


 海外旅行やアウトドアが好きで、先述したようなコミュニケーション力の高い人物像とは裏腹の、あまりにも深い愛情を垣間見ることができる。


「最初はにじさんじはおろか、VTuberをあまり知らなかった。ふっとしたときにVTuberに触れる機会があって、『こんな世界があるのか、ならちょっと自分を試してみようかな』と思ってオーディションを受けた。本当に軽いノリだった」


「いろんな事務所を見ていくうちに、バラエティ豊かなにじさんじを受けたんだよね。あたしを合格させたその時の採用担当は、ちょっと頭が狂ってたんじゃないか? って思っちゃうくらい」


 デビューするきっかけについてこのように話す彼女ではあるが、その後におけるにじさんじ内外での活躍や本人の性格・キャラクターのエッジさを鑑みれば、彼女をにじさんじの一員に選んだのは間違いのない選択であったろう。


 そんな彼女であるが、デビュー初期からその特徴的な声色でリスナーの耳を惹き、特に歌配信や歌ってみた動画でも注目を集めてきた。女性としては低めな声のトーン、声質はスモーキーかつハスキー、若いころにポリープに近い症状をかかえたあとに現在の声になったという。


 彼女の嗜好性で特徴的なのは、ロボット系アニメソングや昭和歌謡が大好きという点だろう。「最近のアニソンは知らん」とキッパリ言っており、全体的に00年代から90年代、選曲によっては80年代前後に選曲が偏る生歌配信もあるほどだ。


 同じにじさんじでいえばメリッサ・キンレンカやレヴィ・エリファらが、彼女と同じようか声質・歌唱で注目を集めるところ。もしも彼女ら3人が集まって歌を唄ったなら? などと想像してしまいそうになる。


 2022年3月6日には、自身にとって念願となる3Dの姿をお披露目することに。当初はもう少し早いタイミングであったはずが、先述した病気の手術・治療と重なり、ほぼ半年ほど延期したうえでの発表となった。


 彼女のライブがこれまでの3D披露目配信とは一線を画していたことも、注目される理由にもなっただろう。最初に告知された段階から『3D LIVE』を配信前から謳っており、にじさんじの公式ライブと同じような「イベント直前突撃リポート」を模した配信までするなど、徹底したオマージュぶり。


 「イベント直前突撃リポート」に登場するちょっとおかしな(?)お客さんたち、ライブ本編に早瀬と共にコラボした同僚のライバーたち、楽曲でちょっとだけコーラスに参加している人やアンコールの声に参加した方々、なにより会場のナレーション役を務めた同期の健屋とシェリンの2人に至るまで、30人前後のライバーらが彼女の配信に関わった。彼女の人柄の良さや明るいキャラクターが、この大きな輪を生んだのは言うまでもない。


 アンコールとして「Virtual To Live」を唄うと、彼女からは自然と涙が溢れた。それはこの配信に大きく力を割いたからだけではなく、支えてくれた仲間の姿や数年に渡る活動が脳裏をよぎったからであろう。


 2022年もまだ3か月が過ぎたところ。今後は彼女がどのような活動・アクションを見せてくれるのか、注目が集まるところだ。(草野虹)


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