BTS、RMが語った次なる目標は“全自作のアルバム” 各メンバーが自作曲でARMYと交わしてきた様々な感情

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2022年04月17日 10:01  リアルサウンド

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BTS「Butter」

 BTSのRMが、コンサート『BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE – LAS VEGAS』の初日公演を終えた4月9日に、V LIVEにて生配信を行なった。


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 歓声&スタンディングあり、という久しぶりの有観客ライブの雰囲気を存分に楽しんだというRM。だが、『PERMISSION TO DANCE ON STAGE』の公演は全曲を7人全員で歌って踊るというハードな内容だけに「もう言葉も出てこないや」と率直な言葉がつい口をつく。それでも、こうして公演後に生配信を行なうのは、もはやそれが「公式」だと笑う。ARMY(ファン)と共に、そんなBTSの姿勢を改めて感じさせるシチュエーションだった。


 いつものようにリラックスした状態でARMYとの交流を続けるうちに、話題は今月4日( 日本時間)に開催された『第64回グラミー賞』授賞式に。ヒットソング「Butter」で「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」初受賞が期待されていたものの惜しくも逃す形となったBTS。だが、そのステージで披露されたスパイ映画風のパフォーマンスが話題をさらい、その存在感を見せつけることになった。


 「僕たちがやるべきことは、今からまたベストを尽くして、もっといい姿を、もっといい音楽を作ることです。それが僕たちのやるべきことです」。そう力強く語るRM。悔しくないといえば嘘になる。だが、BTSにとって今年のグラミー賞もまた確かなステップを踏んだという手応えに繋がっているようだ。そんななか、RMが新たな目標を語る場面も。「一番感じることは、僕たちがアルバムの作業に直接参加しなければならないということ」「作詞作曲に参加して、編曲もいつかは自分たちだけでやらないといけないということです」、そして「僕たちがもともといた地点に戻るべきじゃないか」というのだ。


 BTSがもともといた地点。今や世界中にその名を轟かせるグローバルグループとなった彼らだが、振り返れば7人全員が地方出身であり、まだ走り出したばかりの小さな事務所からのスタートだった。デビューできる保証もなく、それでも宿舎で共同生活をしながら、がむしゃらに練習を続ける日々。当初予定していたヒップホップグループからアイドル路線への変更に、大きなショックを受けたこともあった。


 ようやくデビューを掴んでも「売れた」と言える状態になるまでは、時間もかかった。音楽番組で1位を獲得したのは約2年後。多感な10代の時期に、彼らが味わった喜怒哀楽はどれほどのものだっただろうか。そんな彼らが学んだのは、それぞれの思いを音楽で語ることだったように思う。


 「Dynamite」や「Butter」「Permission to Dance」のように、世界的ヒットソングを世に送り出しながらも、BTSのメンバーは時間を見つけては積極的に楽曲制作に取り組み、SoundCloudなどで配信している。BTSというグローバルグループとはまた違う、彼らの私的な心情が垣間見えるのもまた自作曲ならではの表現だ。


 RMが作詞作曲を始めたのは小学校6年生だったそう。RMを主軸としてBTSが作られたという背景がある通り、「Boy With Luv」「FAKE LOVE」「IDOL」などグループで発表した数多くの楽曲の作詞作曲のクレジットに名を連ねてきた。そんなRMが2021年に発表した「Bicycle」は、「BTSのリーダーであるRM」というよりも、「サイクリングを楽しむキム・ナムジュン」といった雰囲気がよく感じられる作品だ。自転車を愛し、美術館を巡ったり、ゆっくり読書をしたり……オフの日にはそんなゆっくりとした時間を過ごすというRM。“もう僕の心は週末のモード”と綴るように、優しく響くギターの音色に、まるで彼の休日を追体験している気分になれる。自ら愛しい世界を創っていくという、RMの原点のような温和なスタイルが伝わってくる。


 同じく、デビュー前から精力的に作詞作曲を手掛けてきたのが、当初プロデューサー志望だったというSUGAだ。「血、汗、涙」「DOPE」など数々のBTSの名曲を手掛け、他のアーティストへの楽曲提供やコラボも積極的に行なってきた。またAgust Dのソロ名義でも活動。2022年にはJUNG KOOKが歌う「Stay Alive」をプロデュースしたことでも注目を集めた。クールなメロディに乗せて、たとえ血まみれになったとしても君のそばにいるのだと、熱い献身的な愛が綴られる歌詞にドキッとさせられる。生々しく、ときに社会を痛烈に批判することもあるSUGAの楽曲。普段、口数の少ないSUGAが秘めた様々な感情が音楽を通じて一気に吹き出してくるようだ。


 そしてRM、SUGAと共にラップラインを務めるJ-HOPEも、2018年にミックステープ『Hope World』を発表。そして3年後に、そのうちの1曲「Blue Side」を新たに作り直して発表するというユニークな動きを見せた。最初に発表したときの気持ちを「思うままに書いていた、純粋だった少年の音楽日誌」と振り返り、「音楽的に少しは大人になった姿を見せたかった」と明かしたJ-HOPE(※1)。自作曲を「日誌」と表現しているところにも彼らしさを感じずにはいられない。感じるままに身を委ねて陶酔したくなるメロディでありながら、その根底にはどこまでも客観的に見つめる冷静な眼差しがある。それはどんなに残酷な現状を目の前にしても、希望を見出し続けるJ-HOPEの信念そのものなのかもしれない。


 次々と楽曲を生み出していく兄たちをリスペクトし、RMにアドバイスを受けながら自作曲「約束」を作り上げたのはJIMINだ。2018年に6〜7カ月かけて制作されたこの曲はSoundCloudにおいて、2021年にはストリーミング世界1位を記録したことでも話題となった。どんなに辛くても笑えるように、素直になれるように、一人だと感じても自分を見捨てないでと約束してほしい……JIMINが歌うのは、いつも彼がARMYに投げかける言葉そのまま。そして、2曲目の自作曲となる「Christmas Love」は、そのタイトル通りARMYへのクリスマスプレゼントとして贈られた曲。そのまっすぐな愛が、JIMINの澄んだ歌声によって、聴く者の心によりスッと気持ちよく浸透していく感覚だ。


 2020年に初の自作曲としてJUNG KOOKが発表した「Still With You」も、ARMYへのラブレターと呼べる楽曲だ。パンデミックによって、会えなくなってしまったARMYへ。いつになるかわからない再会のときに思いを馳せ、目を見つめて「会いたかった」と伝えたいと歌う曲。一見すると王道のラブソングにも聴こえるかもしれないが、さりげなくBTSとARMYをつなぐ紫色の景色を想像させる歌詞が入れ込まれているところが、より一層ARMYにとって特別な歌になっている。また、V LIVEの生配信でアカペラを披露してみせたところも、歌番組や大きな会場でのライブとは違った感情の伝わり方があった。多くのARMYに向けた曲ではあるものの、その1人ひとりに届けられるような温度感が両立し得るのだと気付かされる1曲だ。


 そうしたパーソナルな感情がダイレクトに伝わってくるという点では、JINが2019年に発表した初の自作曲「Tonight」も胸を打つものがあった。アコースティックなメロディに乗せて、愛する人との時間を思い返すこのバラードは、JINが溺愛していたフクロモモンガの「オデン」と「オムク(オムギ)」、白い犬の「チャング」を想って作られた曲。また2020年に発表したソロ曲「Abyss」の作詞を担当すると、そのタイトル通りツアーができない期間の絶望を率直に曲へと昇華。そして曲を作り歌うことでその気持ちが軽くなったのだとインタビューで答えていたのが印象的だった(※2)。一方で、その1年後にこれまでの自作曲とは全く雰囲気の異なるトロット(韓国演歌)風の「Super Tuna」を発表するという幅広さにもしびれた。JINという人の引き出しはまだまだ奥が深いと思わずにはいられない。


 そして幅広い楽曲に常に挑み続けている人といえば、Vがいる。日頃からジャンルを問わず様々な楽曲を聴いているV。その興味の幅に比例するように自作曲のラインナップも実に色彩豊かだ。2016年にリリースされたBTSの2ndアルバム『WINGS』収録のソロ曲「STIGMA」から、すでに作詞作曲を手掛けており「歌詞には僕の個人的な話を収めた。過去僕が大変だった時期、その瞬間を歌詞で表現した」とコメント(※3)。その後「Inner Child」においても、かつての自分を振り返って作詞したと語られている。また、2019年には「Scenery」「Winter bear」とコンスタントに発表したかと思えば、Peakboyと共同制作した「Snow Flower」を、さらにパク・ソジュンの主演ドラマ『梨泰院クラス』のOSTとして「Sweet Night」も手掛けるなどなど、次々に親友グループ・ウガファミリーとの絆を感じさせる作品を発表。制作スタイルそのものも変化を遂げていく。常に自分の新しい一面を見せていこうというVらしい動きだと感じた。


 改めて彼らの自作曲を振り返ってみると、そこには彼らがARMYと交わしてきた多くの感情があることがわかる。この関係性をRMはV LIVEで「韓国ではこれを縁と言うんですが、僕たちはお互いに特別な存在になりました」「喜びと楽しさは本当に短い。でも僕たちはお互いに出会って、すごいものを作っています」と語った。


 メンバー個人の感情から、ARMYと共有した風景が、また新たな感情へと繋がっていく。そんな相互的なやりとりが、次の作品を生み続けていく。その積み重ねの先に、きっとRMが見据えている「作詞も作曲も編曲も自分たちだけで作るアルバム」があるはず。ARMYと共に7人それぞれの持つ感情、視点、表現が今後どのように変化し、どんなアルバムへと繋がっていくのか。ますますBTSのこれからが楽しみになった。


※1:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2163423
※2:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36055/2/1/1
※3:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2054344(佐藤結衣)


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