『インビジブル』はヒーロー映画にも通じる? 2次元をも行き来する高橋一生&柴咲コウ

0

2022年04月29日 06:11  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『インビジブル』(c)TBS

 目的のためならグレーな手段も厭わない型破りな刑事。コードネームで呼ばれる国籍・年齢不詳の美しき犯罪者。そんな異色のコンビがタッグを組み、表社会では認識もされていない謎の凶悪犯たち“クリミナルズ”を追う……。


【写真】『岸辺露伴は動かない』での高橋一生


 まるでヒーロー映画にも通じる、非現実的な設定が続々と登場するドラマ『インビジブル』(TBS系)。爆弾が仕掛けられたビルから川の中に飛び込み、粉塵爆発を使って犯人の目をくらませピンチを脱するなど、アクションシーンも数多く設けられているところも、まさにクライムエンターテインメントといったところ。


 ともすれば、「実際にはありえない」となってしまいそうなところだが、この作品と視聴者を力強くつないでいるのが、高橋一生×柴咲コウの強力タッグだ。2人の抜群の演技力があるのは言わずもがな、共通するのは2次元と3次元を自由に行き来することができる、その存在感だ。


■リアリティを超える高橋×柴咲タッグの説得力


 最近の作品で言えば、高橋は人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』からスピンオフした作品『岸辺露伴は動かない』(NHK系)で、漫画家・岸辺露伴を好演。「だが断る」「おいおいおいおいおいおいおいおいおい」など、ともすれば実写化すると浮いてしまいそうな独特なセリフや言い回し、立ち姿をも、すんなりと私たちの前に形にして見せてくれた。


 そして、柴咲もまた大ヒット漫画『xxxHOLiC』(講談社)の実写映画『ホリック xxxHOLiC』にて、願いを叶える店の妖しい女主人・壱原侑子を演じたことでも話題をさらったばかり。キャラクターのイメージが強いほど、それを生身の人間が演じてしまうとコスプレになりがちな実写化だが、柴咲が持つ“浮世離れした造形美”が違和感なく成立させてしまう。


 そんな高橋が暴走しがちで危うい刑事・志村貴文を、そして柴咲が“インビジブル”の異名を持つ犯罪コーディネーターのキリコを演じている本作。2次元の漫画を3次元にすることができる2人の演技と存在感は、むしろ実写でありながら漫画のような世界観も構築可能であるのだと言わんばかりの新しい感覚を覚える。


 高橋×柴咲のタッグで、多くの視聴者が心を奪われた大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合)での熱演も、今となっては2人の前世を知っているかのような気分になる。行ったことも観たこともない時代の物語にもかかわらず、鮮明にその世界を思い返すことができる。現実的であること=リアリティ以上に、その「世界があった」という説得力の強さが、このタッグにはある。


■ルールに縛られる今こそ楽しみたい作品


 また、本作は『ROOKIES』(2008年)、『クロコーチ』(2013年)と、TBSで人気漫画の実写化を手掛けた脚本家・いずみ吉紘のオリジナル作品でもあることも、この漫画のような設定と疾走感につながっているのかもしれない。


 自らの「作品だ」とでも言わんばかりに、劇場型の事件を仕掛けていく“クリミナルズ”。そんな凶悪犯の存在にさえ気づくことができず、後手後手にまわってばかりの頼りない警察組織。現実社会においては、そのような図が成り立っては困る。だが、これはフィクション。だからこそ、常識外れなタッグが必要だし、ルールに縛られない作戦が功を奏する世界線なのだ。


 例えば、キリコが住む“民宿”と呼ばれる警視庁管轄の要人用シェルターは豪華な洋館風。囚われの身ではありつつも、好きなものを食べ、好きなファッションを楽しむキリコに、「いくら捜査協力をするとはいえVIP過ぎる」なんてツッコミたくなるところも。だが、普段表の社会にいる私たちには見えていないだけで「もしかしたらそんな犯罪者VIPがいるのかもしれない」なんて想像して楽しんだもの勝ちだ。


 ドラマには、リアルと連動したヒリヒリするような作品がある一方で、こうした空想的な作品があってもいい。特に、日々苦しいニュースに心が荒み、様々なしがらみにとらわれがちな今を生きる私たちにとっては。自分の思うままに暴れてくれる志村や、大胆不敵に手のひらで人々を動かしてしまう魅惑的なキリコの存在が一服の清涼剤となってくれる。


■注目は、散りばめられた数多くの謎たち


 高橋×柴咲の心強いタッグの上に、エンタメ性に突き抜けた自由度の高いオリジナル脚本。ここから、どう舵を切っていくのだろうか。その主軸となるのが、志村の追う3年前の未解決・通り魔殺害事件。志村が暴走しがちになったのは、その事件で元同僚・安野が命を落としてからだと言われている。加えて、キリコとタッグを組むことになったのも、この事件の情報を握っていると見込んでのこと。この事件の真相がどのように明かされるのだろうか。


 また、正義感の強い監察官の猿渡(桐谷健太)と志村との対立も気になるところ。事件解決のために問題行動を繰り返す志村に目を光らせるのは、職務上当然のことかもしれないが、あまりにも執拗に追いかける姿は、刑事と監察官以上の因縁があるのではないかと考えてしまう。


 さらに、“インビジブルに翻弄される警察組織”を地でいく刑事部の面々だが、捜査一課課長の犬飼(原田泰造)や警部補の磯ヶ谷(有岡大貴)、特命捜査対策班班長の塚地(酒向芳)らが、今のところほのぼのとしてしすぎているような気もする。人のいい刑事たちで終わるのだろうか……なんて考えてしまうのは想像力を働かせすぎだろうか。


 そして最大の謎は、インビジブルと呼ばれるキリコの背景だ。今のところ各話で登場したクリミナルズたちのバックグラウンドもほとんど描かれていない。なぜ彼らがクリミナルズになったのか、どのようにしてキリコがインビジブルと呼ばれる存在になったのか。そして、どうして志村に近づくことにしたのか。刑事と犯罪者でありながら、協力関係にある志村とキリコの複雑な縁。やはり最後は、高橋×柴咲が魅せる絆の在り方が楽しみでならない。


(佐藤結衣)


    ニュース設定