迫田孝也、小劇場からテレビへ 『マイファミリー』『俺かわ』『鎌倉殿』で激的な変化

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2022年05月08日 12:01  リアルサウンド

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迫田孝也『マイファミリー』(c)TBS

 TBS系日曜劇場『マイファミリー』で捜査一課の管理官役を務めている俳優の迫田孝也。『99.9-刑事専門弁護士- SEASON II』、『天国と地獄〜サイコな2人〜』、『ドラゴン桜』と日曜劇場の常連俳優であり、2021年10月から2クールで放送された『真犯人フラグ』(日本テレビ系)、そして現在放送中の『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)と出演作が絶えず、引っ張りだこで大活躍中だ。


【写真】『俺かわ』で山田涼介&大橋和也に挟まれる迫田孝也


 今回、劇団時代から今にかけての芝居に対する思いの変化や、共演する若手俳優たちから受ける刺激について、語ってくれた。(編集部)


■どうやったら上司に見えるのか、悩み


――日下部七彦をどのような人物と捉えていますか?


迫田孝也(以下、迫田):誘拐事件の陣頭指揮を執る管理官なので、ある程度、出世コースの中でいいところにいるとは思います。でも、ちょっと出遅れて焦りがあるという設定なので、少し前のめりなところも見せながら、玉木(宏)さん演じる葛城との対比で警察内部の人間模様みたいなものが表現できればいいかなと思っています。一方で誘拐事件に対しては、真正面に誠実に解決に向けて尽力する、というところはブレないように意識して演じています。


――性格面についてはいかがですか?


迫田:日下部は、よく物を食べてるんですよ。ガムを噛んだり、飴を舐めたり。管理官として本当は一番しっかりしなきゃいけないけれど、緊迫したシーンが多い中で、少し気持ちを緩められるキャラクターという役割もあるのかなと。ほんわかしていて、ちょっと抜けている。『マイファミリー』の中では、貴重な存在だと自分では言っています(笑)。


――これまでの撮影で印象的だったシーンを教えてください。


迫田:指揮官車はセットなんですけど、その中で朝から晩までひとりで撮影するので、ちょっとどうかしちゃいますよね(笑)。指示を送っているシーンが多いので、“ずーっと滑舌よく言葉を発してる1日”というのが、『マイファミリー』の撮影に関する記憶でございます。でも、本部に帰ると「俺は管理官なんだな」と認識できます。みんなが「はい!」とか言ってくれるから、あっちの方が好きですね。あのシーンは気持ちいいです。


――捜査一課メンバーの印象は?


迫田:真面目な物語なので、ヒリヒリするわけですよ。でも、吉乃一課長を演じていらっしゃるのは富澤(たけし)さんだから、なんか油断ならないんですよね。「いつかこの人ボケてくるんじゃないか」というドキドキ感は毎回あります。


――視聴者の中にも、ドキドキしている方が多そうですよね(笑)。玉木さんはいかがですか?


迫田:玉木さんも油断ならないんですよ。みなさんお気づきだと思いますけれども、玉木さん、すげぇかっこいいじゃないですか。貫禄があって、一言喋るたびに重低音ボイスを利かせてくる。かたや、ちょっとご飯食べたり、ちょっと嫌らしさを見せたり……そんな上司がどうやったら立場的に上に見えるのか。気を抜くと管理官としての日下部が成り立たなくなってしまうので、そこが悩みではありますね。


――撮影の合間に、玉木さんとはどんなお話を?


迫田:今回初めて共演させていただくんですけれども、本当に気さくな方です。山田キヌヲさんもわりと年代が近いので、昔話をしたり、和気あいあいとお喋りしています。


■若手俳優たちへの興味


――梅木役の那須(雄登)さんともお話しされますか?


迫田:那須さんに関しては、逆に僕の方が興味を持っちゃうんですよね。役者としての経験はまだ少ない中で、「この役をどう考えてるの?」とか「どう演じてるの?」とか、よく聞いています。僕は自分が役者を始めた頃のことを忘れちゃってるので、改めて那須さんに話を聞いて「ああ、そうかそうか」と共感できるところもありますね。


――初心を思い出すわけですね。『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』の制作発表会見のときにも、なにわ男子の大橋和也さんから学ぶことがある、といったお話をされていました。


迫田:そうそう! なんなんですかね。大橋くんも那須くんも、最初に向こうから話しかけてくれたけど、これって結構難しいというか、僕だったらかなり覚悟を決めないとなかなか年上の方に話しかけることはできないと思うんですよ。それなのに、スッと入ってきて自然と会話できる流れを作ってくれて。すごく感心しました。


――ふだんから若手の方から学ぶことを意識されているというより、今期で特に感じていらっしゃると。


迫田:このシーズンは特にそうですね。今までは自分より年上の人たちの中でお芝居をしてきた感覚だったんですけど、最近は自分が歳をとって中堅といえるような位置に来て、ふと周りを見たら20代の若い俳優さんたちがいっぱいいて。さあ、僕はこの中でどう居ればいいんだろう、とちょっと戸惑ってるときに向こうから話しかけてくれたので、ありがたかったですね。


■二宮和也の演技を見て


――今回、二宮さんとの共演シーンはありましたか?


迫田:まだないんですよ。でも以前、山田洋次監督の『母と暮せば』で、二宮さんを連れて行く憲兵役で共演したことはあります。


――二宮さんのお芝居の魅力についても聞かせてください。


迫田:たとえば映画を観ていても、一番感じるのは“等身大の人間を演じている”ということ。全然背伸びをしていないので、そのあたりを「自分に取り入れたいなぁ」と思ったのを覚えています。力の抜き加減というか、2本の足で地面に立ってお芝居をするとはどういうことなのか、二宮さんの芝居を見て考えたことを思い出しました。


――等身大の人間を演じるというのは、やはり難しいんですね。


迫田:そうなんです。どうしても力んでしまうし、盛りたくなっちゃうんですよね。


■テレビでどう物語に引き込んでいけるのか


――迫田さんは今期、『マイファミリー』『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』『鎌倉殿の13人』に出演中で、大忙しかと思います。


迫田:すごく楽しいですね。演じることは非日常の世界を生きるという認識なので、もちろん家庭で日常を過ごす時間もありながら、切り替えて非日常を過ごすっていうメリハリみたいなものがすごく刺激的で、「こういうのやりたかったんだよ!」と今思っています。


――SNSでご自身の話題があがっていたり、街で話しかけられたり、そういった変化は感じますか?


迫田:それはもう、本当に変化しました。振り返られることだったり、「あれ今、気づいたのかな?」と思うような視線を感じる回数がすごく増えて、ちょっとウキウキしちゃうっていう(笑)。ここらへんが甘ちゃんだと思うんですけどね。


――(笑)。でも、そうやってたくさんのキャラクターを演じていると、役を切り替えるのが難しそうです。


迫田:役が体に馴染むまでは心の準備をして撮影に臨みますけど、役が体に馴染んできたら、勝手に自分の中のスイッチングで切り替えはできるようにはなりました。でも、やっぱり最初は大変ですね。


――どのくらいで馴染んでくるものですか?


迫田:出演シーンの分量にもよりますが、クランクインするまでは一日一回は台本を読んで、その世界に入るっていうのを繰り返します。で、現場に入ったら周りとのバランスを見たり、監督との話し合いで付け加えたり、削っていったり、ということをして、第2話くらいまでに作り上げるのを目標にしてます。そのあたりから自然と体が動くようになりますね。


――劇団時代からスタートして今に至るまで、お芝居に対する思いに変化はありますか?


迫田:劇団時代は小劇場でやっていて、そこには自分を応援してくれる人たちが観に来てくれるので、自分がやっていることがある意味、正解だったんですよね。でも、テレビで不特定多数の方に見ていただくとなると、価値観が多様にあって。その中で自分の役柄のどこに共感を持ってもらえるか、どうやったら観ている方々を物語に引き込んでいけるのか、というのはなかなか難しいなと。生の舞台のようにエネルギー的なものではなくて、すごくすごく繊細に積み重ねていかないと、観ている方を魅了することはできないのかなと最近感じたことがありました。


――いろいろと変化をしていく中でも、役者として変わらずに持っていたい信念を教えてください。


迫田:みんなを楽しませたいです。やっぱり“エンターテイメント”という部分は、これからも大事にしていきたいですね。自分のエゴではなくて、周りを楽しませる。その思いで作品を作ることができたら、それが僕の幸せにも繋がっていくのかなと思っています。


(取材・文=nakamura omame)


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