『正直不動産』明かされた桐山の意外なバックグラウンド 市原隼人が役の奥深さを体現

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2022年05月11日 06:11  リアルサウンド

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『正直不動産』(写真提供=NHK)

「今は、何のために仕事をしているのか?」


 桐山(市原隼人)が永瀬(山下智久)に問いかけた質問にこそ『正直不動産』(NHK総合)が描くテーマの本質が隠されているのではないだろうか。第6話で描かれたのは、桐山と彼の父親にまつわる過去だった。


【写真】俺たちの市原隼人が帰ってきた!


 ミネルヴァ不動産に情報を流しているのは桐山だとにらんでいた永瀬だが、社長の一声で疑念を抱いたまま2人はペアになり建築条件付き土地を売らなければならなくなってしまう。はじめは営業スタイルも、アプローチもバラバラだったふたり。しかし次第に、お互いの仕事ぶりに刺激を受け合い、問題だらけだった竹鶴工務店へのより良いアプローチ法を模索し始める。永瀬が懸命に下請けの工務店に足を運び、信頼を勝ち取ったところに桐山の提案が加わり、このプロジェクトは最高のかたちで終結した。永瀬と桐山の間にあった不信感も拭われ、桐山がスパイではないと疑いも晴れた矢先に、桐山は登坂不動産に退職を申し出る。


 第6話では、「疑惑の人」として描かれていた桐山の意外なバックグラウンドが明かされることになる。これまでも、客との関わり方は丁寧で、売上に貪欲ながらよく練られたプランを組んできた桐山。しかしミネルヴァ不動産の鵤社長(高橋克典)と密会していたことでスパイの疑いがかけられてしまった。そこに桐山の亡くなった父親の思わぬ事情が明らかとなる。かつて下請け業者だった桐山の父は、欠陥マンションの責任をひとりでとることになってしまい、自殺をしていたのだ。そして鵤との密会もこの父親の事件が関係していることがわかり、ひとまず桐山の疑惑は晴れたと言ってもいいだろう。


 永瀬との関わりでは無骨で愛想のない姿を見せていた桐山だが、実は月下(福原遥)の目線を借りることで、実直かつ努力家、真っ直ぐな人となりが見えてくる。桐山は、これまでにも月下のチラシ配りを手伝ったこともあり、他にもさりげなく月下の仕事をサポートしてきた。キャラクターの視点によって桐山自身のイメージが大きく変わるという点は、『正直不動産』の奥深さのひとつでもあるだろう。現実世界での同僚がそうであるように、桐山という人間も、それぞれの登場人物の視点によって見え方は大きく異なっているのだ。桐山を演じる市原隼人もまた、様々な方向から役と向き合い演じていることが伝わってくる。登坂社長(草刈正雄)にとっての桐山、月下にとっての桐山、そして永瀬にとっての桐山では同じ役であっても少しずつ違いがあるのだ。特に、プロジェクトを通して信頼関係が深まった永瀬との関わりの中には、桐山がリスペクトを持って接していることが感じられるシーンも。多くを語る男ではない桐山だが、市原の“雄弁な表情”によって奥深く魅力的なキャラクターに描かれている。


 最初のうちは、嘘がつけなくなったことで仕方なく正直に生きていた永瀬だが、取引先や顧客との信頼関係を築く中で徐々に、お金以外の「やりがい」や「プライド」を見出していく。そしてついに「顧客一人一人に正直営業をする」と公言したのだ。どうやら永瀬の姿勢は桐山だけでなく、「フェアに仕事をしたい」と宣言した花澤(倉科カナ)や客のために融資の計画を手伝おうとする榎本美波(泉里香)にまで影響を与えている様子。永瀬の真っ直ぐな仕事ぶりは今後、周りをも変えていくのかもしれない。


(Nana Numoto)


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