等身大の自分を受け入れる 『私たちのブルース』脚本家ノ・ヒギョンによる韓国ドラマ4選

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2022年05月21日 08:01  リアルサウンド

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『大丈夫、愛だ』(写真はSBS公式サイトより)

“人生は思い通りに行かない。だけれど、それが人生なのだ”


【写真】ノ・ヒギョン最新作『私たちのブルース』最新話7カット


 そういって、生きる大変さと日常の小さな幸せを描く韓国ドラマ『私たちのブルース』。あまりの豪華キャストと名脚本家のタッグに、番組放送前から注目されていた話題作だ。全20話で、現在Netflixで週次配信中となっている。本記事では、そんな数々の名作を生み出してきたノ・ヒギョンの作品をいくつか紹介したい。


■『私たちのブルース』(2022年)


 済州島を舞台に、事情を抱えた人々の揺れ動く心情と懸命に生きる姿を描いた作品。オムニバス形式となっており、数話ごとにメインとなるキャラクターが変わっていく。オムニバスと言っても、各話が完全に独立している訳ではない。それぞれの話に登場するキャラクターが他の回でも登場し、交差しながら新たな物語を紡いでいくのだ。


 本作の見どころの一つは、劇的に何かが変わらないことだと思う。派手なアクションがあったり、物語の展開速度が早かったりするわけではなく、淡々と海辺の街で起きる日常を映し出していく。ただ、それが良い。人生は、決断と覚悟の積み重ねであることが強調され、登場人物たちがどう次の一歩を踏み出すか見届けたくなるのだ。全てが上手くは進まないため、モヤモヤもするだろう。だが、生きてさえいれば道は開けると思わせてくれるような作品だと思う。葛藤や迷いも含めて、これが生きるということなのかもしれない……とドラマの中にリアルさを感じる一作なのだ。


■『ライブ〜君こそが生きる理由〜』(2018年)


 分署に配属された新任警察官たちが、一人前になるまでを数々の残酷な事件と共に描くヒューマンドラマ。義理堅い警察官の家族愛、不条理な現実への葛藤、支え合いが丁寧に描かれており、涙なしには観ることができない。覚えきれないほどの登場人物それぞれにドラマがあり、気付いた時には全員に感情移入し愛おしくなってしまう。


 警察官だからといって無敵な訳ではなく、同じ一人の人間なのだということを細かく映し出しているのが見どころの一つ。厳しすぎる状況の中で、一歩ずつ前へ進んでいく姿から目が離せなくなる。また、緩急をつけるように、恋愛やサスペンス要素も含んでおり、彼らと共に喜怒哀楽を体感していくような作品だ。


■『世界でもっとも美しい別れ』(2017年)


 タイトル通り、最初から決められた“別れ”という結末に向けて、ある一家がどのように心に折り合いをつけていくかを描く短編ドラマ(全4話)。劇中では、死期が迫る母親と問題を抱えた家族にスポットが当てられている。本作は、1996年に放送された自身の作品『世界で一番美しい別れ』のリメイク作だ。


 本作の素晴らしさは、ぞれぞれが八方塞がりの状況に追い込まれながらも、限られた時間の中で家族の絆や愛を確かめ合っていく姿を描いている点にある。家族1人1人に対して、心残りを整理するかのように母親が向き合っていく様子は、観ていて涙が止まらなくなった。また、大きかったはずの母の背中が、小さく見える瞬間に心が締め付けられる。自分のことよりも家族を気にかけて生きてきた母の姿が印象的で、観終えたあとも余韻から抜け出せない。


■『ディア・マイ・フレンズ』(2016年)


 心に抱えた傷と向き合いながら、懸命に生きるシニア世代の親友たちを描いた作品。“あなたの人生はあなたのもの”、“悔いのないよう生きなさい”、と語りかけ背中を押してくれるような一作だ。笑いあり涙ありハラハラありと見応えたっぷりで、2017年百想芸術大賞テレビ部門では、作品賞を受賞した。


 自分はこうあるべきだと考え生きてきた登場人物たちが、様々な出来事を機に自分自身を解放していく姿は、本作の見せ場の一つになっている。彼らの考え方や行動が変化していく度に、グッとくる。また、本作では、主要キャラクターの娘が物語の語り手になっているのだが、サブストーリーとして描かれる娘の恋愛物語も見逃せない。特に、あえてセリフなしで心情を描く“とあるシーン”が秀逸で、是非観ていただきたい。涙なしには観れないシーンもあるが、温かい気持ちで心が満たされるような一作だと思う。


■『大丈夫、愛だ』(2014年)


 心の風邪をひいた登場人物たちが、過去の自分や胸の奥に閉じ込めてきた誰かを許しながら生きていこうする愛の物語。劇中では、愛情表現にトラウマを抱えた医師と秘密を抱えた小説家に焦点を当てて心情を描いていく。小説家が、自分自身や医師に投げかける言葉によって、観る人の心も救われていくような作品だ。


 自分1人では受け止めきれない現実も、ただ誰かに聞いてもらうだけで心が軽くなっていくという過程が見どころの一つ。自分の足りない部分に目が行き、つい頑張りすぎてしまう人へ贈りたくなる。


 ノ・ヒギョンが手掛ける作品の素晴らしさを挙げるとキリがないが、生きていく中で“心を縛られてしまった”登場人物たちが、恋愛や友情、家族愛を通して、等身大の自分を受け入れ、自分を愛する事で今まで以上に周りを大切にしていくような描き方が特に印象的だ。毎週配信中の『私たちのブルース』が、どのようなメッセージと共に最終話を迎えるのか、見届けたい。


(韓国ドラマ好きのだらだら子)


このニュースに関するつぶやき

  • 私たちのブルース、今見てます。韓流ドラマはこの3年間、これで160作品目ぐらい?グタグタの今の朝ドラと対照的。嫌韓の人はこういう感動も知らないのだろう。
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