ウォールに当たる琢磨の渾身のアタックに観客も拍手「あそこでアクセルを戻すわけにはいかなかった」

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2022年05月22日 11:50  AUTOSPORT web

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写真ギリギリで予選2日目へと進んだ佐藤琢磨
ギリギリで予選2日目へと進んだ佐藤琢磨
 第106回インディアナポリス500マイルの予選1日目が、21日インディアナポリスモータースピードウェイで行われた。

 デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングの佐藤琢磨が、ここまで毎日トップという快進撃で、例年よりさらに注目されているが、今日は天候にも翻弄されてドラマチックな予選1日目となった。

 昨日のうちから今日の雨は予想されており、金曜日のうちにタイムスケジュールが変更され、予選が1時間前倒しされるほど。問題はいつ頃雨が落ちて来るかだった。5月のインディアナの天候は二転三転して、本当にレースファンをヤキモキさせる。

 午前中に設けられたプラクティスは気温の低い中で行われ、トップのエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)は234.410mphと今週の中で最も速いスピードをマークしている。

 このセッションに佐藤琢磨は出て来なかった。マシンが冷えた状態で予選に臨みたいことと、マシンの作業時間が非常にタイトになるなど、メリットを取りリスクを最小限に減らすための判断だった。

 予選は11時に始まり、18時までのスケジュール。まず金曜日のドロー順に全車が1度ずつアタックし、その後、2回目のアテンプトをしたい時は、自分の持っているタイムを捨てて並ぶレーン1、自分の持っているタイムをキープしたまま並ぶレーン2があり、そのいずれかに並んでトライすることになる。

 琢磨は昨日のドローで10番目のアテンプトが決まっており、予選に臨んだ。

 琢磨の前にいるドライバーたちは気温が低いのが幸いしてか、アベレージスピードが速い。最初のアタッカーでもあるアロウ・マクラーレンSPのパト・オワードは平均233.037mphをマークしている。

 琢磨はGOサインが出るとトラックに飛び出して行き、最初のラップから232マイル台の周回を重ねたが、思った以上にスピードが伸びていない。4周のアベレージは232.190mphで、6番手に止まった。このタイムが良いのか、悪いのかは、琢磨以降のライバルのアテンプトにかかってくるが、琢磨はあまりうれしそうな表情ではない。


「ドラッグが多過ぎました。なんか空気が重い感じがしてクルマが前に進んでいかなかった。コンディションの読み間違いでしたね。やはり朝走っていた方が良かったのかも……」と言う。

 日曜日の予選に進むには、トップ12台に入らねばならず、このままでは微妙な順位だ。最大のライバルと目されていたチップ・ガナッシのスコット・ディクソンは、琢磨の真後ろ7番手に着けた。

 そしてアテンプトが進み、琢磨がガナッシのマーカス・エリクソンに抜かれた頃に、インディカーのオフィシャルから、琢磨のアテンプトが抹消されたとアナウンスがされた。
 理由は琢磨がクールダウンラップで、後からアテンプトするマルコ・アンドレッティの走行を妨害したという理由だ。琢磨はクールダウンラップでターン3からピットレーンに入らず、ターン4から入ってきたために、ハイスピードでウォームアップをしていたマルコが追いつく形となってしまったのだ。

 これで琢磨はタイムがなくなり、自動的に33番手に。12番手以内どころか、このままでは最後尾となるために、否応なしに2度目のアテンプトをしなくてはならなくなった。しかも雨雲がスピードウェイに近づいており、早くアテンプトに出ないと最後尾は確定してしまう。


 1度目のアテンプトからデータを見直して、マシンのセッティングを変更した琢磨は、急いでレーン1に並びアテンプトに出た。

 タイムがなくなった以上、もう捨てるものもなく、琢磨は鬼神の走りで猛アタックを始める。

 1周目には232mpd台を突破して232.482mph、2周目231.890mph、3周目231.244mph、4周目231.221mphで走行し、アベレージは231.708mphとなって12番手に食い込んだ。

 ダウンフォースを削ったマシンが3周目のターン2で膨らみウォールに当たる瞬間、場内は大きな歓声が上がった。そして琢磨のこの走りにアメリカのファンは拍手でピットに迎え入れたのだった。

 これが皮肉にもチームメイトのデイビット・マルーカスを13番手にバンプアウトする形となってしまった。

 だがまだ予選時間は残っており、ライバル勢も再度アタックしてくる可能性もあった。琢磨はオフィシャルの指示でテック(車検場)でチェックを受けたのち、マシンをガレージに戻した。


 14時を過ぎた頃から小雨が落ちて、予選は一時中断。予選終了までまだ3時間以上残っており、まだ予断を許さなかった。

 雨が収まり1時間半後、予選が再開された。ここから琢磨のタイムを上回るクルマがあれば、琢磨は日曜日の予選には臨めない。ドレイヤーのセージ・カラム、そしてペンスキーのスコット・マクラフランとアテンプトしていくが230マイル台に留まる。

 そして再び雨が落ちてくると、アテンプト途中のジョゼフ・ニューガーデンはイエローフラッグで止めねばならず、琢磨の順位を脅かすマシンは現れなかった。琢磨は雨に救われたのだ。

「今日はいろんなドラマがありました。最初のアテンプトは、完全に読み間違いでしたけど、その後まさかタイムが取り消されちゃうとは……(苦笑)。その後はもう気を取り直していくしかありませんでした」

「2度目のアテンプトも、ダウンフォースの削り過ぎでしたけど、あそこでアクセルを戻すわけにはいきませんでした(笑)。その後はガレージでマシンを直して、準備はしていましたが雨のおかげで12番手に残れました」

「明日(予選2日目)は、最初のアテンプトになりますけど、プラクティスの時間で確認して、思いっきり走って6人以内に残りたいですね」

 崖っぷちギリギリでインディアナポリスの女神に助けてもらったような琢磨の1日だった。明日は琢磨が微笑み返す番だ。

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