「勤務中に転倒して寝たきりに」「58歳で脳内出血で死亡」高齢者の労災認定のポイントは?

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2022年06月14日 10:11  弁護士ドットコム

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「人生100年時代」そんなことが声高に叫ばれる今日。高齢者の働き手の就労支援や雇用対策が進む一方、2021年の統計では60歳以上の高齢者の労災死が360人に達した。しかし、脳梗塞や心臓病を患ったとしても、労災が認定されにくいケースもあるという。


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弁護士ドットコムに寄せられた相談をもとに考えてみたい。



ケース1:「会社側に損害賠償を請求できる?」




相談者「父(76)は清掃会社での勤務中に転倒し、頚椎を損傷。寝たきりの状態になりました。損害賠償を求めることができますか」




ケース2 「就業中に死亡、過労死の可能性、どうすれば」




相談者「母(58)が、介護施設の勤務中に脳内出血を起こし死亡しました。給与明細にない時間外労働や慢性的にストレスや睡眠不足を抱えていたようです。ただし、具体的な時間外労働の時間はわかりません。死後、会社からは口頭のみの経緯説明で書類の提示などはありませんでした」






それぞれのケースを例に、当事者になった時の対処について徳田隆裕弁護士に聞いた。



●2つのケース、労災認定のためのポイントは?

——2つの事例について、労災認定のためのポイント、可能性についてご指摘ください



ケース1については、仕事中に転倒して、頚椎を損傷したので、問題なく、労災と認定されると考えます。



会社に対する損害賠償請求については、詳しい労災事故の状況をお聞きしないことには、正確なアドバイスはできませんが、床面が滑りやすい状況であったり、滑りにくい履物を着用させていなかった場合、会社は、滑り防止対策を怠っていたとして、会社に対する損害賠償請求が認められる可能性があります。



ケース2については、過労死の労災認定基準の要件を満たせば、労災と認定されます。



すなわち、脳出血発症前の1ヶ月間に概ね月100時間を超える時間外労働、または、脳出血 発症前の2ヶ月間から6ヶ月間にわたって概ね月80時間を超える時間外労働をしていたな らば、労災と認定されます。ここでいう、時間外労働とは1週間あたり40時間を超える労 働時間をいいます。



●「高齢者の過労死の労災は認定されにくい」と言われる理由

——「高齢者の過労死の労災は認定されにくい」と言われることがあるようですが、これは なぜでしょうか。



この理由は、高齢者の働く時間が短いからです。 過労死の労災認定基準では、1週間あたり40時間を超える時間外労働が1ヶ月間に80時間〜100時間ないと、原則として、労災認定されません。



しかし、高齢者は、パートタイム等、1日の労働時間が8時間より短い時間で働くことが多 く、結果として、1週間あたりの労働時間が40時間を超えず、または、超えたとしても、 それほど長時間とはならず、高齢者の時間外労働が、過労死の労災認定基準にとどかないこ とが原因と考えられます。



——労災が問題になりそうな事案の当事者になったら、家族はどう動き、何をするべきでし ょうか。労働者自身でできることはありますか



まずは、証拠を確保することです。労働基準監督署に対して、労災申請するにしても、会社 に対して、損害賠償請求するにしても、証拠がなければ、労災認定も損害賠償請求も認めら れないからです。



労働時間を証明するためのタイムカードやパソコンのログデータ、労災事故現場の写真、診断書等の証拠を集めます。また、労働災害にあった労働者のスマホの中に、貴重な証拠が残 されていることはよくあります。



次に、弁護士にご相談ください。弁護士は、クライアントから必要な事実関係を聞き取り、 どのような証拠を確保できるかを検討し、労災認定や損害賠償請求の見込み等について、適切なアドバイスをしてくれます。弁護士のアドバイスをもとに、行動してみてください。




【取材協力弁護士】
徳田 隆裕(とくだ・たかひろ)弁護士
日本労働弁護団、北越労働弁護団、過労死弁護団全国連絡協議会、ブラック企業被害対策弁護団に所属し、労働者側の労働事件を重点的に取り扱っています。ブログ(https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog)、YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCWJQX9xTgXZegEOHZUidsdw)で労働問題について情報発信をしています。
事務所名:弁護士法人金沢合同法律事務所
事務所URL:https://www.kanazawagoudoulaw.com/


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