社内不倫で妊娠、幸せから一転「産むなら一人で育てて」中期中絶を余儀なくされた女性…慰謝料は認められる?

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2022年06月15日 10:31  弁護士ドットコム

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社内不倫で妊娠した女性が、妊娠中期に入ってから堕胎を持ちかけられ、心身ともに大きな傷が残ったとして、慰謝料を請求できないかと弁護士ドットコムに相談を寄せました。


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相談者によれば「彼は妻と離婚する」と言い、妊娠が判明してからは「妊娠を喜び、私の両親への挨拶も行ってくれましたし、ベビー用品店や妊婦健診、母子手帳の受け取りにも一緒に行ってくれました」。



しかし、妊娠5カ月に入る頃になって、相手の態度は一変します。



「妻と離婚の話はしていない。産むなら一人で育ててくれと言い出したのです。職場にも不倫がバレて、私はクビになってしまいました。無職で未婚のシングルマザーとして子供を育てる勇気はとてもなく、中期中絶をすることにしました。心身ともに深い傷を負いました」



このような場合、女性は相手の男性に対して慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。山本明生弁護士に伺いました。



●どんな時に、慰謝料は認められる?

ーー今回のケースで慰謝料が認められる可能性はありますか



慰謝料が認められるのは、相手方の不法行為によって、精神的苦痛を被った場合です。



中絶に至る経緯には色々あると思われますが、例えば、同意のない性行為による妊娠・中絶の場合、避妊していると嘘をつかれて性交渉に至っていた場合、中絶を強要された場合等には、それぞれ相手の不法行為によって精神的苦痛を被ったとして慰謝料が認められる可能性が高いでしょう。



言い換えれば、同意ある性交渉の結果妊娠し、双方同意の上中絶するような場合には、不法行為が成立せず、慰謝料は認められないのが原則です。



ーーこの女性のように、当初は妊娠・出産するつもりだったものの、相手側の事情で中絶を余儀なくされたような場合でも、慰謝料は認められないのでしょうか



同意ある性交渉であったとしても、中絶ともなれば女性側は大きな負担を被りますので、あらゆる場合に慰謝料が認められないというのは不公平です。



そこで、女性側の不利益を看過できない程度の男性側の不誠実があるような場合には、慰謝料請求が認められるというべきです。



裁判例でも、中絶に伴う女性の身体的及び精神的苦痛、経済的負担は男女が共同で行った性行為に由来するもので等しくこれらの不利益を分担すべき筋合いのものであるから、男性としてはこれら不利益を軽減し、解消するための行為をする義務があるとして、この義務違反が認められた男性に慰謝料支払いを命じたものがあります(東京高裁平成21年10月15日判決参照)。



本件においても、女性が受ける身体的及び精神的苦痛、経済的負担を軽減また解消するために男性がいかなる行為をしたのかが問題となり、男性に義務違反が認められれば、女性の慰謝料請求は認められる可能性があると思われます。




【取材協力弁護士】
山本 明生(やまもと・あきお)弁護士
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。
事務所名:山本明生法律事務所
事務所URL:https://akioyamamoto-law-office.jp/


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