『マイファミリー』の余韻から抜け出せない 改めて突きつけられた俳優・二宮和也の凄さ

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2022年06月21日 08:01  リアルサウンド

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リアルサウンド

『マイファミリー』(c)TBS

 「これほどまでに『まずは観てくれ』と思うドラマはないんです」。第1話放送直前、そんな飯田和孝プロデューサーの言葉から、筆者の『マイファミリー』(TBS系)関連取材はスタートした。


【写真】取り調べを受ける二宮和也


 連続ドラマのインタビューは、初回放送前や最終回に向けて行われるのが一般的。でも、この『マイファミリー』は毎週キャストのインタビューが行われるという異例の進行で、ドラマ撮影中のキャストにリアルタイムで話を聞くことができた。


 「視聴者はきっとこんなことが聞きたいんじゃないか」「あのシーンの裏側はどうだったのか」などとワクワクしながらインタビューさせてもらったが、どのキャストの返答にも共通していたのは、脚本の面白さへの賛辞。そして、座長・二宮和也への尊敬と信頼だった。


 『マイファミリー』は、鳴沢温人(二宮)の娘・友果(大島美優)が誘拐されるところから始まる。当初、我々視聴者は最終回に向けて友果が助かるのか、また真犯人は誰なのか、という2つをテーマに話が進んでいくものだと思ったが、その予想はあっけなく覆され、第3話で友果ちゃん誘拐事件は解決。そして、ここから連続誘拐がスタートするという、誰も想像しなかった物語がノンストップで進んでいく。


 吉乃一課長を演じた富澤たけしは、先の読めないストーリーに「なんでこんなことが考えられるんだって、(脚本家に)すごく嫉妬する」と話し、葛城を演じた玉木宏は「脚本の面白さがすごく出ているドラマ。複雑ではあるので、頭を使わなければ入ってこないし、演じる上でも理解していなければ外に出ていかない。そういう難しさはあるけれど、その難しさに臨める作品として、すごくやりがいがある」と語るなど、キャストがそれぞれに“オリジナル脚本”の醍醐味を存分に味わっていることが伝わってきた。


 加えて、玉木は「みんながじっくりと台本を読み込んで形を作っていく。それぞれの部署にちゃんと責任が課せられている作品のような気がする」と続け、温人の妻・未知留役の多部未華子も「今回ご一緒しているキャストの方には、自分の“我”を出す人がいない」「作品に向き合う気持ちが一緒」と明かすなど、キャスト全員が“物語を組み立てるパーツのひとつ”になることに徹し、丁寧に作品を作り上げている様子も見て取れた。


 そして、その中心にいたのは主演の二宮和也。二宮自身、「僕はみんなで一緒に物を作っていきたいタイプ」と語っていたが、どの共演者に話を聞いても、目に浮かぶのはフラットにそこに存在し、他愛ない話で共演者をリラックスさせ、重いシーンが多い現場のバランスを保つ二宮の姿だった。


 もちろん、人柄だけでなく確かな演技力でドラマを牽引していたことは言うまでもない。過去には日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞するなど芝居に定評のある二宮だが、インタビューで耳にした「天才を実感した」(高橋メアリージュン)、「2本の足で地面に立ってお芝居をするとはどういうことなのか、二宮さんの芝居を見て考えた」(迫田孝也)といった共演者からの生の声、そして、画面に映し出されたあまりに自然体の“鳴沢温人”に、「やっぱり俳優・二宮和也は凄いのだ」と改めて突きつけられたような気さえした。


 最終回直前に、飯田プロデューサーが「このドラマはスケールの大きい話ではなくて、すごく小さな話」と語っていたが、確かに『マイファミリー』にはCGを駆使した大迫力の映像や大掛かりなトリックなどは一切出てこない。それでも多くの視聴者を惹き付け続けた理由は、予測不能のストーリー展開に加え、二宮をはじめとする役者たちの演技のぶつかり合いにあったことは間違いない。


 たとえば、第8話の東堂の激白シーンにおける濱田岳の熱演、それを受ける多部や賀来賢人の表情一つひとつにも、視聴者に芝居であることを忘れさせる圧倒的なものがあった。そんなふうに、二宮と同世代の共演者は芝居を思い切り楽しみ、また演技経験の浅いキャストは先輩俳優から多くを学び、一方でベテラン勢は若いパワーに身を委ねる。そうやってバランスよく描かれた芝居の輪が、『マイファミリー』にしかない空気感を生み出しているように見えた。


 正直、取材スタート当初は「物語の展開を知ったら楽しみが半減する」とも思っていたのだが、それはまったくの杞憂だった。毎週日曜日には、想像を何倍も超える役者陣の表現力に心を揺さぶられ、物語にどっぷりと没入するのがルーティーンに。つまり、先を知っているかどうかなんて、この脚本と座長、役者が揃ったドラマには関係なかったのだ。


 脚本家・黒岩勉が描いた設計図をもとに、制作スタッフ、そしてキャストというそれぞれのパーツが精巧に組み合って完成した『マイファミリー』。怒涛の取材祭りは無事に完走したが、その余韻からしばらく抜け出せそうにない。


・参照
https://realsound.jp/movie/2022/04/post-1004635.html
https://realsound.jp/movie/2022/05/post-1034160.html
https://realsound.jp/movie/2022/06/post-1045191.html
https://realsound.jp/movie/2022/04/post-1005758.html
https://realsound.jp/movie/2022/04/post-1015306.html
https://realsound.jp/movie/2022/05/post-1024340.html


(nakamura omame)


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