小林麻央さん命日に考える 出産前後の乳がんは見つけにくい? 専門医に聞いた答えは

33

2022年06月22日 06:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真小林麻央さん
小林麻央さん
小林麻央さんが乳がんで亡くなって5年。日本では年間約9万人が乳がんと診断され、女性の9人に1人が罹患していることになります。そのなかには、妊娠中や産後の授乳期に乳がんを発症している人もいます。出産前後の乳がんについて、専門医を取材しました。


【写真特集】美しい在りし日の小林麻央さん(写真7枚)
*  *  *


 千葉県鴨川市にある亀田総合病院の乳腺科では、検診、診断から治療、その後のケアまで乳腺に関する全ての診療をおこなえる「フルサービスの乳腺センター」として、多科・多職種連携による乳がん診療を実践しています。日々、多くの患者と向き合う同院乳腺科の主任部長、福間英祐医師に、出産前後に乳がんと診断された場合の対応と心構えについて質問に答えてもらいました。



――乳がんは、妊娠・出産する年齢の女性にも多くみられますか?


 乳がんは40代以降の女性に多くみられますが、患者数が増え始めるのは30代からで、若い人もかからないとは限りません。つまり、妊娠・出産する世代の女性もかかる可能性がある病気なのです。ただ、数はそれほど多くはありません。年齢層では、国立がん研究センターのデータ(2018年)によると、乳がん患者さんのうち妊娠・出産世代といえる39歳以下の患者さんの割合は4%でした。


――妊娠中や産後の授乳期は、乳がんが見つかりにくいのですか?


 自治体などで推奨されている乳がん検診は40歳以上が対象であり、いわゆる妊娠・出産世代の女性の多くは検診の対象にはなりません。乳がんは、セルフチェックや検診により早期発見が可能ながんといえますが、一方で、妊娠中や産後の授乳期は見つかりにくい傾向があります。


 理由として、妊娠中や授乳期は、乳腺が発達して乳房が張っているため、触れてもしこりに気づきにくく、画像検査でも発見しにくくなることが挙げられます。また、授乳が始まると、母乳が詰まるなどして乳房の一部が硬くなることもあるため、しこりがあっても「母乳が詰まっているせいだろう」と思ってしまうこともあるようです。



 患者さん自身に「まさか自分が乳がんになるわけがない」という思いがあること、とくに産後は育児に忙しく余裕がないことも、気づきが遅れる要因になるかもしれません。


 また、医療者側もその年代の乳がん患者を診る頻度が少ないため、見落としがちな部分があったかもしれませんが、小林麻央さんの件以降、より疑ってかかるようになったと思います。


――妊娠中や産後の授乳期の人が早期発見するためにはどうすればいいですか?


 乳がんには、遺伝性乳がんというタイプがあり、このがんは若い時期に発症することが多い傾向があります。母親や姉妹が乳がんや卵巣がんに、父親が膵臓がんや前立腺がんにかかったことがある場合、あるいは血縁にがんにかかった人が多い場合には、妊娠前に検査を受けてみてもいいかもしれません。


 また、もともと乳腺の線維腺腫など良性の腫瘍がある人、乳房にしこりがある人などは、妊娠中にも経過観察していくことが大切です。


 最も大切なことは、「乳がんは、いつ、誰でもかかる可能性がある」と意識すること。乳房にしこりがある場合や、乳頭から血液が混じった分泌物が出る場合などは検査を受けましょう。また、授乳中でも、「いつも同じ場所にしこりがある」「しこりが大きくなる」という場合は早めに相談してください。


――妊娠・出産や授乳により、がんの進行が早まることはありますか?


 妊娠の継続や、出産、授乳によって乳がんの進行が早まることはありません。また、乳がんという病気そのものが、妊娠の継続や胎児に悪い影響をおよぼすことは、基本的にはないと考えられています。


――妊娠中や産後の授乳期に乳がんが見つかったら、まずどうすればいいですか?


 乳がんの治療は、がんの進行度や悪性度、がん細胞の性質などにより決定します。そのため、まずは治療方針を決めるために必要な検査をおこないます。


 ただし、乳がんの検査には、妊娠中にはできないものもあります。放射線を使用するマンモグラフィー検査は、腹部を鉛の板で保護した上で実施できますが、診断のために必要な場合に限ります。造影剤を使用しないCT検査は、妊娠中期以降は実施できますが、造影剤を使用する検査やMRI検査はできません。



●注意は必要だが、受けることができる検査:超音波検査、針生検、マンモグラフィー、造影剤を使用しないCT検査(中期以降)


●リスクと利益を考えた上で慎重におこなう検査:造影剤を使用しないCT検査(前期)、造影剤を使用しないMRI検査


●受けることは勧められない検査:造影剤を使用したCT・MRI検査


――妊娠中でも乳がんの治療はできますか? 妊娠していない時と治療法は異なりますか?


 妊娠中でも乳がんの治療はできます。ただし、治療法や妊娠の時期により、胎児に影響をおよぼすことがあります。とくに、胎児のさまざまな器官が形成される妊娠前期は、治療により流産や奇形が生じる可能性があるため、慎重に検討します。


 乳がんの診療ガイドラインによると、手術は妊娠前期でも可能ですが、手術時期をのばせるのであれば中期以降にすることが望ましいと思います。薬物療法は妊娠中期以降に一部の抗がん剤のみ使用できますが、放射線治療は妊娠中を通しておこなうことができません。このように、妊婦さんが不安を抱えて過ごすことがないよう赤ちゃんにリスクのある治療は避けますが、一方で、生命を守るために治療をおこなわなければならないケースもあります。


 例えば、妊娠初期に乳がんが見つかった場合、手術を中期まで待てる場合は待ちますが、すぐ治療が必要な場合は、リスクを十分に説明した上で手術するか、妊娠をあきらめるか、選択しなければならないこともあります。また、妊娠後期に診断された場合、赤ちゃんの発育をみて早めに帝王切開で出産し、治療を開始することも。このように、がんと妊娠の状態をみながら個々の患者さんに最善と思われる治療法を考えていきます。


――産後の授乳期にはどのような治療をしますか?


 産後は、治療に使用する薬剤が母乳を通して赤ちゃんに移行することがあるため、授乳中の薬物療法は避けるべきです。ただし、早期に治療が必要な場合、断乳すれば通常と変わらない治療をおこなうことができます。



 乳がんには、がん細胞の性質によりいくつかのタイプがありますが、一般的に、妊娠・授乳期に見つかる場合は悪性度の高いがんが多く、進行が早く予後が悪い傾向があります。早期に治療を開始するため授乳を断念することもあるでしょう。


――妊娠中や産後の授乳期に乳がんと診断された時の心構えを教えてください。


 乳がんの治療は進歩しており、妊娠中や授乳期でも、適切な治療をすればがんを治すことも十分に可能であるという自信を持って、私たちは治療に臨んでいます。医師を信じて、その時にできる治療を続けていただきたいと思います。この時期の乳がん治療は産婦人科との連携が必要であり、多科・多職種連携など幅広い治療のための態勢が整っている病院で治療を受けられると安心です。このような施設は、現在のところまだ多くはありませんが、今後増えていくことを期待しています。


 また、妊娠・出産期に限らず、早期発見できるほど治療の選択肢は広がるため、乳がんになる可能性を意識して過ごすことも大事だと思います。


(構成/出村真理子)


福間英祐(ふくま・えいすけ)医師


亀田総合病院 乳腺科主任部長


岩手医科大学卒業。日本乳癌学会認定医・専門医・指導医、検診マンモグラフィ読影認定医、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会顧問。2000年に同院に着任して以来、時代とともに変化する世界の乳腺診療に目を向けつつ、乳がん患者の心身の負担を少しでも減らせるよう、多様なサービスに対応できる乳腺診療の体制づくりを推進してきた。治療においては、乳がんの根治と整容性の両立を目指し、内視鏡による手術や切らずに治す凍結療法、オンコプラスティックサージャリー、がん術後リンパ浮腫専門医との連携などにも積極的に取り組む。


このニュースに関するつぶやき

  • 乳ガンを簡単に見つけるのは、彼氏や旦那がいる人は、毎日揉んでもらう、相手が居なければ、自分で揉むとか・・・
    • イイネ!2
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(21件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定