身に覚えのない「請求書」が届いて不安、後払いシステムの悪用か…法的リスクは? 弁護士が解説

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2022年06月30日 11:01  弁護士ドットコム

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インターネットサイトでの買い物が増える中、製品への支払いを後からできるサービスも増加している。クレジットカードがなくても使える利便性の高さ、商品を受け取ってから支払う安心感などから従来、ネットショッピングをしない人たちからも支持されているようだ。


【関連記事:【当事者の戸惑い】なぜ? 身に覚えのない「請求書」が連日届く…後払いシステム悪用か 】



しかし、このシステムが悪用され、注文をしていないのに請求書だけが届くというトラブルが発生した。悪用された女性は弁護士ドットコムニュースの取材に「個人情報を悪用されたことに驚くとともに後払いシステムの粗雑さに不信感が拭えない」と答えた。



今回、女性が巻き込まれたトラブルの法的問題について、岡田崇弁護士に聞いた。(ジャーナリスト・宮崎文子)







●刑事責任を問える可能性がある

ーーそもそも法的な問題はないのでしょうか



今回の件では関係先が多いので、それぞれ整理して説明します。



(1)請求書が送られてきた女性、(2)商品を購入した人物、(3)商品を販売した店、 (4)後払いシステムを提供している会社です。まず、今回はとても安直な手法と言えますが、(1)の女性は(2)の人物に対しては、支払いをしていないので法的問題はありません。



今回、法的問題が発生するとすれば、(2)の人物が(3)の店から商品を購入したことについて、他人のクレジットカードを利用して商品を購入した場合と同様、詐欺罪もしくは電子計算機使用詐欺に該当する恐れがあります。詐欺罪、電子計算機使用詐欺は共に10年以下の懲役と定められています。



詐欺罪と電子計算機使用詐欺のどちらになるかは、人を欺したのか、人を介さずにコンピューターシステムで自動的に処理されたのかによります。



●後払いシステムの審査に問題は?

ーー後払いシステムの審査が不透明という声もあります。



後払いシステムにおいては、合計数万円程度の少額の利用に限られていることから、厳密な本人確認をおこなっているわけではありませんし、カーローンやクレジットカードなどで利用される信用情報機関にも加盟していないことから、信用情報機関の信用情報(いわゆるブラックリスト)を利用していません。



各社の利用枠を超えていないか、入力された利用者情報(電話番号や住所)に不備がないか、商品内容や利用形態と共に、過去に自社や他の後払システムや通信販売の後払いについて遅滞や未入金があったかという点を中心に審査を行っているようです。



現行法では利用者が2カ月を超えないで支払う個別の商品についての立替払い型の後払いシステム(大部分の後払いシステムはこれに該当します)に関する規制はありません。カーローンやクレジットカードが割賦販売法の規制を受けているのとは異なります。



前記のとおり、後払いシステムを提供している会社は信用情報機関に加盟していないことから、後払い決済を支払わなくても、ブラックリストに登録されることはありませんが、後払いシステムや通販の後払いを利用できなくなる可能性はあります。



●「おかしいな」と思ったら…

事態に気が付いたら速やかに、(4)の後払いシステム提供事業者に連絡して、身に覚えがないことを告げて、当該会社の指示に従うべきでしょう。取材された女性は適切に対応されたのではないかと思います。



通販会社自体が後払いシステムを提供している場合もあり、その場合でもギフト配送を利用すれば、同様の事態は起こりうることから、後払いシステムが杜撰というわけではないように思えます。



もっとも、このような被害が頻発するようであれば、後払いシステムを提供している会社は、販売店やオンラインショッピングモールなどと協力して、ギフト配送のときには後払いシステムを利用できないようにするなどの対策を取るのではないでしょうか。



また、本件では、メルカリでの取引後に特定の人物が当該情報を利用して、後払いシステムを悪用し出したというものですから、警察への相談や告発も考えてもよいのではないでしょうか。件数が多くなれば警察も対応をするのではないかと思われます。




【取材協力弁護士】
岡田 崇(おかだ・たかし)弁護士
大阪弁護士会・消費者保護委員会元委員長

事務所名:岡田崇法律事務所
事務所URL:http://www.okadalaw.jp


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