連載「lit!」第8回：クマリデパート、OCHA NORMA、fishbowl、NELN……これからの季節を熱く盛り上げる女性アイドルの新曲

　早いもので7月も中旬に差し掛かろうとしています。今年は梅雨明けが早かったこともあり、少しずつ暑さにも慣れてきた頃でしょうか。いよいよ待ちに待った夏フェスシーズンがやってきました！　私は毎年参加している『フジロック』が待ち遠しくてなりません。今年の夏は開放的なロケーションで最高の音楽を楽しみたいですね。

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　さて、今回の「lit!」では最新のアイドルソングを特集します。夏に先駆けて発表された新曲たちは、これからの季節を熱く盛り上げてくれそうなものばかり。今回はその中でも、クオリティの高さからアイドルファンのみならず幅広いリスナーへのリーチが期待できる楽曲を紹介します。

　まずは5月に豊洲PITでのワンマンライブを成功させたクマリデパートから。最新曲「幸せハッシン！フロムキッチン」では、なんと料理愛好家（実は研究家ではない！）の平野レミとのコラボレーションが実現しています。テーマはもちろん「料理」で、作詞のほかジャケットやMVにも参加した異色の作品です。

　平野レミさんと言えばハイテンションなトークでお馴染みですが、シャンソン歌手としても知られ、音楽には非常に縁の深い方です。長男がTRICERATOPSのフロントマン・和田唱であることでも有名ですね。作詞家としては未知数でしたが、冒頭から〈にんにく叩き潰す／トマトも握り潰せばいいの〉〈おいしければ大丈夫／飲み込んだら同じ おいし〉と専業作詞家からはまず出てこないであろうワードセンスに驚かされます。

　しかし聴き進めていくと、どうでしょう。これはあくまでも料理を通して笑顔が広がる素晴らしさを歌った楽曲なのだと気づきます。押韻の効いたタイトルや度々登場するダジャレに加え、〈レミパンも買ってね〉と自身が監修したキッチン用品の宣伝まで盛り込む斬新さもご愛嬌。優しく温かい世界観に、思わず笑顔になる1曲です。

　続いてはハロー！プロジェクトの新鋭・OCHA NORMAのメジャーデビューシングル『恋のクラウチングスタート/お祭りデビューだぜ！』。このうち「恋のクラウチングスタート」のMVは、CDリリース前ながらすでに56万回を超える再生回数を記録しています（7月9日現在）。ハロプロメンバー出演のドラマ『真夜中にハロー！』（テレビ東京系）のオープニングテーマとして1月からオンエアされていたため、なんと半年越し、まさに満を持してのリリースです。

　アイドルとしてスタートラインに立った彼女達を祝福するかのように、冒頭から華やかなストリングスとホーンが鳴り響きます。基本的にはハロプロらしいファンキーな楽曲ですが、後半に差しかかるとStyle Council 「Shout to the Top」風の間奏から突然の3拍子に発展。そこからダメ押しとも言うべき転調で迎えるクライマックスの高揚感がたまりません。ハロプロのメジャーデビュー曲はその後もグループにとって長く愛される代表曲に育つことが多いのですが、今作も同様のポテンシャルを秘めた楽曲と言えるでしょう。文字通りの「お祭りデビュー」を飾るOCHA NORMAに注目です。

　ここからは、MVのコンセプトが面白かった2曲を紹介します。まずは静岡県を拠点に活動し、プロデューサーのヤマモトショウによる楽曲が高く評価されているfishbowl。デビュー以来、ほとんどの楽曲タイトルを漢字2文字で統一している彼女達の新曲は「熱波」。こんなところにも昨今のサウナブームが波及しているのかと驚きました。サウナをテーマにした楽曲というと、「ととのう」イメージからついアンビエントやチルな作風を想像してしまいます。しかしこの曲はひと味違い、自分を変えてしまうほどの何かを“熱波”と表現したダンスナンバーです。タイトルにひっかけたコーラスも心地良く、耳に残る仕上がりでした。

　MVには先日『マツコの知らない世界』（TBS系）でも紹介された静岡県のサウナしきじと、路線バスを改造した移動型サウナバス・サバスが登場します。高温の車内でメンバー4人が汗をかくシーンはもちろん、ダンスフロアと化したサバス、そして水着で広大な海に飛び出し水風呂を楽しむクライマックスまで、非常に見応えのある作品でした。水着と海といえば夏のアイドルソングの定番ですが、この使い方はおそらく史上初でしょう。サウナしきじの駐車場で撮影されたダンスビデオも、通行人が普通に映り込むリアルさに笑ってしまいました。こちらも必見です。

　続いては、新メンバー・QLMIが加入したNELN。新体制となった彼女達は、6月から新曲MVを5カ月連続で公開すると発表しています。その第1弾が「STMN」。これで「すてみな」と読みます。シンセポップなどを思わせる浮遊感溢れるサウンドに、やや気だるげな世界観がクセになる1曲です。注目すべきは歌詞と連動したMV。テレビのチャンネルをザッピングするように、次々と移り変わる映像に引き込まれていきます。首相官邸からの中継、子供番組、料理番組、栄養ドリンクのCM、野球中継など、そのバリエーションの多彩さは思わず何度も見て確認したくなることでしょう。揃いのパジャマで踊るサビのインパクトも抜群で、TikTokにも向いているのでは？　と感じました。

　そしてこの曲は、なんとブックレットとしてもリリースされています。MVのアザーカットなど様々な写真を掲載したブックレットの付録として、音源や合成前のグリーンバックバージョンのMVをゲットできるというユニークな試みです。先日公開された新曲MV第2弾「税金なんてわかんない」も遊び心に満ちた傑作で、来月以降の作品にも期待が高まります。（椎名和樹）