二宮和也 冒険心は「ないです!」に込めた仕事魂 「素直に泣けた」本当の理由とは

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2022年08月20日 11:30  AERA dot.

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写真※写真はイメージ(gettyimages)
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 8月11日公開の映画「TANG タング」で、記憶をなくしたロボットのタングと冒険に出る人生迷子のダメ男を演じる二宮和也さん。その場にはいない“ロボット”との共演は、面白い体験だったという。AERA 2022年8月15−22日合併号から。


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――映画「TANG タング」で二宮が演じるのは、ある出来事によって自信を喪失し、ゲーム三昧(ざんまい)の自堕落(じだらく)な日々を送るダメ男、健だ。そんな健が、突然庭に現れた迷子の旧式ロボット、タングと冒険に出て、思いがけない「人生の宝物」を見つける。


 ヨタヨタと健の後ろを歩く愛らしいタングを始め、物語の舞台となる近未来を、日本を代表するVFXチーム「白組」が邦画史上最高峰の技術で作り上げる。そんな世界の中で繰り広げられるタングとの“共演”は、「面白い体験だった」と語る。


■公開が2年先になる


二宮和也(以下、二宮):僕自身、ここまでのファンタジー作品に触れたことがなかったですし、実際にはいないタングを想像しながら演じるのは、面白い経験でした。あとから僕の動きに合わせてCGをつけてくれるので、言ってしまえば、僕は一人芝居でいいわけです。そういう意味では、どんな反応が返ってくるかわからない人間相手よりも、むしろやりやすかったですね。


 そうは言っても、僕が勝手に動いていいわけではありません。タングを動かすチームと「タングはAからBまでこれくらいの速さで動く想定です」とか、常に細かく設定を共有しながら撮影を進めました。「想定している動きと違うことをした場合は、公開が2年先になります」と、暗に「勝手な動きはやめろ」と釘を刺されたりもしながら(笑)。


 また、タングは足が短いので、3歩分が僕の1歩くらいなんです。最初、健はタングに思い入れがないので、「ついてこないでくれ」というスピード感で歩きたい。けど、それだとホントに離れてしまうから、「じゃあ、どう歩く?」「でも、ロボットだから探知してついてこられるんじゃない?」みたいな話し合いも結構しました。今回はファンタジーの世界なので、それほどリアリティーは考えなかったけれど、嘘はつきたくない。監督の演出に応えられるよう、必死でついていった印象です。




――2年前にAERAに登場したとき、主演映画「浅田家!」について「監督が見たい映像をどれだけ精度を上げて具現化できるかがテーマだった」と明かしていた。監督から求められることを具現化する作業と、演者としての表現欲求、どうバランスを取っているのか。


二宮:時と場合によります。この間やらせてもらった連続ドラマ「マイファミリー」は、毎日現場で監督に「こうしたい」というプランをプレゼンして、「いいね」とか「じゃあ、もうちょっとこうして」というレスポンスをもらって、時にセリフを変えたりもしつつ、やりたいようにやらせてもらいました。基本、僕は自分からプレゼンしていく方が動きやすいタイプ。ただ、「TANG タング」は僕が何かを考えるよりも、作品を通してどんな映像を見てもらうか、そこから何を感じとってもらうかが大切だと思った。なので、監督がつけてくださった演出に、なるべく早くレスポンスしていくことがテーマになりました。


■健の動きは監督の動き


二宮:「言っている意味がわからない」となるのが一番怖かったので、とにかく監督が話していることを聞いて、やっていることを見て。段取りで、監督が動いて見せてくれることもありました。僕、動きを真似るときは正確にやってしまうんです。だから、健の動きは、ほぼ監督の動きです(笑)。


――そんな二宮が、「唯一、自分発信でこだわったシーンがある」という。


二宮:終盤のあるシーンで、健がタングに「疲れちゃったよね」と声をかけるんです。それは台本にはないセリフで、現場に立った僕から出てきたものだった。そこだけはどうしても入れたかった。見てくださる方に「あ、健はもう我々が思っていたより、タングを人間扱いしていたんだ」「実は誰よりも一番近くで寄り添っていたんだ」と、驚きをもって感じてもらえるなと思ったんですね。この映画は、ダメだった健がこんなに成長しました、を見せる物語でもある。タングとの何げない関係性でそれが表現できれば、成功だろうという思いもありました。


――心を揺さぶる場面も多いが、二宮が終盤に見せるあるシーンは、エモーショナルな表現が凄まじい。現場でもスタッフを唸らせたシーンだという。撮影時のエピソードを尋ねると、「圏外だったんです」という謎の答えが返ってきた。


二宮:僕、そのときYouTube(「ジャにのちゃんねる」)の編集をしていたんです。でも現場は圏外でWi−Fiもなくて、データが全然落とせなくて。当時はちょうど3回目の動画をアップしたくらいで、僕がやっていることが世間に「バレた、バレた!」というタイミングであり、メンバーになるみんなを捕まえに行くロケの編集をしていた時期でもあった。撮影と並行しながら、裏側ではホテルに戻ってちょっとずつデータを落とす、という地獄みたいな作業をずっとやっていたんです。そんな自分の状況がつらすぎて、あのシーンは素直に泣けた気がします。



■少年のような遊び心


――まさかの回答に噴き出すと、イタズラっぽい笑顔を見せた。ユーモアと少年のような遊び心は、昨年開設し、自身で企画、テロップ入れ、経理までをこなすYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」でも遺憾なく発揮されている。センスのみならず、分析力も併せ持つ。


二宮:僕が仲いい人たちを集めて動画を撮る、というのがわかった時点で、それなりの反応が返ってくるだろうなというのは予想はしていました。だから最初は、なるべくバズらないように引っ張って引っ張って。それがバコッと跳ね上がる瞬間も全部収録しておいて、見てくださる方にも疑似体験してもらうのが一つの面白さだと思ったんです。さすがにここまで行くとは思ってなかったけど(現在、登録者数337万人)。ただ、たくさんの方に見ていただいているからといって、変にコンプライアンスを意識しすぎたり、テレビに寄った企画にすると、僕たちらしさが失われてしまう。僕、チャンネルの分析ページをよく見ているんですが、「あのジャニーズがYouTubeだと……」みたいなコントラストがいい、という反応がちゃんと出ているんですよ。やっぱりそうなんだな、と。それだけが正解ではないですが、一つの道しるべとして、コメント欄も含めてチェックしながらやっている感じですね。


■冒険心は「ないです」


――「冒険」がキーワードとなる作品だが、自身は「冒険」をどう捉えているのだろう。冒険心の有無を尋ねると、「ないです!」と即答した。


二宮:しっかり情報を集めて計算していくタイプなので、計算外の何が得られるかわからないところには行かないというだけの話です。だって、僕が変な冒険心を起こしてケガでもしたら、どれだけの人に迷惑がかかるか。大騒動になることを考えただけで、怖くなって冒険なんてできないです。第一、僕、もう39歳のおじさんですし(笑)。


 もちろん、計算してもその通りにいかないことはあります。僕らはどうしても数字がついてまわる仕事をしている。でも、作品のよし悪しと数字は必ずしも連動しないし、あまり気にしないですね。仮に負けたとしても、次に勝つにはこうしよう、という思考に切り替える。というか、勝手に切り替わっちゃうのが現状かもしれません。


――幸せを感じるのは、「仕事があること」それ自体だという。


二宮:年齢が上がってきたので、簡単に言えば「ブランディング」にも気を配ろうと思うようになりました。ありがたいことに、数年前から「自分主体でチョイスしてもいいよ」と言われているので、大変ではありますが、楽しくやらせてもらっています。この作品も、何年も前からお話をいただいて、本当はもっと前に撮るはずだった。でも、ちょうどその時期が、嵐の活動休止前と重なってしまって。2020年までは嵐に専念したいという僕の思いをお伝えしたら、「待っています」と言っていただけたんですね。それは今年のお正月特番ドラマ「潜水艦カッペリーニ号の冒険」も、連ドラ「マイファミリー」も、12月に公開される映画「ラーゲリより愛を込めて」も同じで。僕としては、こだわった作品が、今年こうやってキレイにハマって皆さんにお届けできることは奇跡のようで、すごい一年になっちゃったなぁと、素直に思います。仕事があるのは、当たり前のことではない。何度も言っているんですけど、本当にありがたいなあと思うんです。


(ライター・大道絵里子)

※AERA 2022年8月15−22日合併号


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