「スキャンダル」「リスペクト不足」…プレミアリーグで相次ぐVAR問題

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2022年09月07日 16:00  サッカーキング

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サッカーキング

VAR問題が相次いでいるプレミアリーグ [写真]=Getty Images
先週末に行われたプレミアリーグ第6節は、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の問題が相次いだ。

 3日(土)の試合では、判定に激怒する監督が続出した。チェルシー戦で終了間際の同点ゴールをVARによって取り消されたウェストハムのデイヴィッド・モイーズ監督は「スキャンダルだ」と痛烈に批判。終了間際にウェストハムのマクスウェル・コルネが同点ゴールを決めるも、その前の接触シーンでGKに対するファウルがなかったかVAR検証に。結局、オンフィールドレビューの結果、アンディ・マドリー主審はファウルを認めてゴールを取り消した。



 これにはモイーズ監督も納得できず「キーパーはボールを5メートルほど前にこぼしており、あの状態からは何もできないはず。VARがモニター確認を要請すること自体に驚いた。馬鹿げているほど酷い判定だ。VARもそうだし、主審もそうだ。自分の判定を貫くべきだ。ゴールを取り消す理由など、どこにもなかったはずだ」

 英国公共放送『BBC』では、元ブライトンのFWグレン・マレー氏が「こういう判定のせいで監督は白髪が増えるんだ。酷い判定だ。それ以上の言葉はない」とモイーズ監督に同情した。

 ニューカッスル0−0クリスタル・パレスでも判定が物議を呼んだ。51分、クロスボールに選手たちが飛び込み、最終的にDFタイリック・ミッチェルに当たったボールがゴールに吸い込まれてオウンゴールとなった。当初、マイケル・サリスバリー主審はゴールを認めたが、VARを担当した先輩審判のリー・メイソン氏の助言でモニターを確認することに。ミッチェルに押されたニューカッスルのMFジョー・ウィロックがパレスのGKと衝突しており、キーパーチャージという判定になったのだ。



 これには5万人を超えるホームサポーターもブーイング。試合後にニューカッスルのエディー・ハウ監督も憤りをあらわにした。「そもそもウィロックに対するプッシングのファウルだ。ウィロックは、押された勢いでGKと衝突したんだ。押されなければ衝突していない。ゴールじゃないのならPKだ」

 この判定についてはニューカッスルOBの元イングランド代表FWアラン・シアラー氏も「酷すぎる。馬鹿げている。恥だ」と『BBC』の番組内で憤慨。「サリスバリー主審の最初の判定は正しかった。それなのに、どういうわけか(VARの)リー・メイソンが誤審を指摘したんだ。VARの問題ではない。VARを運用する人間の問題なんだ。」

 ブレントフォード対リーズでも判定が議論を呼んだ。PKで先制したブレントフォードだが、そのPKの判定もVARの介入によるもの。一方で、62分にリーズのクリセンシオ・サマーフィルがドリブルでボックス内に侵入して倒された場面は、VARが介入せずにPKにもならなかった。これに猛抗議したリーズのジェシー・マーシュ監督はレッドカードを出されるはめに。



 試合後にマーシュ監督は「どのように判定が下されているか理解するために、リーグや審判と話し合いの場を持てないか考えている」と話した後で、審判の「リスペクト不足」を指摘した。「私はリスペクトを持って第4審判に話していた。だがリスペクトに対するリスペクトがない。私はそう感じている。VARの確認不足は、リスペクトを欠いているのと同じことだ」

 4日(日)のマンチェスター・U対アーセナルの大一番でも、VARが勝敗を分けた。首位アーセナルが前半12分に先制ゴールを決めたかに思えたが、VARは事前にファウルがあったことを指摘。オンフィールドレビューの結果、アーセナルのMFマルティン・ウーデゴーアがMFクリスティアン・エリクセンをファウルしたとしてポール・ティアニー主審はゴールを取り消した。結局、試合は3−1でユナイテッドが勝利し、アーセナルの開幕からの連勝は5でストップした。



 当然、アーセナルのミケル・アルテタ監督は納得しなかった。アーセナルは第5節のアストン・ヴィラ戦で直接コーナーキックを決められたが、その際にキーパーに対するファウルがあったように見えたが、ゴールは認められていた。「一貫性を欠くのが問題だ」とアルテタ監督。「ソフト(軽いファウル)とは何か? 先週はGKがファウルを受けたのに“ソフト”なのでファウルじゃないとされた。だが、今日はファウルを取られたんだ。本当に受け入れがたい」

 一連の“疑惑の判定”を受け、プレミアリーグは審判団を取り仕切る『PGMOL』にVAR判定の調査を要求した。すると『PGMOL』も「チェルシー対ウェストハム、ニューカッスル対クリスタル・パレスでのゴール取り消しについて、我々はプレミアリーグの審査要求に協力し、その結果を審判パフォーマンスの評価と今後の育成につなげる」と発表したのだ。英紙『ガーディアン』によると、これは「誤審を認めたようなもの」だという。

 この余波を受けて、今週末のプレミアリーグ第7節ではリー・メイソン氏がVARから外れることになった。50歳のメイソン氏は、元々はプレミアリーグで主審を務めていたが、2020−21シーズンいっぱいで主審を引退。そして翌21−22シーズンからプレミアリーグ史上初の専任VARとなっていた。しかしメイソン氏は、前述のニューカッスル戦で物議を醸しだしただけでなく、翌日のユナイテッド対アーセナルでもVARを担当して、アーセナル側から反感を買っていたのだ。



 以前からテクノロジーの導入を反対する声はあり、ゴールラインテクノロジーの導入が認められた際に「パンドラの箱を開くことになる」と指摘された。開けた際にあらゆる災いが飛び出し、慌てて閉じたせいで「希望」が箱の底に残ったと言い伝えられているのは「パンドラの箱」だ。蓋を閉じずに、審判技術の成長とさらなるテクノロジー導入を進めれば「希望」も箱から出てくるのだろうか?

 そんな希望となりうるのが、イングランド審判界の“エース”とされるマイケル・オリヴァー主審かもしれない。同主審は先週末のノッティンガム・フォレスト対ボーンマスの試合で、VAR介入後も自身の判定を貫いたのだ。シュートが腕に当たったとしてPKの判定を下したオリヴァー主審は、VAR介入によりモニターでプレーを確認したが、それでもPKの判定を変えなかった。これには解説者のシアラー氏も「良くやった。ようやく審判が『自分の判定を貫く』という度胸を見せてくれた」と主審を称えた。



 久しぶりに混戦模様となりつつある今季のプレミアリーグ。1つのゴール、1つのプレー、1つの判定がクラブの命運を左右しかねないので、今後も主審の判定とVARに注目したい。

(記事/Footmedia)

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