【後編】「安倍元首相と教団の関係を検証して被害者を救済を」 旧統一教会を脱会した“信仰2世”の願い

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2022年09月27日 07:00  AERA dot.

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21年9月、旧統一教会の友好団体が主催した韓国でのイベントにビデオメッセージを寄せていた安倍元首相
「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の元信者で、親が信者である「信仰2世」の冠木結心(かぶらぎけいこ)さん。合同結婚式で二度結婚し、いずれも相手の男性からひどい仕打ちを受けた。そして、韓国で10年もの間、極貧生活を送ることになる。【前編】ではその経緯を詳述したが、冠木さんの苦労は、洗脳が解けて日本に帰国してからも続いた。【後編】では、日本における「2世」としての生きづらさ、安倍晋三元首相と教団との関係性への思いなどを聞いた。


【写真】旧統一教会の「2世」としての苦悩を告白した冠木結心さん
*  *  *
「旧統一教会を脱会したときに、私はこれからどうやって生きていけばいいのかわかりませんでした。自分を否定したり、犠牲にしたりすることで成り立っていた世界だったので、自己否定する癖が染みついてしまっていたんです。そんな精神状態のまま、ずっと教会の命令に従って生きてきました。狭い世界の中でしか生きるすべがなかった宗教(信仰)2世の人たちは、外の世界に放り出されたらすんなりとは生きていけない。社会に適応できずに、精神を病んでしまう人も少なくありません」


 旧統一教会の「信仰2世」である冠木結心(かぶらぎけいこ)さんはこう語る。


 母親が信仰していた旧統一教会に自身も高校生で入信した冠木さんは、合同結婚式による二度の結婚と離婚を経験。娘2人を抱えながら、10年もの間、韓国での極貧生活を耐え忍んだ(詳細は【前編】を参照)。


 2013年、教祖である文鮮明が死去したことで洗脳が解けて、脱会。娘たちと日本に帰国することになった。その時の気持ちを冠木さんはこう振り返る。


「私の入信の動機は母への親孝行で、教義への信仰ではなかったので、洗脳が溶けやすかったのだと思います。実は頭の片隅には教会に対して不満がありましたが、母を悲しませたくなかったので受け入れていただけでした」(以下同)


 帰国後、まずは親族のアパートに身を寄せた。だが、そこにはまだ信者である母親が住んでいた。献金として教団に生活費を搾取されていた母親は、姉の稼ぎを頼りにしなければ生活がままならない状態になっていたのだ。




 旧統一教会では、合同結婚式を挙げて授かった子どもを「神の子」と呼ぶ。母親はすでに洗脳が解けた冠木さんには関心を示さず、「神の子」である娘たちに信仰を強要しようとした。娘たちが自分と同じ目にあうことは絶対に避けたい。私は母と絶縁しなければならない――冠木さんはこう心に決めた。


「親が信者である2世は、どんなに親と離れたいと思っても、経済的な自立ができないと縁を断ち切るのは難しい。だから、親がいないと生きていけない“子どもの2世”は、どんなに嫌でも信仰を受け入れざるを得ない。これは、子どもの人権に関わる問題です。私は身をもってそれを経験したし、娘たちのためにも、ここで私が“負の連鎖”を断ち切らなければいけないと思ったんです」


 冠木さんは、親族の家から引っ越す際に警察に相談し、親族による「児童虐待及びこれに準ずる行為」を理由に、住民票の閲覧制限をかけた。その後、安定的な仕事がなかった冠木さんは役所に生活保護を申し出たが、閲覧制限をかけていたことから、母親に居場所を知られずに済んだ。


「10年も韓国で暮らしていた私には、日本での生活基盤がなく、40歳手前のシングルマザーが仕事を見つけるのは困難でした。でも、娘2人はどうにかして育てなければならない。そこで、しばらくは生活保護を受けて暮らしを立て直すことにしたんです。そのおかげで娘たちを学校に通わせることができたし、私自身も心身が回復して、社会復帰することができました。生活保護には本当に助けてもらいました。心から感謝しています。ただ、もしこれが若い2世だったら、役所から『あなたは若いから働ける』と言われて門前払いされたかもしれない。今、宗教2世は社会問題となっていますが、彼らを救済する受け皿がなければ、自立していくことは難しいのではないでしょうか」


 社会復帰した冠木さんはすでに生活保護に頼らずに生活しており、娘たちは成人しているという。


 ただ、やはり「2世」として社会で生きていくのは困難がつきまとった。他人との距離感に戸惑いを感じることがあり、冠木さんは「教会に戻ろうかな」と何度も心が揺れたという。




「何か悪いことが起こると『教会をやめたからなのかな』と思ってしまうんです。末端の信者はまじめで優しい人が多かったから、『世間の人より、教会の人たちのほうが温かく迎え入れてくれるのでは』と、何度も戻ることを考えてしまいました」


 それでも、教団に戻ることなく踏みとどまった冠木さん。旧統一教会は今、宗教法人の「剥奪」まで叫ばれているが、頭をよぎるのは末端の信者のことだという。いま宗教法人が剥奪されたら、末端の信者は行き場を失う。その時のために、信者たちを救済する制度を国に検討してほしいと願っている。


「信者は生きる拠り所を奪われてしまうわけですから、極端な行動をする人が出てしまう可能性もあります。『国から迫害を受けている』と教会から誘導され、かつてのオウム真理教信者の、相手に怒りを向けるような凶行に出たり、自分を傷つけてしまったりする人も出るかもしれません。私はそのことをとても心配しています。あのオウムの事件があった時点で、統一教会にもメスを入れるべきだったのです。そのツケが回ってきて、今になって2世問題が深刻化しているのだと思います」


 安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者は、母親が旧統一教会に多額の献金をしたことで生活が苦しくなったと供述している。そんな環境の中、安倍元首相が旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを送っている動画を目にして、「つながりがあると思った」ことが動機の一端とされる。同じ2世という立場からも、冠木さんは「安倍元首相とつながりがあったのかは検証すべきだ」と話す。


「亡くなってしまった安倍元首相に直接確かめることはできませんが、ビデオメッセージを出していたのだから、広告塔の役割を果たしていたと思われても仕方がありません。国葬の前に、実際はどうだったのかを政府に検証してほしいと思っています。ただ、すでに友好団体が安倍元首相の大規模な追悼式をやっているわけですから、教団側は関係性を認めたも同然だとは思います」


 27日に行われる国葬については、「国葬に反対している国民の意思だけではなく、旧統一教会に人生を狂わされた被害者たちの気持ちも置き去りにされているように感じます」と語った。


 2世も含めた被害者の救済に、政府は目を向ける必要がある。(AERA dot.編集部・岩下明日香)


このニュースに関するつぶやき

  • 気持ち悪いので、どこの在日広報誌かと思えば、やはりアエラか。発行元の朝日も統一教会とズブズブの関係だ。朝日は統一教会の幹部と宴会を開いている。
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