専有走行でクラッシュし、アライメントが狂ったままQ1突破したAstemo松下信治「絶対にやらなきゃ」【第7戦GT500予選】

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2022年10月01日 22:31  AUTOSPORT web

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2022スーパーGT第7戦オートポリス、予選前の専有走行でクラッシュしてしまったAstemo NSX-GT松下信治
オートポリスで行われた2022スーパーGT第7戦。午前の公式練習中にクラッシュに見舞われた17号車Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)は、チームの懸命な修復作業により、ギリギリで予選出走が叶い4番手タイムを記録した。

 公式練習では、走り出しから好タイムを記録し4番手につけていた17号車。最後に設けられている10分間のGT500専有走行では、松下信治がマシンに乗り込んだのだが、新品タイヤでのタイムアタックシミュレーション中に100Rで挙動を乱しスピン。ガードレールにフロントからぶつかってしまった。

「単純にいうと“オーバードライブ”でした」と松下。クラッシュ当時の状況をこのように振り返った。

「ちょっと速いスピードでコーナーに入っていき『いける』と思っていったんですけど、実際にはいけませんでした。それでも自分としては『コントロールできるかな?』と思い、ちょっと踏ん張ったのですけど……全然踏ん張れなくて回ってしまいました」

「クルマのフィーリングも悪くなかったので『流れを崩してしまったな』という感じだったのですが……メカニックの皆さんが頑張ってくれました」

 このクラッシュの瞬間をピットで見ていた金石勝智監督も、様々なことが頭をよぎったという。

「(クラッシュ映像を見た瞬間は)絶句でした。あのときは無線がうまく通じていなく、まずはドライバーが心配でした。ですが映像を見ていると(コックピット内で)動いているのが確認できたので『大丈夫だ!』とはなったのですけど……その次に『予選までにクルマは直るのか?』ということで頭がいっぱいになりました」

 外観以上に内部のパーツはダメージがひどく、エンジンから前のフロント部、ラジエーターなどの冷却系は交換が必要な状況だった。幸い、エンジン、サスペンションには破損がみられず、そこから予選Q1までの限られた時間で修復作業が始まった。

 ボンネットに関しては、無塗装の新しいものが用意され、そこにスポンサーロゴを貼り付けた状態で準備は完了したのだが、それ以外にも修復をしなければいけない箇所が多く、GT300のQ1が始まったときも17号車のピット内ではメカニックが慌ただしく作業を進めていたのだが、このなかには田坂泰啓エンジニアの姿もあった。

「スペアのパーツがあれば、そのまま交換すれば良いのですけど、足りない部品などもあったので、その部分は(クラッシュで)グチャグチャになったパーツのなかからうまく工夫をし、パッチをあてたりしました。そこが一番時間がかかりましたね」

「でも、そういった修理は、昔は日常茶飯事のようにやっていたので」と田坂エンジニア。長年の経験が活きた瞬間だった。

「この仕事も30年くらいやっています。アルミを切って、曲げて、パッチをあてて……。ですので『こういった壊れ方をしているのであれば、パッチをあてればなんとか予選は走れるだろう』ということは経験で分かっているので対応できました」

 しかし、修復作業の時間に余裕はなく、アライメントのチェックまではできなかったという。

「本当は定盤にのせてアライメントもしっかりとチェックしたかったのですけど、そんな時間もなかったので『大丈夫だろう』と信じて、そのまま行ってもらいました。Q1が終わり、ちゃんとアライメントをとったら『だいぶ狂っていたかな?』という感じでした(苦笑)。だから、ノブ(松下)はアライメントが狂ったなかで走ることになりましたが、そのなかでよくQ1を通過してくれました」

 そんな修復が全て終わったのはGT500クラスQ1開始5分前のこと。「絶対にやらなきゃなという感じで、気合いが入りました」という松下は、完璧ではないマシン状態でQ2進出につなげる走りをみせた。

「ドライバーって、クラッシュしてしまうと(次の走行時に)思い切りいけなくなってしまいがちです。このQ1に対しては、その部分とのせめぎ合いが自分のなかでありました。ギリギリでしたけど、それを制してQ1を通ることができました」

「『ギリギリ(時間内に)直らないかかもしれない』と言われていたので……本当に良かったです。今日はチームの皆さんに感謝です」

 Q2では塚越広大がさらにタイムを更新し、1分32秒087で4番グリッドを獲得。一時はQ2進出はおろか、予選出走も危ぶまれた状況のなかから、見事な挽回をみせる結果を勝ち取った。

 改めて予選日を振り返った金石監督は「もう、ジェットコースターみたいな1日でした。今日はドッと疲れたという感じでしたが、最終戦のチャンピオン争いにつなげられそうな順位で落ち着けたので、本当に良かったです」と安堵している表情をみせていたのと同時に、チーム全員に感謝の気持ちを伝えた。

「これでQ1を走れなかったら……嘆願書を書くところから始まるので、それだけで気が滅入ってしまいます。ですが、あの状況のなかで、本当にチームのみんなが時間どおりにマシンを直してくれました。直してくれたメカニックと、良い走りをしてくれたドライバーたちに感謝です」
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