Z世代、なぜ「タイパ」重視する? 徹底した効率化の背景に「脱落したくない」不安

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2022年10月23日 12:11  リアルサウンド

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 Z世代の若者の間では昨今、コスパならぬ「タイパ=タイムパフォーマンス」が重視されているという。情報が溢れ、無限に提供されるコンテンツに囲まれた生活の中で、できる限り効率的に時間を使おうとするその姿勢は、デジタルネイティブにとっては当然なのかもしれない。学習塾では1.5倍〜2倍速の動画で授業をするケースも増えており、それでも理解度は下がらないと評判だ。そうした風潮を反映してか、ビジネス書においても、『YOUR TIME ユア・タイム』(河出書房新社)や『限りある時間の使い方』(かんき出版)といった時間術にまつわるものがヒットしている。


参考:岩波新書・編集長が語る、“現代人の現代的教養” 「教養とはよりよく生きるために大切なものを学びとる精神のこと」


 一方、『映画を早送りで観る人たち』(光文社)や『ファスト教養』(集英社)などの新書では、時短を重視するあまり、映画のように本来じっくりと鑑賞すべきコンテンツまでが「タイパ」の対象となっていることや、有名YouTuberによる本の要約だけで教養を身につけようとする姿勢に対して疑問符も投げかけられている。


 タイパを重視することの是非について、『ファスト教養』の著者であるレジー氏に話を聞いた。


「時間をうまく使い、効率的に情報を得ようとすること自体は悪いことではないでしょう。情報処理のスピードを上げることで余剰時間が生まれるのであれば、むしろ積極的に様々なツールを活用すれば良いと思います。しかし、塾の授業を倍速で聞くのと、映画を倍速で見てあらすじだけを掴むのは意味合いが違います。タイパ重視の姿勢が、文化や芸術といった空間にまで及んでくると、その時間の使い方は本当に豊かであると言えるのかという疑問はあります。また、効率を上げようとして様々なサービスを使った結果として、むしろ忙しさが増したという経験をした方も少なくないはずです。タイパを追い求めることで本当に効率が上がっているかどうかは、検証の余地があるでしょう」


 タイパを重視する背景には、人々の不安や焦りもあるとレジー氏は指摘する。


「拙著『ファスト教養』では、ファーストフードのように簡単に摂取でき、ビジネスの役に立つことこそ大事という画一的な判断に支えられた情報を“ファスト教養”と定義付け、その背景にある社会不安を分析しています。ファスト教養は、上司や取引先の人に気に入られるために一昔前の音楽を聴くとか、自分の市場価値を高めるために古典文学に触れるなど、周囲から取り残されて脱落しないため、あるいはライバルを出し抜くために学ぶことを求めます。SNSで知識が豊富な人を横目に見て、大量の情報を摂取しなければいけないという焦りや不安に駆られてしまう構造は、昨今の社会の息苦しさと繋がっているように思います。タイパ重視の背景にも、少なからずそうした心理があるのではないでしょうか」


 しかし、昨今では単に効率だけを重視するのではなく、内実を重視しようとするタイパも見られるという。


「現在ヒットしている『YOUR TIME ユア・タイム』や『限りある時間の使い方』では、生産性は罠であるとか、むしろ退屈なことをすることで自分の時間を取り戻すべきだという主張が見られます。こうした結論は拙著『ファスト教養』とも通じていて興味深いです。おそらく人々は、単にライフハックで効率化を追い求めるだけでは、豊かな人生を送れないことに気づき始めているのではないでしょうか」


 情報に溢れて誰もが忙しい現代、改めて本当に有意義な時間の使い方を考えるのは、Z世代だけの課題ではなさそうだ。


このニュースに関するつぶやき

  • 本の要約チャンネルだけ見て判断するのはかなり危険。買って読んでみたらかなり違ったりする。短い時間にまとめるためにかなり主観が入ってるのだよ!
    • イイネ!13
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