JUJU、“ユーミン愛”に溢れた夢のような夜 松任谷由実もサプライズ登場した『不思議の国のジュジュ苑』最終公演

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2022年10月27日 12:11  リアルサウンド

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JUJU(写真=本内大吉)

 JUJUの『不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語- JUJUの日スペシャル 演出:松任谷正隆』が10月10日、東京・武蔵野の森 総合スポーツプラザ メインアリーナで行なわれ、アンコールにはサプライズで松任谷由実が登場するなど、ツアーの締めくくりにふさわしい、一夜限りのまさにスペシャルなライブになった。


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 JUJUのユーミン愛が溢れ、それが客席に伝わり感動に変わり、その幸せな感情の交感に、会場は終始幸せな空気で包まれた。本公演は「ユーミンは“人生の教科書”」、そう語るJUJUが3月に発売した松任谷正隆・松任谷由実のWプロデュースで作り上げた、まさに前代未聞のカバーアルバム『ユーミンをめぐる物語』をひっさげて、5月からスタートした全国ツアー『JUJU HALL TOUR 2022 不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語- 演出:松任谷正隆』(全44公演)のファイナルだ。


 客席のワクワク感がマックスになった時、スクリーンにダンサーが踊る影が映し出され、ショーがスタート。オープニングナンバーはJUJUのデビュー曲「光の中へ」だ。「September Blue Moon」では、途中からダンサーと共にストリングスのメンバーがダンスに加わるという斬新な演出。ステージセットをはじめ、歌、演奏、そして光の演出による、陰影が強調され生まれる独特の“色合い”がひとつになり、観るものを一瞬にして不思議の国に連れていってくれる。「夜、ユーミンを聴いて過ごすのが習慣だった」というJUJUが、『アリス・イン・ワンダーランド』のようにユーミンを聴いているうちにその世界に夢中になり、迷い込んだのが「大人による、大人のためだけの不思議の国」だ。演出の松任谷正隆が作り上げた世界に、JUJUの歌が溶け込み、より深い世界が醸成されていく。楽曲の世界観や季節に沿って変化していく、趣向を凝らした演出の大きなポイントになっていたのが、ダンサーのTAKAYUKIと岩室由美だ。2人はユーミンのバックダンサーでもあり、この物語の強い“差し色”になっていた。


 速いリズムとローズピアノの音色、ストリングス、コーラスが織り重なる「影になって」は、〈なんて不思議な なんて不思議な霧の夜なの〉〈真夜中は全てが媚びることもなく/それでいてやさしい〉という歌詞が、毎夜ユーミンを聴いていたという当時のJUJUの心模様を想像させてくれる。ユーミンの世界だけど、完全にJUJUの色になっている。この曲だけでなく、全曲がそうだ。バーのカウンターのセットで、少しアンニュイな歌を聴かせてくれる「街角のペシミスト」「ダイアモンドの街角」もその伸びやかな歌で、オリジナルの中に存在する切なさやユーミンの“空気”を立てながら、“JUJUの歌”を表現。「真珠のピアス」「リフレインが叫んでる」「DESTINY」などの人気曲はもちろん、カバーアルバムには収録されていない、JUJU偏愛のユーミンナンバーも多数披露した。


 後半、このツアーでは歌っていなかった「ひこうき雲」を初披露。繊細な表現で切々と歌うと、客席に感動が広がっていくのが伝わってくる。切ないメロディの「ダンデライオン〜遅咲きのタンポポ」は、JUJUの抑え目の歌がより切なさを膨らませ、胸が締め付けられる。「守ってあげたい」では客席から大きな手拍子が起こり、JUJUは歌い終わると手で「♡」マークを作り、マイクなしで客席に「ありがとう」と感謝の気持ちを贈る。太いベースとギターのフレーズが印象的な「メトロポリスの片隅で」は、オリジナルに近いアレンジで、当時(1985年)の煌びやかなイメージを蘇らせてくれる。美しいストリングスが感情をくすぐってきた「卒業写真」でも、トーンを抑えた歌でスタンダードナンバーが持つ普遍性をしっかり伝えてくれる。


 ここでバンドメンバー紹介があり、素晴らしい演奏で物語を進めていったミュージックディレクター/ギターの石成正人をはじめ、天倉正敬(Dr)、SOKUSAI(Ba)、草間信一(Pf/Key)、Olivia Burrell(Cho)、Mayo Samira(Cho)、そしてストリングスチームというスーパーバンドの一人ひとりに惜しみない拍手が贈られる。本編ラストは「奇跡を望むなら…」を披露。不思議の国の空から射すひと筋の光のようなJUJUの歌が、客席の一人ひとりの心を潤す。


 鳴りやまない、アンコールをリクエストする拍手に応えJUJUとメンバーが再登場すると、JUJUが今回の壮大な企画について、改めて語ってくれた。「今日はこの『不思議の国のジュジュ苑』ツアーの締めくくり。決死の覚悟でお願いに上がってこの種を撒いて、『ユーミンをめぐる物語』というアルバムで芽が出て。そしてこのツアー、このショーという大きな花を咲かせました。皆さんの未来にも、毎年素敵な花が咲くように」と、新曲「花」を披露。切なくも強いミディアムバラードを歌うと、その慈愛に満ちた美しい世界に誰もが引き込まれていく。ストリングスが響き渡り「Hello, my friend」を歌い始める。そして楽曲が転調して空気が変わると、黒のレザーパンツにJUJUのツアーTシャツを着たユーミンがステージに登場。会場全体が驚きと喜びの拍手に包まれ、観客も思わず総立ちになる。


 まずはユーミンの歌が会場中に広がり、途中からJUJUの声が重なっていく。カバーアルバムの“ユーミンはいつも私を連れ出してくれた。”という謳い文句の通り、JUJUを色々なところに導き、女性として、そして人としての気づきや発見を与えたユーミンという偉大な存在。ステージ上でデュエットしているJUJUの心中を考えると、グッとくるシーンだ。


 まだ夢のデュエットは続く。「やさしさに包まれたなら」で柔らかなハーモニーを奏でると大きな拍手が贈られる。歌い終え、JUJUがユーミンにデビュー50周年のお祝いの言葉を贈ると、ユーミンは「色々なところでお祝いしてもらうけれど、このショーが最高のプレゼント。ありがとう!」とお礼の言葉を返す。JUJUは溢れそうになる涙をこらえながら、感激の表情を見せていた。「少し早いけれど、来年もいい年になりますように」と語り、ラストはカバーアルバムのオープニングナンバー「A HAPPY NEW YEAR」を2人で披露。ユーミンが「ハッピーニューイヤー!」とひと足早いメッセージを届けたところでライブは終幕した。


 不思議の国の出口には、とっておきのサプライズが待っていた。ファンにとってもJUJU本人にとっても、忘れられない“夢の一夜”となったはずだ。カバーアルバム『ユーミンをめぐる物語』もこのツアーも、関わっている全ての人のユーミン愛が溢れた、至福の作品&ライブになった。


 なお、JUJUはステージ上から、来年6年ぶりに“スナックJUJU”のママとして、全国47都道府県を回るツアーを行なうことを発表した。(田中久勝)


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