東出昌大、山暮らしで“執着”消えた「人に期待することも、怒ることもなくなった」

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2022年11月30日 08:40  ORICON NEWS

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「今はすべてのマネジメント業を1人でやっている」という東出昌大
 現在は東京を離れ、山小屋で狩猟生活を送っている東出昌大。12月1日より広島で先行公開される映画『とべない風船』では、西日本豪雨災害により妻と子を失った夫役を熱演している。大好きだった妻や息子を失った男の役に、どのような役作りで挑んだのか。また山暮らしを始めて、どのような心境の変化があったのか。東出昌大の“今”に迫った。

【映画特報】妻子を失い、“悲痛な過去を持つ漁師”を演じた東出昌大

■役作りで18キロ増量後に2週間で12キロ減量、妻子を失い心に傷を負った男を熱演

 数年前に起こった豪雨で家族を失い心に傷を抱えたまま、瀬戸内海の島で孤独に漁師を営む憲二(東出)。人生に迷い、疎遠になった父(小林薫)に会いに島へ来た凛子(三浦透子)。『とべない風船』(1月6日より全国順次ロードショー)は、恋人でも家族でもない一組の男女の交流を通して、傷ついた心の癒しと再生を描いたヒューマンドラマだ。

――今回、妻子を失った苦しみから周囲に心を閉ざし、自ら孤立している難しい役どころだったかと思いますが、本作のオファーを受け、迷いはありませんでしたか?

【東出昌大】 台本を読んでからは一切迷いませんでした。ただ、その前の役の役作りで18kg増量していたので、痩せられるかなという心配はありました(笑)。ちょうど間が2週間ほどあったので、懸命にダイエットし、12〜13kg絞り込んで挑みました。

――2週間で12〜13kgはすごいですね! ほかにどのような役作りを?

【東出昌大】 クランクイン前に実際に西日本豪雨があった被災地へ行き、実際被災された方に、その一帯が全部流された話を伺いました。あとは、妻役のなかむらさちさんや息子役の男の子と家族団らんの時間を過ごさせていただき、それを写真に撮ってもらうなど、幸せだった頃の憲二の心を理解して撮影へ入りました。

――漁師の方に漁や魚のさばき方も教わったそうですね。

【東出昌大】 実際に船に乗せていただいたり、1人で海に釣り糸を垂らしてみたり、魚をもりで突いてみたりとかしながら、憲二への理解を深めていきました。あと、漁師はTシャツ焼けだよなと思って日焼けサロンにも行ったんですけど、「Tシャツを着たままマシンへ入っていいですか」と聞いたら、すごく変な顔をされましたね(笑)。

■「辛いことや自責の念に蓋をしてはいけない」いま思う“家族にとって大切なこと”とは

――憲二の体作りだけでなく心情作り含め、本作は大変なシーンも多かったのでは?

【東出昌大】 そうですね。撮影初日が、亡くなった家族のことを想って涙を流すシーンだったんですよ。

――いきなり重要かつ、重い場面ですね。

【東出昌大】 はい。ですから、初日からフルスロットルで演じました。奥さんと子どもが帰ってくる夢を見たシーンや、2人を守れなかったことに対し自責の念を吐き出すシーンは、カットがかかった後も放心状態で、かなり精神的に引きずりましたね。現場で「大丈夫です」と装ったりすることって周囲への気遣いとしては必要だと思うんですけど、そうもできないくらい憔悴するみたいな瞬間が多々ある作品でした。

――憲二の「(妻や息子の記憶を)忘れることが怖い」というセリフが印象的でした。

【東出昌大】 僕もすごく分かります。大好きだった妻と子。何不自由なく幸せに暮らしていた日々が、時間を経るにつれてどうしても薄れていってしまうという心情、それが「怖い」というのはとても深いセリフだと感じました。夢が現実になって、朝起きたら妻と子が戻ってくるのではないか…。自分だけにはもしかしたら奇跡が起きるんじゃないかと思う気持ちはすごく分かります。

――それが、作品のシンボル“黄色い風船”にも込められている。

【東出昌大】 本当に大事な人を失うという経験は僕にもあって、夢に見たり蘇ってくれないかと思ったり…。父が亡くなった時も、ペットの猫が死んだ時もそうでした。辛いこと、自責の念、それは忘れようと思って忘れられるものでもないし、臭いものに蓋をするような考えになってしまっては意味がないと思うんです。その時にはしんどいかもしれないけれど、日々考え続けて前へ進んでいかなければならないと思います。

――家族の大切さは失ってから気づくのでは遅い、というメッセージも作品に込められているように感じました。東出さんが思う、家族にとって大切なこととは。

【東出昌大】 一言では語りきれないな…。それだけ奥が深く、言葉を尽くしきっても、語りきれるものではない。ただ、その中心にはおそらく“愛”がある。そういった意味では意外とシンプルなのかもしれませんね。

■「今はすべてのマネジメント業を1人でやっています」今後は“自然体”で生きていきたい

――1年ほど前から山で狩猟生活をされているそうですが、それによる心境の変化はありましたか?

【東出昌大】 物や人への執着が薄れて、期待することも、怒ることもなくなりましたね。動物たちって、食べること、自分が食べられないようにすること、子孫を残すこと、この3つだけをシンプルにやりながら生きているんですよ。そういう彼らと同じ目線に立って生活していると、そもそも怒りって必要なのかなとか、生きるって何だろうとか毎日考えています。

――マネジメント業務もご自身で?

【東出昌大】 はい。請求書の発行からスケジュールを切ったり、スタイリストさんをお願いしたり、すべて自分で行っています。

――今後、どのような人生設計を立てていらっしゃるのでしょうか。

【東出昌大】 山での生活は、相対的な評価や人から言われることよりも、朝は寒いとか川の水が冷たいとか、火は熱いとか、自分で体験して知っていくことが、東京の清潔な部屋にいるよりも多いんです。今後はこうして自然と一緒に生き、英気も養いながら、全身全霊で芝居に向き合っていきたい。自然環境はプランが立たないし、思った通りにはならない。でも、その思い通りにならなかったことに対して裏切られたって憤るのもばかばかしいと思うので、もう後はそんなにプランニングもせず、自然体で生きていきたいですね。

――憲二も他人と距離を置き、自然や魚と対峙する漁師生活を送っていましたが、生活や思考をシンプルにしていくことで、何かを失う哀しみを乗り越えるのも容易になるものでしょうか。

【東出昌大】 いえ、こういう風に心がけようとかそういう人間でありたいっていうのは平時の考えであって、いくら思考がシンプルになっていっても、やっぱり失くしてしまった時に沸き起こる感情は御しきれない。忘れられたらどんなに楽かと思うけど、忘れるのも怖い。死んだほうが楽なんじゃないかって憲二は思ってたと思うんですけど、どうやら死にきれない。でも生きていかないとって周りに気づかされて、生きてくことの素晴らしさを知るっていうのはものすごく良い話だなと思います。


(取材・文=衣輪晋一)

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