『とんでもスキルで異世界放浪メシ』ヒットの要因は“料理”ではない? 「冒険」より「生活」を志向する主人公の魅力

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2023年01月31日 18:41  リアルサウンド

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©江口連・オーバーラップ/MAPPA/とんでもスキル

※本稿は『とんでもスキルで異世界放浪メシ』のネタバレを含みます。


 一風変わった“飯テロ”アニメとして人気拡大中の『とんでもスキルで異世界放浪メシ』(原作:江口連)の第4話が1月31日、24時から放送される。


(参考:【写真】コラボレストランで見事に再現された『とんスキ』の異世界メニューたち


 原作のライトノベル&コミックも人気の『とんスキ』は、異世界に転生したごく普通のサラリーマン・向田(ムコーダ)が「ネットスーパー」という一見地味なスキル(※ネットショッピングの要領で現実世界の商品を取り寄せられる能力)を駆使してサバイブしていく物語。特にムコーダが作る料理は、異世界人だけでなく神々や伝説の魔獣も魅了し、大きな力になっていく。


 第4話は、お手軽料理を武器に異世界を生きてきたムコーダが、従魔のフェル(フェンリル)のスパルタ指導で「魔法」の習得に挑む……という異世界転生モノらしい内容だ。深夜の飯テロアニメとしての話題性が高いが、忘れてはいけないのは、本作は現代人が未知の世界で奮闘するという、定番の魅力がある物語であるということ。そして、本作の魅力は「既製品を使った料理」というより、「冒険」ではなく「生活」を志向するムコーダのパーソナリティにあるように思える。


 『とんスキ』における異世界の設定は、今回の第4話に象徴されるように、おなじみでシンプルなものだ。勇者やモンスターがいて、エルフやドワーフのような亜人種がいて、魔法があり、冒険者がクエストをこなすギルドがある。異世界作品に慣れた読者/視聴者がすんなり入っていける世界観で、多くの転生者が持つ戦闘面でのチート能力の代わりに、従魔や女神の加護がある。


 その多くが「冒険」に紐づくというより、「生活」を支えるものになっているのが面白い。モンスターは文字どおり“生活の糧”であり、ギルドは生活費を賄い、必要な情報を得るための場で、今回ムコーダがいよいよ習得する魔法ですら、土の魔法で簡易的な小屋を作ったり、火の魔法で風呂を沸かしたり……と、生活を便利にする手段として活躍する。


 だからこそ、「料理」が物語の中心に座っていることに納得感がある。しかもムコーダは料理に関する異能を持っているわけでもなければ、もともと凄腕のシェフだったわけでもなく、ごく普通のサラリーマンだ。「簡単にうまいものが食べたい」という、生活に根ざした慎ましい欲求は深く共感できるもので、それが深夜の飯テロに拍車をかけているのだろう。


 「冒険」を志向すればたちまち英雄になりそうだが、「生活」をベースに考えるムコーダの歩みは地に足がついており、加速度的には進まない。現実とは違う世界と、ワガママな従魔や女神たちに翻弄されながら、少しずつ日々を充実させていくムコーダは、この旅の先にどんな生活を手に入れるのか。楽しみに見守ろう。


(向原康太)


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