HOPPY team TSUCHIYAの菅波冬悟起用の理由は。そして2年目の野中誠太が狙うものは

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2023年02月06日 10:10  AUTOSPORT web

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2023年にHOPPY Schatz GR Supraをドライブする菅波冬悟と野中誠太。ホッピービバレッジ本社ビルにて。
 2月5日、スーパーGT GT300クラスに参戦するHOPPY team TSUCHIYAは、2023年の参戦体制を発表した。2023年は2年目のGT300参戦となる野中誠太のパートナーとして、菅波冬悟がチームに加入することになった。2019年途中から2021年までK2 R&D LEON RACINGで戦った菅波を起用することになった理由について、土屋武士監督に聞いた。そして、継続参戦となる野中にとっても今季は大きな目標をもってのシーズンとなる。

 いちからGTA-GT300規定のGRスープラを作り上げGT300に臨んだHOPPY team TSUCHIYAにとって、2022年は波瀾万丈のシーズンとなった。そんな一年を乗り越え、長年チームを支えた松井孝允をTEAM MACHへ送り出し臨む2023年、土屋監督がドライバーとして選んだのは2022年に1戦スポット参戦したのみだった菅波だった。

 なぜ菅波を選んだのか? という質問に対し、土屋監督は「昨年テストで機会があってポルシェをドライブしてもらったのですが、すごくフィードバック能力が高いと感じました。自分もドライブしているクルマですが、そのフィードバックの表現の仕方が的確です。短い時間でこういうコメントができるということは、どういうセンサーをもっているか分かったので、非常に使いたいドライバーでした」と菅波を評した。

 そんな背景のなか、2023年のドライバーについて土屋監督が決断を下したのは「第8戦もてぎの土日と、その次の月曜日」だという。「冬悟はその前に(自分の頭のなかに)インプットされているけど、2023年のドライバーをどうするかは3日間で決めました。正確には第7戦オートポリスの決勝日も含めるから、4日間かな」という。

 もちろんその前に「もし何も(他からのオファー)がないんだったら気に留めておいて」と菅波には声をかけていたが、土屋監督にとってはHOPPY Schatz GR Supraの2名のドライバーと第3ドライバー、さらにMax Racingの244号車のドライバーに3名の候補の枠があった。最終的に、1日+3日間の決断を経て、土屋監督は松井に2023年は乗せない旨を伝えた後、菅波に連絡。25号車のドライバーとしてのオファーを告げた。

「25号車のオファーが来るとはまったく思ってもいなかったので、はじめは驚きました」と菅波は語った。「でも、そう言ってくださったことに対して、嬉しかったことを覚えています。ドライバーのキャリアとしても、自分がどこで乗るかは重要なこと。以前から武士さんとお付き合いがあったなかお話をいただいたので、悩む間もなく『ぜひよろしくお願いします』と返答させていただきました」

■周囲に恵まれたことで磨かれたセンサー
 そんな土屋監督が高く評価した“センサー”について菅波は、レーシングカート時代がベースとしてあり、さらにTGR 86/BRZ Raceなどでの「まわりにいて下さる方の環境が恵まれていた」ことから磨かれたと自己評価する。

「特に86/BRZ Raceでは、服部尚貴さんがダンロップのタイヤ開発のリーダーを担っており、それを間近で見させていただきました。コメントや、動きに対して起きることなど、多くのことを関わらせていただきました。そういった経験があったので、ヨコハマさんに変わっても自分がしっかりコメントできたのだと思います」

 そして、菅波をさらに成長させたのは、2022年の全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権参戦で得た経験だ。2022年、GT300ではシートがなかったが、スーパーフォーミュラ・ライツに乗ることができたことで「自分のドライバーとしてのレベルが一段上がった」という。

「正直、ライツでは専有走行で調子が良かったのに、レースでは良くなかったなどありましたが、あのカテゴリーは今まで乗ってきたクルマよりも、ひとつ次元が違うハイダウンフォースのマシンです。一年を通じて乗らせていただいたことで、自分のなかのスピードのセンサーのレベルが上がったと思います」

「武士さんに乗せていただいたGT3でのテストでも、余裕をもって走れるというか、限界を容易に引き出せるようになりました。今後の自分のレース人生にとっても、プラスに働くと思っています」

 そんな菅波にとって、今季チームメイトとなる野中は5歳年下だが、実はこれまでのキャリアを振り返ると、「年が離れた先輩・後輩ではありますが、同じカテゴリーに出ていたライバルとしての時間の方が長い」という間柄だという。全日本カート、FIA-F4と菅波が複数年をこなした後に野中がステップアップしてきた。また、2022年はともにスーパーフォーミュラ・ライツで切磋琢磨し合った間柄だ。

「誠太の速さは同じカテゴリーでレースをしていたからこそ分かっていますし、トヨタの中でもトップを目指している、旬な、若い勢いがあるドライバー。僕も刺激をもらいながら、今後30歳代を前にもっと速くなりたいという向上心をもって臨んでいきたいです。だから楽しみですね」と菅波はチームメイトとして戦う一年に期待を寄せた。

■野中誠太の2023年の最大の目標は
 菅波を迎え、HOPPY team TSUCHIYAで2年目を戦うことになる野中は、「昨年から積み上げているものもあるので、それを無駄にしないようにしたいです。その結果が優勝に繋がれば良いですが、菅波選手と力を合わせて頑張りたいです」と意気込みを語った。その先に見据えるのは、これまで多くのトヨタ育成ドライバーの先輩たちが歩んできたように、GT500へのステップアップだ。

「とにかく、GT500に上がるために結果を残すことが、いちばん強く思っていることです」と野中。2023年も参戦が決まっているスーパーフォーミュラ・ライツで結果を出すことができれば目標に近づくが、「スーパーGTでも予選など、見てくださる方は見てくれているので、スピードを証明したいと思います。またどんな状況でも、クルマをチェッカーまで持っていく仕事をしっかりこなせていれば、チャンスはやってくると思っています」という。

 もちろん初年度の2022年は、スーパーGTならではの苦労も味わった。「タイヤなどのコンディションの変化で浮き沈みがあるのは、自分の予想以上でした。いろんな条件が揃わないと結果に繋がらないので、すごく難しいカテゴリーだと感じました。またGTカーというもの自体も初めてで、どのベースをもってくれば良いのか見極めるのが難しかったです」と野中は、2022年の経験を踏まえて2年めに臨む。

「菅波選手はGT300でも86/BRZ Raceでも、ハコという意味では経験があるドライバー。僕にとっては勉強になると思っています。僕はハコに関しては経験がないですし、昨年松井孝允選手と組んだときにも、乗り方がまったく異なる部分がありました。僕の引き出しが少ないと思いましたし、クルマの作り方、タイヤの評価の仕方などは、今後も学んでいかなければいけないですし、菅波選手からも学んでいきたいです」

 野中にとっては、これまで磨いてきたスピードを日本のトップカテゴリーで活かすべく、具体的に結果が欲しいシーズンとも言える。もちろん菅波にとっても、GT500もスーパーフォーミュラも「チャンスがあれば乗りたい」カテゴリーでもある。

 土屋監督が高く評した菅波と、2022年のGT300参戦を経て勝負の一年と見据える野中。ふたりがどんなシーズンを送るのか、非常に楽しみにしたいコンビネーションだろう。

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