「悪女役が見てみたい!」女優に沢尻エリカ・広瀬すずの名前も、令和の時代が求める悪女像

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2023年02月07日 06:00  週刊女性PRIME

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(左から)広瀬すず、田中みな実、菜々緒

《あなたの目には公子が悪女に映るでしょうか、それとも》1月17日に『悪女について』(NHK BS4K)の出演発表があった田中みな実(36)のコメント。田中が演じる公子は実業家で富を築くが、男たちを翻弄する“悪女”。ツイッターでは《あざとい女子、お似合いだと思う》、《田中みな実の悪女役は見たい!楽しみ!》と放送前から話題だが、今求められるのはどの女優による悪女なのか。

悪女役が見たい女優は誰?

「見たい悪女役に挙がる女優には大きく2つの方向がありそうですね。“すでに悪女役をやっていて、当たり役がある人”、“悪女役のイメージはなく、だからこそ見たい人”です」

 週刊女性が行った女性1000人を対象にしたアンケートの回答から解説するのはテレビ評論家の吉田潮氏。

「すでに悪女役をやっている女優としては大竹しのぶさん、寺島しのぶさんの“Wしのぶ”。さらに岩下志麻さん、桃井かおりさんらがいます。錚々たるベテラン勢には、もう一度見たいという声はやはり多いようです」(吉田氏)

 アンケートでは大竹に対して、「『黒い家』での演技では、自覚のない悪女というキャラクターを演じきっていて、下手なホラー映画より怖かった」(北海道・63歳)といった声が。また、岩下を挙げた理由には、「極道の妻が似合うから」(愛媛県・56歳)「極道の妻を見てすごい演技力だと思った」(静岡県・67歳)と、すでに悪女役の代表作があり、もう一度見たいという声につながった。

 ほかにも過去の悪女役のイメージが強く、求められる女優は多い。

「米倉涼子さんもアンケートで多く挙げられていましたが、'04年の『黒革の手帖』の印象が強いのでしょう。悪女の当たり役ってあります。'83年の『スチュワーデス物語』の片平なぎささんや、'04年の『牡丹と薔薇』の小沢真珠さんがいまだに名前が挙がるのも、主人公をいびり抜く演技が強烈で忘れられないからですよね」(吉田氏、以下同)

 悪女役は印象に残りやすく、そのイメージはなかなか拭えない。

「田中みな実さんも'19年のドラマデビュー作『絶対正義』では、不倫にはまり同級生の殺害を企てる役どころでした。'20年『M 愛すべき人がいて』の革の眼帯をつけた主人公のライバル役など振り切った役が多いので、しっかり悪女役としての印象が残っています」

 菜々緒(34)も、「定番の悪女女優、ハマり役すぎていろんな悪女を見てみたい」(福岡県・42歳)、「きれいでカッコいいので悪役が似合う」(新潟県・22歳)と、アンケートで多く名前が挙がっていたが、やはり悪女の当たり役がある女優といえる。

「菜々緒さんは'14年フジテレビ系で放送された『ファーストクラス』や'18年放送の日本テレビ系『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』などがあります。ハイキャリアな悪女が似合いますよね。

 '15年の関西テレビ系『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』ではとんでもないサイコパスを演じたりと役の幅も広い。最近は悪女役ばかりではないですが、それでも端正な容姿で悪女=菜々緒の地位がすでに確立されています」(吉田氏、以下同)

 悪女役のイメージがある女優たちに対して吉田さんは消極的な意見も。

「やはり既視感があるので、私としては新鮮さが欲しい。新たな人が出てくるのを期待したいですね」

悪女イメージがないからこそ見たい

 アンケートで北川景子(36)を挙げた人も。その理由は、「あまり悪役を演じているのを見たことがないから、どんなふうになるのか見てみたい」(長崎県・34歳)。広瀬すず(24)には、「まだ悪女役はやってないような気がするので、ぜひ見てみたい。ギャップがすごくあると思います」(長野県・26歳)といった意外性を求めての声。

「悪女イメージのない人がやるのも意外性があって新鮮です。私は石田ゆり子さん、沢口靖子さん、吉永小百合さんなどが思い浮かびます。ただ、もし本当に悪女役をやっても予定調和だったり、善化しそうだったりかもしれませんね。

 アンケートでも名前が挙がっていた広瀬すずさんもいいですね。これまで純粋なヒロインのイメージしかない女優が悪女をやったらと想像すると、ドラマ好きとしてはワクワクします」(吉田氏)

 長澤まさみ(35)という回答も。「演技派女優で、どんな役でもこなしてしまうのですごいと思う。極悪な彼女を見てみたい」(東京都・51歳)

 悪女といえる役は少ないかもしれないが演技に定評のある長澤に吉田氏も期待する。

「長澤まさみさんは『コンフィデンスマンJP』や『エルピス』など正統派よりちょっとクセのあるヒロインを演じることが多いので、振り切った悪女を演じる可能性が今後あるかもしれませんね」

 現在は活動休止中の沢尻エリカ(36)の名もあった。「沢尻エリカが見たいです。性格悪い、離婚歴、前科持ちなどのキャラクターとか」(和歌山県・41歳)

「演技力はすごくある人。ハリウッドのように寛容な土壌があると復帰して活躍できるかもしれないですが」

 と、吉田氏も沢尻の悪女役にも期待したいと話す。

変わってきた悪女の描き方

 吉田氏は昔と今では悪女役の描き方が変わってきたと分析。徹底的に嫌われる人格の悪女はおらず、昨今では特に誰も悪いとしないドラマが求められるという。

「ある程度視聴者の共感を得るために、貧困だったり、虐待されていたり、不幸な原因があって悪の道にいった……というような背景のストーリーが必ずついています」

 悪役を演じると、昔はカミソリ入りの手紙が送られてくるほどだったが、今はそんなリスクを背負わせるような人物の描き方はしない。

「きっかけのひとつに、坂元裕二さんが脚本を書いた2010年に日本テレビで放送された『Mother』があるかもしれません。悪役を演じる尾野真千子さんがどうしてそうなってしまったかを追う回がありました。当時としては珍しく、間違ったことをする側の背景を描くことで、こんなにドラマって深くなるんだと思った記憶があります」(吉田氏、以下同)

 その後、悪者役にも背景を描くドラマは増えたという。

「坂元裕二さんに影響を受けたと思われるクリエイターも続々と出てきています。去年、おととしぐらい前からですが、ドラマで表現する善悪の描き方がますます一元的ではなくなってきています。それも面白いと思いますし、令和らしいなと思います」

 昨年に大ヒットしたドラマ『silent』(フジテレビ系)も、誰も悪者にならないような描き方だった。今の世の中ではそうした“配慮”を求められているのかも。

「コロナ禍を経て、物価高騰などしんどい話題が多い昨今。勧善懲悪ではなく、誰にでも理由があるという優しい描き方のドラマが見たいんだと思います。ですが、私はやはりもっと新しい悪女像も出てきてほしいと切に願います」

 今後そういう作品は出てくる可能性はあるという。

「最近、女性の脚本家や演出の方も増えてきているので、女性の描き方がこれから変化するのかもと期待しています。女性を悪者にしてはいけないという空気は依然としてあります。同性だからこそ、性的な表現など微妙なニュアンスでも逆に踏み込める部分があるかもしれません」

 ドラマの中だけでも大暴れしてスカッとさせてくれる悪女役の誕生に期待したい。

吉田潮(よしだ・うしお)●コラムニスト。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆し、『週刊フジテレビ批評』のコメンテーターも務める。著書に『親の介護をしないとダメですか?』(KKベストセラーズ)などがある

(取材・文/諸橋久美子)

 

 

 

 

 

 

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