森友哉(オリックス)の少年野球時代|小さなプロ野球選手の履歴書

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2023年02月17日 17:54  ベースボールキング

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2月9日に発売された『小さなプロ野球選手の履歴書』(カンゼン)。ヤキュイク編集部が企画、編集したこの本のなかから、オリックスバファローズ森友哉選手を小学生時代に指導した「庭代台ビクトリー」の大川秀樹前総監督にお話を伺った「指導者が語るアマチュア時代」の一部を紹介します。



■小学生時代はむしろ背が高かった ヘッドスピードを速く! 思い切り振れ!
【抜群のヘッドスピードを誇ったスーパー小学生】
「どこにでもおる『やんちゃくれ』という感じで、一時もじっとせずに、ようチョコチョコしていたのを覚えていますね」

そう懐かしそうに振り返ってくれたのは、森選手の少年野球時代の監督である大川秀樹さん。

プロ野球の世界では身長170センチと低い部類に入るが、小学生時代はむしろ大きいほうだったという。

「入ってきた当時は小さかったですけど、それでも1年生なりの小ささでした。5年生頃からグーンと背が伸びて。6年生の時は他の子よりもちょっと大きいくらいでしたね」

お借りした写真を見ると、確かに周囲の子よりも大きいのがよくわかる。



甲子園でもプロでも身長を感じさせない豪快な打撃が魅力の森選手だが、当時から打撃はもちろん投げても他の子とはレベルの違う、いわゆる『スーパー小学生』のような存在だった。
「ヘッドスピードの速さが他の子どもたちと全然違いました。6年の頃は大人が草野球で使うビヨンドマックスを普通に振っていましたから」

スイングの形などは上のカテゴリーで教えてもらえばいい。小学生時代はとにかくヘッドスピードを速くすることが一番大事。あとはとにかく振れ! 思い切り振れ!

それが大川さんの打撃の指導方針だった。
「ヘッドスピードの速い選手に汚いスイングの選手はいない。ヘッドスピードが速くないと綺麗なスイングにならない。ヘッドスピードを速くするために綺麗なスイングにするのではなく、ヘッドスピードが速くなったら勝手にスイングが綺麗になってくる」

大川さんのバッティング哲学を体現するように、森選手は抜群のヘッドスピードから大人顔負けの打球を次々かっ飛ばす少年だった。ホームランもフェンスオーバーするだけではなく、外野の頭上をはるか越えていくような打球ばかりだった。
「あの子と同じくらい打つ子はよそのチームにもいましたけど、あの子ほど飛距離を出せる子はいなかったですし、あの子を抑えられるピッチャーもいなかったですね」
そんな森選手の小学時代の打撃を、生まれ持った才能やセンスがあったから、という言葉では片づけられないと大川さんは言う。
「日頃から家で5分でも10分でもいいから素振りしておけよって言っていたんです。それを森はお兄ちゃんと一緒にちゃんとやっていましたからね。それもちょっと重たいバットで。毎日夢中になって素振りをしていましたから、それだけ野球が好きだったということでしょうね」
【「ファーストストライクをフルスイング」という約束】
6年生のゴールデンウイークが終わった頃、卒業後の進路について森選手と話をした。そこで「(硬式の強豪チーム)堺ビッグボーイズでやろうと思っています」と言ってきた。

当時のチームは6年生が森選手を含めて4人しかおらず「森が打たないと勝てない」というチーム事情もあったため、森選手が少々のボール球に手を出しても何も言わなかった。しかし、中学から硬式で野球をやると知った大川さんは、その方針を改める決意をした。
「これからはボール球に極力手を出さないように。その代わり、ノースリーだろうがファーストストライクがきたらフルスイングしていい。いつもフルスイングしろ。それを俺と約束しよう」

最初のストライクを見逃して、そのあとにそれ以上打ちやすいボールがくる保証はない。高いレベルでやっていくのであれば「イケる!」と思ったボールを振れるようにならないといけない。大川さんはそのように考えて、森選手と約束をした。

ちなみに、大阪桐蔭の西谷監督が中学生の打者をスカウティングするときのひとつの基準が「ファーストストライクを振りにいけるか」というのは有名な話だ。



大阪桐蔭での甲子園春夏連覇を成し遂げ、埼玉西武ライオンズにドラフト1位入団。リーグ優勝にも貢献し、現在は日本球界を代表する強打の捕手として活躍する森選手。教え子の姿を今はどんな思いで見ているのだろうか?
「ひたすら応援しているだけですね。2022年はちょっとケガもありましたけど、腰痛は高校の時からですし、キャッチャーというポジションがキツいんでしょうね。段々重心が低くなっていますけど、スイングは当時のまま。小学校の時から変わっていないです。ベースはあのままですね。森が覆面してスイングしてもすぐわかりますよ(笑)」

そんな森選手は、首位打者を獲得した4年前のオフに、チームに顔を出しに来てくれたことがあった。埼玉西武に入団する際に行った壮行会の時以来の再会だった。

森選手はバッティングのデモンストレーションを行い、子どもたちにプロの打撃のすごさを伝えてくれた。ほかにも、じゃんけん大会でバッティンググローブをプレゼントしてくれ、大人も子どもも大勢が列を作ったサイン会にも最後まで対応してくれたのだという。

最後に森選手へのメッセージをお願いした。
「プロに入る時の壮行会で私は、『森友哉ファンとしては一日も早く1軍で活躍する姿が見たい。そやけどできるだけ息の長い、いつまでも楽しませてくれるような選手でいてほしい』とスピーチしたんです。今もその気持ちは全然変わっていないです。いつまでも、ずっとプロ野球で活躍しているところを見るのが俺の望みや。それだけです」

(取材:永松欣也/写真:大川氏提供)

*森選手の恩師インタビュー完全版は書籍でお読み頂けます。

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