【LINEマンガ】大人気BL作品『ちりぢりゆくの』作者・まゆハル「心と心をぶつける王道ラブコメという感覚で描いている」

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2023年02月22日 07:41  リアルサウンド

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  LINEマンガで好評連載中のBL(ボーイズ・ラブ)作品といえば『ちりぢりゆくの』だ。フルカラー&縦読みである「webtoon」の作品で、美麗なビジュアルが目を奪われる作品だ。内容面でも「BL」というジャンルを愛好する読者にとっては、「ひとつぶで何度でもおいしい」作品だといえるだろう。今回『ちりぢりゆくの』の作者である、まゆハルにインタビュー。作品に込めた想いや創作の背景などをたっぷりと語っていただくインタビュー。


少女マンガとは違う繊細な恋愛表現に魅力を覚えたBL作品

ーー『ちりぢりゆくの』は、宇宙人とのミックスで欲情するとゲル状に“散って”しまう美少年・久野シオと、マッチョで誠実なクラス委員長・相馬湊の恋愛を描いた、フレッシュでエンタメ性の高いBL作品です。まゆハル先生にとって初のBL作品ということで、チャレンジの経緯から聞かせてください。


 それまでは男女の恋愛、コメディ、アクションと色々なマンガを描いてきましたが、振り返ると、男性主人公ばかりでした。私はモノローグを描くのが苦手で、特に女性主人公の言葉選びや性格がどうしても共感性に欠け、馴染めなかったのかもしれません。そんななかで、「BLが面白い!」というきっかけになったのは、秀良子さんの作品です。広告が気になって、拝読した瞬間にトビラが開きました(笑)。少女マンガとは違った繊細な恋愛表現や言葉選びに感銘を受け、何度も読み返しました。次第に読む物もBLが主となっていき、自然と描きたいもの、面白いと思うものの傾向がBLに定まったという流れです。


ーー第一話からエンターテインメント性の高い作品になっていますが、連載に至るまでに紆余曲折あり、当初は設定も違ったそうですね。


 初めは読み切り作品として描いたのですが、現在のようなコメディではなく、切ない系統の作風でした。それを連載用に考え直そうということで、当初は相馬を主人公にしたコメディで連載会議に提案したんです。“散る”という設定も「好きな気持ちで体温が上昇する」というもので、「よく分からない」ということで落選。そこで、テンポよく、わかりやすくというコンセプトでブラッシュアップして、現在の設定になりました。シオを主人公にした途端、一気にコメディ要素が弾け出して流れがスムーズになりました。


冒頭のつかみが重要な読み切りだからこそ生まれた“散る”描写

ーー詳しくは本編を読んでいただきたいところですが、タイトルにもなっている「散る」という設定が秀逸です。特に男子からは「グロい」「気持ち悪い」と忌避され、それがシオにとってトラウマになっていますが、そこから「愛する人と性的なコミュニケーションが取れない」というロマンティックで切ない悩みにもなっていく。そこが物語のポイントにフックになっていますが、どんなきっかけでこのアイデアが生まれたのでしょう?


 そもそもは冒頭のつかみが重要な読み切りを描くときに、「好きな男と偶発的に指が触れ、散ってしまう。1人残された無言の男」という光景が浮かんできました。そこから「“散る”とは?」と設定を詰め込んでいったという流れです。当初はいまよりも「儚く美しく散る」ものにフォーカスしていました。


ーー“散る”描写は最初はエロティックに見えますが、物語の進展とともに美しいものに感じられるようになっていきますね。キャラクターのビジュアルも含め、読者からはフルカラーのリッチな作画への高い評価が寄せられていますが、どんなことを意識していますか。


 作画についてご好評いただいているのは、彩色まで作業を1人で行っているので、色味や光の加減などはこだわりが強く出ているのが理由の一つかもしれません。意識しているのは、白黒マンガの名残を出さないこと。モノクロの点描トーンをそのままカラー化することも可能ですが、作風の雰囲気に合っておらずいまは使用していません。また、現在の色味を出すために何度も試行錯誤を重ねるなかで、そもそも読者の皆さんお一人お一人のスマホ画面の環境が同じでないことに気がついたんです。自分のスマホの画面を暗めに設定していたことを忘れて色調整をしたので、少し鮮やかすぎる気がしています……。


 あとは、花やランタンの光など、カラーだからできる演出をするようにしています。ここぞという時ほど人物だけではなく背景に光や影を落としたり、スクリーン効果で印象的にしたり。特に光や鮮やかさはカラーの強みなので、意識しています。そして、1話につき、必ず一ヶ所は「サービスタイム」となるような決めゴマを作ってます!


全体のバランス感を意識し繊細に決めているキャラデザ

ーー主要キャラクターの造形についても聞かせてください。シオと相馬、同級生で秘密を抱えたなっさん、シオの両親まで、人気キャラクターが多いですが、どんなところからイメージを膨らませましたか?


 シオに関しては、キャラ設定を含めて特に色気を出すようにしています。あとはいかに「アホかわいい」と言ってもらえるか、という部分も細かなコマで出るようにしてます。相馬についてはシオのキャラを超えず、でも“受けの為の攻め”にならないように気をつけています。最初はもう少し地味目なビジュアルでしたが、いまのシオとあまりお似合いではなかったので16歳らしからぬ造形になりました(笑)。


 なっさんに関して、最初のキャラクターデザインでは「THEショタ!」でした。ただ話の内容から私の力では魅力を処理しきれないと思い、現在の造形になりました。シオの両親は、父親は「現実的な発言も包容力があるように聞こえるビジュアル」にしたくて「デカプニ」に。母親は未公開の設定があるのでこの発言がすべてではないですが、「全地球人に愛される、地球人と結婚した宇宙人とは?」を突き詰めた結果がこの造形です。


ーーシオが散っている描写が最初から読者には「グロい」ものには見えず、「気持ち悪い」と彼を傷つける人々と読者が“共犯”にならないのも面白い点だと思いました。


 そうですね。これにはいくつか理由があり、「散ること」が気持ち悪いと思われても、シオというキャラクターが「気持ち悪い」になってほしくなかったこと。また、シオが男子から嫌われる理由は「散ること」以外に彼の振る舞いも大きな理由にしたかったんです。そして、相馬はシオが散った姿をキレイだと言っているので、読み手がグロいと思ってしまうとニッチな趣味になってしまう、という考えもありました。


ーーなるほど。「振る舞い」というお話もありましたが、セクシーでぶっとんだコメディ、というところから、シオの成長も含めて切実なエピソードも印象に残ります。この辺りのバランスについてはいかがでしょう?


 もともと切ない系の作品予定が、キャラ変更によってコメディ色が強い話になってしまったので、後半になるにつれて「散る設定」が活きるエピソードになっています。なので、正直な話、「バランスを考えてバッチリ!」と意識したわけではなくて……(汗)。


BL作品の魅力は感情ではなく心と心をぶつけているところ

ーー自然といいバランスになっていると。性自認の問題に限らず、自分が生まれ持ったものに悩む人たちにとって勇気がもらえるエピソードも多いと思います。BLというジャンルだからこそ描けることについてどう思われますか。


 私個人としてはBLというファンタジーを描いている以上、読み手に訴える社会的テーマという話はおこがましくてできませんが、『ちりぢりゆくの』の読後にそう感じていただけるのであれば、大変うれしいことです。BLについて個人的に思うことは、「感情ではなく心と心をぶつけている」ということでしょうか。はなから脳の作りが同じなので、「感情」よりももっと相手との距離が近い。私のなかではそのような感覚です。


ーーこれまで公開されている16話で一区切りとなり、本日更新の17話から新章突入ということで、単純に続きが気になります。今後について、少しだけヒントをもらえますか。


 シオの体質においての身体の交わり(性行為)は、「どうにもできないもの」です。科学の力ではどうにもできない体質のなか、どう性行為まで持っていくか……という話ではないことはハッキリと言えます。それは読み手としては見たいところではあると思いますが、現段階では夢オチのような展開になってしまうのでは?と。ただ、二人の関係が後退することはないので、そこは安心して読んでください。もちろん、ギリギリのエロは描いていきたいと思います!


 言い換えると、シオの両親の言う「体質の本質」という言葉は、親としての子に対する最適解の考えを提示したに過ぎず、当事者をどうにかできることでも、『ちりぢりゆくの』の着地点でもありません。なのでその言葉を受け取ったシオが今後、どう相手の愛に応えるか、彼なりの愛し方を見つけていくことを描いていく予定です。


ーー楽しみにしています。最後に、今後に向けて意気込みをお願いします!


 もともと16話で完結する予定だったのが、『ちりぢりゆくの』を愛してくれている読者の皆様と、熱心な担当さんのおかげで連載継続となっている作品です。せっかくいただいた機会なので、より丁寧に感情を描いていきたいと思いますし、ギリギリの色気にも挑戦していきたいです。当初は「愛してもらえるキャクター」を主に創作していたので、何よりもキャクターを愛でてもらえることがうれしいです。楽しく愛で溢れた可愛い2人を今後ともよろしくお願いします。


 また、これから読んでいただける方の中には、まだまだ縦読みマンガが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、読みやすいように創意工夫していますので大丈夫だと思います! 「やれないBL」という「特殊設定」ですが、基本は王道ラブコメとなっております。1話から中盤のエグい温度差をぜひ堪能していただきたいですね。


■『ちりぢりゆくの』を早速読んでみよう!
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作品URL:https://lin.ee/hKMYf3J/qtpo
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