野球に早期教育は必要か?|小さなプロ野球選手の履歴書

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2023年02月24日 14:34  ベースボールキング

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2月9日に発売された、ヤキュイク編集部が企画・編集した書籍『小さなプロ野球選手の履歴書』(カンゼン)。この本の最終章では、東京農業大学准教授の勝亦陽一先生に「発育とパフォーマンスとの関係性」について伺っていますが、書籍には入りきれなかった未公開部分を公開いたします。



■野球に早期教育は必要か?
——少年野球でも選抜チームの試合などを見ているとやっぱり上手いし、よく鍛えられています。体が大きい子も多い。でもそういった子たちが必ずしもプロに進んでいるわけではありません。
逆に県大会にも進めなかったようなチームで野球をやっていて、体も小さかったような子が、高校、大学で頭角を現してプロに進むという、ヤクルトの石川投手やロッテの美馬投手のようなケースもあります。野球に早期教育は必要なのでしょうか?

一概に必要ないとはいえないと思います。スキルには「オープンスキル」と「クローズドスキル」のふたつがあります。
クローズドスキルというのは自分がやればいいだけのスキル。例えば水泳やゴルフなどですね。自分の技術を高めていくことが結果に繋がりやすい競技です。これらは特に小さい頃から技術の習得、英才教育が大事で、その技術って大人になっても変わらない。それをそのまま維持しつつ、改善していけばいい。
野球の場合は「オープンスキル」で、打つ、投げるとか自分の技術を高めることが大事ですが、それ以外に相手と対戦するという要素が入ってきます。その相手のレベルが上がっていけば、それに対応してレベルアップをしていかなくてはいけない。そこが野球の難しいところ。
だからバッティングで打球を遠くに飛ばすとか、足が早いとかだったら親の遺伝子ですぐに結果を出せるというのはあると思うのですが、相手がいて、その相手をどう攻略するかとなると、ある程度の経験、積み重ねが必要になってきます。
その積み重ねを上手く積めるかどうか。それが上手く積み重ねられないと、野球選手として上手く大成することができない。

——「クローズドスキル」の競技ほど順調に成長するわけではないけれど、「オープンスキル」の野球も早期教育をやって悪いことはない?

そうですね。ただ野球は難しさがある分、早くやることによって関節の構造上、ケガをしてしまうリスクがあると思います。子どもにはできない技術があったりすると、小さい頃に変な癖がついてしまう危険性もあります。それによって、小さい頃はすごく上手かった子が、その後に高い技術が求められるようになったときに技術をブラッシュアップしていけないということもありますよね。

——具体的にいうと?

例えば、小学生の投げるボールは沈みますのでアッパースイングで打つとかなり当たるんです。でも、そのままアッパーで打っていると、年齢が上がっていってピッチャーの投げるボールが速くなってくると、アッパーで打っても当てにくくなります。そうなったらバットを上から出すように動作を修正しないといけないんですけど、それができるかどうかですよね。
これが「クローズドスキル」の体操だったら技の積み重ねでいいんですけど、野球の場合は技の修正が必要になってくるんです。

——受験勉強に似ていますね。小さい頃から英才教育で有名な塾に通って、勉強を積み重ねていくと目標とする高校、大学の合格に近づいていきますけど、野球は技術を積み重ねていっても、対戦相手も積み重ねていますから、簡単には目標に近づかないですよね。

そうですね。クローズドなスキル、自分でできるスキルってどんどん積み重ねがしやすいんですけど、オープンなスキルって、例えば野球だと、相手投手が150キロのボールを投げるとして、今までそんな速いボールを見たことがない選手にしたら初見になるわけですよね。150キロのボールを打つ経験をしてきていないんですよね。
そういった経験を積んできている子達がいるチームが強くなっているのが今の高校野球ですよね。小さい頃から好循環の中で野球ができている子達はオープンな経験がたくさん積めているんですよね。
(取材・写真:永松欣也)

 

*勝亦先生との対談「発育とパフォーマンスの関係性」は書籍でお読み頂けます。

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  • ◯◯だけやってればいいって育て方はやっぱり偏るんだよ人として。
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