「闇バイト」で息子が逮捕された 被害額は1千万円「親が支払わないといけないですか」

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2023年03月02日 10:31  弁護士ドットコム

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SNSを通じて犯罪の実行役を募る「闇バイト」が問題となっている。SNSで「完全日払い」「即日即金」「日当15万円以上」などとうたい、詳細はTelegram(匿名メッセージアプリ)やダイレクトメッセージ(DM)でやりとりするものだ。


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弁護士ドットコムにも、「闇バイト」に関しての相談が複数寄せられている。



ある男性はTwitterで「闇バイト」を見つけ、運転免許証の写真を送った。途中で怖くなり辞めようとしたところ、電話やメッセージなどで脅迫されたという。



別の20代男性も、「運び」の闇バイトについてDMで連絡していたが、「やはりやるべきではない」と行動には移さなかったところ、「荷受けにしました。毎週30〜50の請求書や知らないものが届きます」とメッセージが来たそうだ。



「身分証明書必須」と運転免許証の写真を送らせることで、逃げ出せないようにする仕組みだ。「闇バイト」で免許証を送ってしまい後から脅された場合、どのように対応すべきなのだろうか。



荒木樹弁護士は「闇バイトで、運転免許証を送付してしまった場合、現状では、個人で対応可能な対策方法は乏しいのが実情です」と話す。



「ほとんどは脅しだけであり、現実に家族等に危害を加えられる可能性は低いのですが、それでも、万が一の危険は否定できません。やはり、早い段階で警察に相談するのが一番の対策になります。既に、闇バイトの一部を手伝ってしまったような場合には、自らも共犯者となる可能性がありますが、それでも、自ら警察に出頭することで、自首の扱いとなり、刑法上、刑が減免される可能性があります」(荒木弁護士)



●息子が「闇バイト」親が被害弁償すべき?

また、息子が「闇バイト」で特殊詐欺の受け子と出し子をして逮捕されたという相談もあった。被害額は総額で1千万円にものぼると言い、女性は「親が支払いしなくてはならないのでしょうか」と尋ねている。



被害弁償をした場合、その後の刑事手続きでプラスになるのだろうか。荒木弁護士は「特殊詐欺で、実刑を免れるためには、被害弁償を尽くすことが絶対に必要であるといっても過言ではないと思います」と解説する。



「基本的に、成人している限り、親であったとしても被害弁償をすべき義務はありません。しかし、そうは言っても、実の子どもですから、刑務所に入ることは避けたいと考えるのが、当然の親心でしょう。そのため、可能な限り、子どもの犯罪について、被害弁償に協力する親は、少なくありません。ただ、特殊詐欺については、検察庁は非常に厳しい姿勢をとっています。そして、特殊詐欺の刑事裁判では、初犯から実刑となり、刑務所に収監される可能性が極めて高いです。たとえ、組織末端の『受け子』『出し子』であって、報酬が少額であったり、あるいは報酬が払われなかったとしても、責任が重いことには変わりありません」(荒木弁護士)



●被害弁償ができない場合は?

とはいえ、特殊詐欺のような事件では、今回のように被害額が大きく、被疑者や家族が全て支払えない場合も多いだろう。被害弁償ができない場合には、実刑の可能性が極めて高くなるという。



「被害弁償ができない場合には、弁護人としては、可能な限り、他の方法での情状立証を探ることになります。例えば、親族からの監督や、雇用先の確保、真摯な反省の態度といったものです。しかし、これらの立証方法のみでは限界があり、被害金額によっては、実刑を免れることは難しいと思われます。詐欺事件で被疑者が刑務所に収監されたとしても、いつかは社会復帰できます。しかし、被害者の被害は、被疑者が被害弁償しない限り、永遠に回復されないということは肝に銘ずるべきだと思います」(荒木弁護士)




【取材協力弁護士】
荒木 樹(あらき・たつる)弁護士
釧路弁護士会所属。1999年検事任官、東京地検、札幌地検等の勤務を経て、2010年退官。出身地である北海道帯広市で荒木法律事務所を開設し、民事・刑事を問わず、地元の事件を中心に取り扱っている。
事務所名:荒木法律事務所
事務所URL:http://obihiro-law.jimdo.com


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