不当逮捕か否か、真実とは何か。映画『Winny』で天才プログラマー金子勇を演じた東出昌大が名演技に拍手!

1

2023年03月15日 13:01  Pouch[ポーチ]

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

Pouch[ポーチ]

写真

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

ピックアップするのは、東出昌大主演の映画『Winny』(ウィニー / 2023年3月10日公開)。本作は、約20年前に社会問題にもなったファイル共有ソフトによる “Winny事件” を描いた作品です。

カテゴリは社会派映画ですが、とてもわかりやすく演出されており、裁判映画としても秀逸。めちゃくちゃ見応えのある映画でしたよ! では、物語から。

【物語】

2002年、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発した天才プログラマーの金子勇(東出昌大さん)。

「Winny」は瞬く間にシェアを伸ばしていくいっぽうで、映画や音楽、ゲームなどを違法アップロードする若者が続出。やがて、社会問題へ発展し逮捕者が出るようになります。

そして、開発者である金子さんも著作権法違反幇助の罪で逮捕されてしまうのです。

しかし、サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大さん)は、開発者まで逮捕されるのは不当だと金子さんの弁護を担当することになるのですが……。

【開発者は裁かれるべき?】

「Winny事件」のことを本作で学びましたが、「革新的だったソフトを開発した技術者の逮捕は衝撃だっただろう」と改めて思いました。

弁護士の壇さんは、金子さんを弁護する理由を、

包丁で殺人事件を犯したら刺した人は逮捕される。でも包丁を作った人まで逮捕されるのか? それは間違っているだろう

というふうに語ります。金子さんは不当逮捕であるから、無罪を勝ち取らなくてはならない。しかし裁判で争う相手は、“警察”。とても手強い相手だったのです。

【金子勇さんの人物像に寄り添う】

この映画は、「Winny事件」で闇に葬られようとしているプログラム開発者・金子勇さん側に寄り添って描かれています。

違法ダウンロードに繋がるソフトを開発したのは事実ですが、金子さんは真のプログラマー

お金にも執着がなく、アイデアを思いつくとすぐにPCに向かい、「何をしているのか」と聞くと説明してくれるのですが、それも専門用語の羅列で……。裁判のシーンでもそういうことがあり、壇弁護士が困り果てる、なんてことがありました。

しかし、知識を使って社会を振り回すようなことを考えるタイプの人間には見えません

映画では金子さんを俯瞰で見れているし、「いい人だから無罪」ではなく変に感情移入をしていないところが良かった。

彼の気持ちを代弁すると言うより、金子さんの身に起こったことを冷静に描き、彼の人となりや開発への情熱から、「Winny事件」の真実とは何かを観客に考える余白を作っているのです。

【東出昌大×三浦貴大の素晴らしさ!】

俳優陣では、金子勇さんを演じた東出昌大と壇弁護士を演じた三浦貴大さんがすごくよかった!

逮捕されたことでプログラム開発の時間を奪われてしまった金子さんですが、どこかひょうひょうとしたユニークな一面もある人。東出さんは、金子さんの個性を上手く生かしたお芝居で、キャリアベストの名演技ではないでしょうか!

そして三浦貴大さんは、決して諦めない弁護士を熱く演じ切っていました。加えて、東出さんと三浦さんの相性がとても良く、金子さんとさんが信頼関係を築いていく過程も自然。本作は東出さんと三浦さんのバディ映画の趣もありましたね。

映画の最後には、金子勇さん本人の映像が流れます。その穏やかな話し方や丁寧な様子は、この映画で描かれていた金子さんそのもの。リアルな金子さんの映像が「Winny事件」の真実を物語っているように思いました。

執筆:斎藤 香(C)Pouch
Photo:(C)2023 映画「Winny」製作委員会

『Winny』
(2023年3月10日 TOHOシネマズほか全国ロードショー)
監督・脚本:松本優作
出演:東出昌大 三浦貴大
皆川猿時 和田正人 木竜麻生 池田大
金子大地 阿部進之介 渋川清彦 田村泰二郎
渡辺いっけい / 吉田羊 吹越満
吉岡秀隆

この記事の動画を見る

    ニュース設定