トヨタ8号車「3周もひどい目に」/ビルヌーブのスピンに伏線?/あのロケットの正体【WECセブリング決勝日Topics】

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2023年03月22日 20:01  AUTOSPORT web

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2023年のWEC第1戦が行われたアメリカのセブリング・インターナショナル・レースウェイ。観客の観戦スタイル、サーキットに漂う雰囲気も独特のものがある。
 2023年のWEC世界耐久選手権は3月17日、セブリング・インターナショナル・レースウェイで開幕を迎えた。このIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権とのジョイントイベントでは、トヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッドが勝利を飾り、耐久レースの新時代をスタートさせた。

 キャデラック、ポルシェ、フェラーリら新規参入勢が増えたハイパーカークラスでは、細かい話題も尽きない。その他のクラスを含め、レース後のセブリングのパドックから、各種トピックスをお届けしよう。

■亡き父に捧げられた勝利
 トヨタは、セブリング1000マイルレースでWEC通算40回目の優勝を果たした。7号車のクルーであるマイク・コンウェイは18勝目を挙げ、WEC史上3番目に勝利数の多いドライバーとなった。彼はこの勝利を、昨年亡くなった彼の父親に捧げた。

 セバスチャン・ブエミは、8号車トヨタGR010ハイブリッドで1分47秒885のファステストラップを記録した。ブエミはレース中盤、7号車小林可夢偉に対してコース上でタイムを失い首位の座を明け渡したが、これについてトヨタは次のように説明している。

「セブ(ブエミ)は、非常にアンラッキーなトラフィックにつかまった」とテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロン。

「彼のペースは可夢偉と同じようなものだったが、彼は3周もひどい目にあったのだ。トラフィックが密集していて、彼をブロックした。これが、(7号車との)ギャップを生んでしまった」

 さらに8号車は、最後のピットストップで、左フロントコーナーでメカニックが転倒し、7号車に比べ11秒の遅れをとった。バセロンは、メカニックが無事であることを確認した。

 8号車のブレンドン・ハートレーは、コンウェイのリードを2秒以内に縮めてチェッカーを受けたにもかかわらず、トヨタは最終ピットストップ時のまま順位を凍結するという、従来からのチーム内の取り決めに従った。

「マイクはイージーに走っていたんだ」とバセロンは言う。

「ブレンドンはリズムを保つためにまだプッシュしていたが、順位は凍結された」

■プジョー9X8はアクチュエーターにトラブル
 プジョー9X8は2台ともアクチュエーターに問題があり、チームは次戦ポルティマオのレースではこれを変更する予定だ。

 テクニカルディレクターのオリビエ・ジャンソニーは、「この問題があることは知っているし、すでに取り組んできたことでもある」と語った。

「そのためにいくつかの解決策を講じたが、(セブリングの)レースでは使用できなかった。レース序盤にこのような問題が発生するとは思ってもいなかった」

 フォーメーションラップでのギヤシフトの問題に加えて、94号車プジョーは、メーカーがこれまで直面したことのないハイブリッドシステムの問題にも見舞われていた。

* * * 
 フェラーリは、499Pのタイヤデグラデーションを改善する必要がある、とGTとスポーツレースカーの責任者であるフェルディナンド・カンニッツォは語っている。

「2スティント目の終盤に苦戦したのは明らかで、次のレースではもっと注意を払うことになるだろう」

* * *
 チーム代表のルカ・チャンセッティによると、708号車グリッケンハウス007はイグニッションスイッチに問題があったという。

「エンジンを再始動する方法がなかったんだ」とチャンセッティは語った。

「クルマは戻ってきたが、残念ながら(ピットではなく)テントの中に牽引されてきたので、再始動は許されなかった。そうでなければ、5分後には再びレースに参加できたはずだ」

 今回のセブリングは、ポディウム・アドバンスド・テクノロジーズ社とヨーストが運営するこのチームにとって、8カ月ぶりの走行となったため、厳しいイベントとなった。

「(第2戦)ポルティマオは簡単ではないが、スパとル・マンは我々のマシンの長所に、より合致している」とチャンセッティは語った。

■ビルヌーブのスピンに伏線あり?
 バイコレスのオペレーション責任者であるボリス・バーメスは、ヴァンウォール・バンダーベル680のデビュー戦は、フロイド・ヴァンウォール・レーシングチームにとって「良いスタート」だったと評した。

「レースの最初の部分は本当に良かった」とバーメスは総括した。

「トム(・ディルマン)はプジョーの近くについていき、同じようなラップタイムを刻んでいた。我々の目標は、ミスをせず、安定した走りをすることだった」

 ヴァンウォールが順位を下げた主なできごとのひとつは、フルコースイエロー導入時に減速した際、エステバン・グエリエリがミケル・イェンセンのプジョー9X8と接触したことだった。

 この接触による右リヤのダメージが、その後のジャック・ビルヌーブのスピンにつながったのではないかと尋ねると、バーメスはこう答えた。

「そうかもしれない。(真因を)知るのは難しいが、それが原因でミスすることはあり得る」

■キャデラックのペースは「予想以上」
 チップ・ガナッシ・レーシングのチームマネジャーであるスティーブン・ミタスは、4位でレースを終えた2号車キャデラックVシリーズ.Rのレースペースを「予想以上」だったと評した。

「フェラーリの不運を最後に利用することにはなったが、我々は表彰台を目指してレースをしており、全力を尽くした」とミタス。

「これまでと同じ努力を続け、この良い結果を積み重ねられるようにしたい」

 なお、第1戦では、ハイパーカークラスのエントリーのうち4台が、レース中にドライブスルーペナルティを受けた。

 2号車キャデラック、5号車ポルシェ、94号車プジョーの3台は、フルコースイエロー導入時にスピード違反を犯している。また、フェラーリAFコルセの50号車は、セーフティカー終了時にライン手前でGTE車両をオーバーテイクしたため、ペナルティを受けることとなった。

■2位フィニッシュなのにランキング首位
 ユナイテッド・オートスポーツのフィリペ・アルバカーキ/フィル・ハンソン/フレデリック・ルビンは、レースでは2位に終わったものの、ランキング上ではLMP2ポイントリーダーとなってセブリングを後にした。

 これは、優勝した48号車のハーツ・チーム・JOTAが、このカテゴリーでフルシーズンを戦うことができないためだ。彼らはシーズン途中より、ポルシェ963のカスタマー車両でハイパーカークラスへと参戦する。

 LMP2の勝者であるウィル・スティーブンスは、プレマ・レーシング63号車との燃費戦略バトルをこう振り返る。

「彼らが最後まで燃料スプラッシュをせずに走れるところに近づいているのは分かっていたから、最後の2〜3スティントではギャップを作ろうとハードにプッシュしたんだ。僕らは40秒を確保する必要があったが、ちょうどそこに到達したところで、彼らがピットインするかどうか確信が持てなかったので、早めにピットインしたんだ」

 一方のプレマは、結局終盤に燃料スプラッシュしたため、WEC初勝利とはならなかった。ドライバーのミルコ・ボルトロッティは、「最終的には、この結果に満足することができる」と語った。

「僕らが燃料補給をしなければならないことは分かっていたので、驚きはないよ」

* * *
 ファビオ・シェーラーは、LMP2で4位を獲得したインターユーロポル・コンペティションについて、来年ハイパーカーに移行する2台体制のチームが3つある中で、このポーランド籍のチームが1台で参戦したことを考えると、「メガ(とても大きなできごと)」であると評した。

「ファクトリーチームと戦うことを考えれば、5位以内に入ることはすべて勝利に等しい」とシェーラーは語っている。

■LMGTEアマで13レースぶりのラインアップ
 LMGTEアマクラスの表彰台が、3つの異なるマニュファクチャラーによって構成されるのは、13イベントぶりのことである。前回のそれは、2020年のル・マン24時間レースで、TFスポーツ(アストンマーティン)、チーム・プロジェクト1(ポルシェ)、AFコルセ(フェラーリ)というラインアップであった。

 今回のセブリングでは、シボレー、ポルシェ、フェラーリの3メーカーが表彰台を分け合った。

 3位に入ったケッセル・レーシングは、WEC初表彰台獲得となった。ドライバーのダニエル・セラは、このクラスで最速のレースラップを刻んでいる。彼は204周目に1分59秒143を記録した。

 プロジェクト1・AOは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているAOレーシングの恐竜をモチーフにしたポルシェ911 GT3 Rの愛称である『Rexy』のステッカーをポルシェ911 RSR-19のリヤに貼り、走行した。

■2024年、セブリングに代わる米国ラウンドは?
 WECは6月のル・マンで2024年のスケジュールを発表する予定であると、チャンピオンシップCEOのフレデリック・ルキアンは述べている。

 2024年の開幕戦として発表されているカタール戦は2月〜3月上旬の開催が予想されていることから、シリーズはセブリングに代わるアメリカラウンドの選択肢を検討しているものと理解されているが、ルキアンは、カレンダーが発表されるまでは「何も言えない」としている。

 WECは今後もウェザーテック選手権と週末を共有するのかとの質問に対し、ルキアンは次のように答えた。

「いずれ分かることだ。IMSAは非常に強力なパートナーであり、忠実なパートナーだ。しかし我々には、WECにベストを尽くすために考慮しなければならないパラメータがたくさんある」

 WECのレース後の表彰式では、IMSA会長のジョン・ドゥーナンがトロフィーを授与した。

 ドゥーナンは土曜日にIMSAラジオのコメンテーターであるジョン・ヒンドホーに対し、WECが今後セブリングに進出するかどうかは「彼らの発表である」と語った。

■フロリダならではの光景
 レース終了間際、フロリダのケープカナベラルからファルコン9ロケットが打ち上げられるのが目撃され、テレビの国際映像もこれを捉えていた。このロケットは、2基のテレビ放送衛星を軌道に乗せるために打ち上げられたものである。

* * *
 セブリング戦を終え、シリーズは急ぎヨーロッパへと向かう(戻る)ことになる。2023年WEC第2戦は、4月16日にポルトガル南部のアルガルベ国際サーキットで行われる『ポルティマオ6時間レース』となる。

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