オリファンのチキチキジョニー・石原祐美子さんが6日の始球式に登板 「応援と感謝の気持ちを届けたい」

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2023年04月06日 11:31  ベースボールキング

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6日に始球式を行う石原祐美子さん [写真=北野正樹]
◆ 猛牛ストーリー【第69回:石原祐美子さん】

 2023年シーズンはリーグ3連覇、そして2年連続の日本一を目指すオリックス。今年も監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。


 第69回は、松竹芸能所属の漫才コンビ「チキチキジョニー」のボケ担当・石原祐美子さん(47)です。

 「オリ姫」歴は6年目ですが、仕事の合間を縫って年間約20試合以上も観戦する熱烈ファン。推しは中継ぎで抜群の安定感を誇る比嘉幹貴投手です。4月6日のソフトバンク戦では『Bs本拠地開幕シリーズ2023 supported by docomo』(京セラドーム大阪)の特別ゲストとして、始球式を務めます。


◆ 「好きなライブハウスの雰囲気と同じように見えた」

 「最近は、ネタ合わせよりキャッチボールをする時間の方が多いですね」。オープン戦終盤の試合観戦後に聞いた石原さんの言葉だ。

 本業のお笑いをおろそかにしているのではもちろんない。神聖なマウンドに立つ決意と覚悟がうかがえた。


 元々は運動オンチ。野球も「打った人がどっちの方向に走るのか、ショートの位置がどこにあるのか、もちろんインフィールドフライなんて言葉も知りませんでした」という。

 きっかけは、知人でパンク・ロックバンド「ガガガSP」のコザック前田さんに誘ってもらった2018年6月5日の甲子園での阪神−オリックス戦。虎ファンの中で少人数のオリックスファンが肩身の狭い思いをするのかと思っていたら、攻撃が始まると立ち上がって一糸乱れず応援歌を歌う姿が「好きなライブハウスの雰囲気と同じように見えた」。

 得点時の曲「得点帝国」が、ガガガSPの「つなひき帝国」と同じメロディーで、「ライブで暴れ回っていた曲」だったことにも惹かれた。

 ゲームは3−2でオリックスが勝利。しかも、中継ぎで登板し生きのいい投球をする若手が同じ岡山県出身の山本由伸と知って、一気にファンに。それでも、一人で京セラや二軍の本拠地・杉本商事BS舞洲に足が向かうのには時間がかかったという。

 「ファン歴数年の私なんかが、コアなファンがいらっしゃる球場に行ってもいいんだろうか、と躊躇していました」。チームや熱心に応援するファンへのリスペクトがそこにはあった。


 やっと行けるようになった京セラやほっともっと神戸での観戦で気付いたことは、ひとりで応援する人が多いことと、応援する人同士の温かい触れ合いだった。

 「球場にいらっしゃる先輩ファンの方々がみなさん優しくて、ひとりで球場に行っても居心地がよかったですね。『観に来てくれてありがとう』みたいに接してもらえて。また、コザックさんが、選手の情報などのウンチクをたれる人ならファンにならなかったですね。ただただ、応援歌を歌うだけ。その応援歌や登場曲を知ることで選手の人となりまで分かってきて、どんどんファンになっていきました」

 なかでも好きな選手が比嘉。「『STAY GOLD』という好きな曲が登場曲。どんな人が出て来るのかと思ったら、すごいピンチの時に顔色ひとつ変えずに抑えて、飄々とマウンドを降りる姿にすごくはまってしまったんです」。

 応援することの楽しさ、声援に応えてプレーで魅せてくれる選手の姿に対する感動。勝ち負けだけではない部分にファンとしての喜びを見出していた石原さんだが、コロナ禍で「応援」に疑問がわいてきたという。

 「コロナ禍で応援歌が歌えなくなってしまい、応援団がいなくなった客席で『応援していたことって、意味があったんかな』と自問自答しました」

 外野を離れ、相手チームのファンがいる三塁側やバックネット裏からも観戦することにした。


◆ 吹っ切れた「ラオウさん」の言葉

 その答えが出たのは、2021年6月22日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)。私設応援団による応援活動が再開された試合だった。

 先発の山岡泰輔が押し出しを含む3四球でわずか26球、一死を取っただけで降板。しかし、一死満塁から登板の2番手・山田修義が無失点で切り抜け、2回にT-岡田のソロで同点に。6回には杉本裕太郎の2点二塁打で勝ち越した。

 その後は漆原大晟、富山凌雅、K-鈴木(鈴木康平)、能見篤史、澤田圭佑(現・ロッテ)と7投手でつないで5−2で勝利。チームは24年ぶりの10連勝を飾った。

 「今日は負け試合だと思ったんですが、応援団の人たちが一生懸命に応援しているんです。私も応援を続けていたら勝ったんです。山田選手と一緒に立ったヒーローインタビューで、杉本選手が『今日から応援団のみなさんが来てくれて、その応援のおかげで打てたと思っています。ありがとうございました』と言って下さった。その時、応援は届いていたんや、応援を必要としてくれていたんや。この瞬間、私の中にあった不安や葛藤がすべて吹っ切れました」

 「本当にラオウさん(杉本選手)って、人と人を繋ぐ天才やなって。ファンとチームも繋いでくれたし、応援の意味も、全部の答えをラオウさんが出してくれたんです。チームもそこからメチャクチャ強くなったんですよ」


 2022年1月から、『J SPORTS』で野球コラムを執筆している。

 「選手の大事な時間を芸人のコラム(取材)に割いてもらうより、ちゃんとしたプロの(記者の)方がいらっしゃるので、ファン目線で書いています」と、ここでも矩を超えることはない。

 今年2月、コラムの取材で初めて宮崎キャンプを訪れた。10人が一度に投げることが出来るブルペンで投げ込む投手に魅せられ、ただボールを受けるだけでなく、投手を盛り立てるブルペン捕手と呼ばれるアシスタントスタッフの姿に感動したという。

 心残りは、ブルペン脇で偶然出会った比嘉に満足な挨拶が出来なかったこと。

 「平野(佳寿)さんと一緒でしたが、『神様ふたりが現れた』と思って、どうしていいのかわからなくなって。私のことを知っていて下さり、『いつも応援していただき、ありがとうございます』と声を掛けていただいたのに、突然に出会ったことに驚いてちゃんと名乗ることも出来なくて。芸人の世界できちんと挨拶することを学んできたはずなのに、失礼なことをしてしまいました」と、今も悔いる。


◆ 「誰もが立てる場所ではない」憧れのマウンドへ

 新見市出身。お笑いに興味があり、大阪教育大入学後に1年先輩の岩見真利さんとコンビを結成した。

 2022年にはプロとしての初舞台から20年を記念する公演が、「第77回文化庁芸術祭」の大衆演芸部門優秀賞を受賞。関西を中心に劇場やテレビ、ラジオで活躍するほか、石原さんは新見市の「新見市ふるさと大使」を務め、岩見さんとともにYouTubeで故郷の魅力などを発信している。

 始球式の依頼を受けたのは、今年2月。「私なんかが投げていいのか」と逡巡したが、「僕が投げたいくらい」というプロ出身の球団職員の言葉に、「誰もが立てる場所ではない。しっかりとコンビで準備しよう」と引き受けることに。

 岩見さんらを相手に、夜の公園や河川敷などでキャッチボールを始めたが、最初は5メートル投げるのがやっと。約1カ月で10メートルに伸び、現在は16メートルまでに。

 上達しなければ、岩見さんに登板してもらう考えもあったそうだが、仕事の合間に京セラで始球式の経験がある先輩芸人のかみじょうたけしさんや、舞洲で投げたことのある代走みつくにさんからアドバイスを受け、キャッチボールの相手もしてもらい、最後の調整に励んでいる。

 「私ひとりなら、あきらめているところでした。相方も毎日付き合ってキャッチボールをしてくれますし、先輩や知り合いら周りのみんなが協力して下さっているので頑張れています。大好きなオリックス・バファローズに応援と感謝の気持ちを届けられるよう頑張ります」


 リーグ連覇や日本一になったことで、チームや選手のメディア露出が増え、新しいファンも増えてきている。

 「私がそうしてもらったように、全力で歓迎します」

 いちファンとして、これからもオリックスの魅力を伝えていくつもりだ。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

このニュースに関するつぶやき

  • いつもレツゴー聴いてます!石原さん頑張って!
    • イイネ!1
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