WEC初の女性ウイナーとなったリル・ワドゥ。自らのオーバーテイクで勝利つかみ「とても誇りに思う」

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2023年05月01日 18:11  AUTOSPORT web

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パルクフェルメで勝利を喜ぶ83号車フェラーリ488 GTE Evoの(左から)アレッシオ・レロベラ、リル・ワドゥ、ルイス・ペレス・コンパンク
 WEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースでは、LMGTEアマクラスに歴史的ウイナーが誕生した。リシャール・ミル・AFコルセからエントリーした22歳のフランス人、リル・ワドゥーが、WEC史上初の女性クラスウイナーとなったのだ。

 昨年、リシャール・ミル・レーシングチームでLMP2マシンをドライブしていたワドゥは、WEC2年目の今年、ブロンズドライバーのルイス・ペレス・コンパンク、フェラーリファクトリードライバーのアレッシオ・ロベラとともに、LMGTEクラスで83号車フェラーリ488 GTE Evoをドライブしている。

 4月29日にベルギーのスパで行われた第3戦、クラス5番手からスタートした83号車は、レース中盤にクラストップに立つと、33号車シボレー・コルベットC8.Rに18秒6の差をつけてクラス優勝を飾った。

■「意志があれば、誰もがドライバー。女性も少年もない」

 シリーズへのデビュー2シーズン目での初勝利となったワドゥは「とても誇りに思う」と語った。

「これはモータースポーツにおける女性にとっての悲願であり、私たちは少年のように運転することができ、同じことができるのだと証明した。そこに意志があれば、誰もがドライバーだ。女性も少年もない」

「“女の子も男の子と同じことができる、両者の間に違いはない”ということを、みんなに証明できてとても良かった」

 ワドゥの勝利は、WECのグリッドに女性ドライバーが増え、その全員が今季ここまでで表彰台を獲得するなか、成し遂げられたものだ。

 プレマ・レーシングからLMP2クラスに参戦しているドリアーヌ・パンは開幕戦セブリングで表彰台に立ち、ラヘル・フレイ/ミシェル・ガッティング/サラ・ボビーのアイアン・デイムスのトリオは、第2戦ポルティマオでGTEの3位表彰台を獲得している。

 ワドゥは、今回の成功が次世代を担う女性ドライバーへの刺激になることを期待している、という

「カートやモータースポーツを志す他の女の子たちに、何かヒントを与えることができたら、と思う」とワドゥ。

「強い精神を持って突き進むこと。それは女の子にとって問題ではない」

 ブロンズ・ドライバーのペレス・コンパンクがスタートを切った後、83号車のフェラーリは、まずワドゥのドライビングでGTEアマの集団前方に踊り出た。彼女はプロトン・コンペティションの88号車ポルシェ911RSR-19のザック・ロビションを2度にわたってパスし、クラストップに立ったのだ。

 決定的だったのは、4時間目の半ばのレ・コンブでのオーバーテイクで、これはAFコルセのフランチェスコ・カステラッチとヴァンウォール・バンダーベル680ジャック・ビルヌーブのアクシデントによりセーフティーカーが導入される、ほんの一瞬前のことだった。

「今日はいい一日だった」とワドゥ。

「ルイスは素晴らしい仕事をしてくれ、5番手まで上げてくれた。これで、ライバルたちに近づくことができた」

「私の第1スティントはトラブルが多くて大変だったけど、その後、第2スティントはより良いものになった」

「マシンはとても速かったし、戦略も良かった。私たちにとっていいタイミングでのセーフティカーもあって、それは少し助けにもなった」

「私が2スティント目を終えたとき、私たちはトップに立っていたし、アレッシオがとても速く、素晴らしい仕事をすることは分かっていた」

「(0.2秒差で2位になった第2戦)ポルティマオと比べ、今日は18秒というアドバンテージを持ちフィニッシュできた。まったく違うストーリーだし、異なる場所だ」

 今回のレースはスタート時のハーフウエットコンディションに対してタイヤ選択が分かれたが、ペレス・コンパンクは、スリックタイヤでレースをスタートしたドライバーのひとりだった。コース上の大部分が濡れていたため、当初は難しい状況だったという。

 彼は序盤が非常に難しい局面であったことを認め、ワドゥにマシンを引き継ぐまで、なんとかクルマを(クラッシュさせずに)ひとつの塊に保とうとしていた、と明かした。

「僕にとっては、本当に悪夢だったよ」とペレス・コンパンク。

「エンジニアからスリックでいくと言われたとき、少し雨は降っていたけど、『分かった、やってみるよ』と言ったんだ」

「後になってみれば、それは正しい選択だったけど、(序盤は)本当に、本当に走るのが難しかった」

「ただ、黒い路面の上でクルマを走らせることに集中し、ミスをしないように努めた。非常に速くて優れたチームメイトが控えていることは分かっていたから、良い形・良いポジションでクルマを届けることができれば、スパでは優勝をかけて戦うことができると思っていたんだ」

「クルマはとてもとても良かったけど、1周目は本当にチャレンジングだった」

「タイヤの温度が上がってくると、だんだんクルマの調子が良くなってきて、自信がついてきて、もう少しプッシュできるようになったんだ」

 開幕戦セブリングでは、序盤のクラッシュによりリタイアを喫していた83号車陣営だったが、2戦連続の表彰台、そして今回の勝利により、ポイントランキングでは2位まで浮上。選手権を争える位置につけている。
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