マシンに合わせてタイヤも進化は必要!? KTMの活躍とロッシの存在/MotoGPの御意見番に聞くスペインGP

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2023年05月03日 13:10  AUTOSPORT web

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2023MotoGP第4戦スペインGPスプリントでの転倒と赤旗中断
 4月28〜30日、2023年MotoGP第4戦スペインGPが行われました。ここからヨーロッパラウンドが始まり、レギュラーライダーは走り慣れているサーキットになりますがまたも転倒続出に……。そしてKTM勢やワイルドカード参戦のダニ・ペドロサの活躍も見られ、バレンティーノ・ロッシの来場やフランセスコ・バニャイアの優勝も見られました。

 そんな2023年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム第4回目です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ 

今回のレースも転倒が多くて、スプリントも本戦もスタートのやりなおしとか荒れた印象でしたね。

 なんて言ったらいいのかな、ちょっと呆れたというか失望したというか、この連中は学習効果という言葉を知らんのかと……(笑)

 スプリントレースの多重クラッシュは推しのフランコ・モルビデリ選手が発端のようだから、あまり悪くは言いたくないんだけど、ホントにがっかりさせられたなあ。まあ、全員無事で再スタートが出来たからいいようなものの、次はどうなるかわからんしね。

 で、本戦はチームメイトのファビオ・クアルタラロ選手がやらかしてしまったし、ヤマハにとっては散々なレースだったね。もっともクアルタラロ選手は例のフロントのスリップダウンが原因のようだから、ペナルティの必要があったのかどうかは疑問だけどね。抗議は受け入れられなかったみたいだけど。

スタート直後のアクシデントに何か効果的な対策はないのでしょうか?

 せっかく予選で鎬を削ってスタート順位を決めているのに、ちょっとしたタイミングやポジション取りで容易にそのハンデを取り戻せると思うからああいう争いになるわけで、グリッドの縦方向の間隔を現行の3mから倍の6mくらいにすればかなり効果はあると思うね。

 或いはスタートしたら最初の1周は追い抜き禁止にして、違反したらロングラップペナルティを課すとかね。この方法は誰が違反したかを正確に判断するシステムが必要だから、現在のレースディレクションに任せるのは無理だよね、ただでさえ判断基準が曖昧で信用されてないし(笑)

でも相変わらず突然のスリップダウンは多発しているので、事故は避けられないですよね。

 そこなんだよね〜。いつまでもこういう状態が続くと、極端な話レースが摩訶不思議な力で支配されているみたいで全く面白くない。今回のレースでは、最後の方でやっと本来のレースらしい力と技のぶつかり合いが見られたけど、ああいうのが本来のレースの醍醐味であって、ファンにしたって決してクラッシュシーンが見たい訳じゃない。

 まあオフィシャルタイヤ制になっているから、タイヤについてどうこう言わないという暗黙の了解があるのかもしれないけれど、そろそろミシュランもなんとかしないとヤバいね。

 そもそもレースは競ってなんぼのもので、そこに技術の進歩もあるわけで、マシンの性能ばかり向上して、もはやタイヤが追いついてないように見えるね。リヤタイヤはともかく、フロントに関しては早急に何らかの対策をしないと、ライダーが消耗品になってしまう恐れがあるよ。いつまでも細いフロントタイヤに、大変な仕事を押し付けている場合じゃないって気付けよって話さ、もちろんマシンの側には問題は無いとは言えないけどね。本来ならタイヤの限界が来れば、マシンはそれをライダーにちゃんと伝えてくれるわけで、それが接地感とかフィードバックとかいわれるもの。それが現在のマシンでは不足しているのかもしれない。だとすれば由々しき問題だな、どこのマシンとは言わんけど。

ところで、スプリントも本戦もKTMが大活躍でしたね。

 P1でワイルドカード参戦のダニ・ペドロサ選手がトップという結果はサプライズだったけど、P2ではアプリリアがワン・ツーで、ドゥカティ一強の構図に変化の兆しが出てきたと思えたね。スプリントも本戦もドゥカティ1台とKTM2台の争いに終始したし、ペドロサ選手も6位、7位と5年前に現役引退したライダーとは思えない走りだった。

 まあ、誰よりへレスを走りこんでいるというアドバンテージを持っているわけだし、彼のテストライダーとしての手腕の確かさが今回証明されただけでなくて、現役ライダー達にも良い刺激になったのは想像に難くない。また昔話で恐縮だけど、アプリリアにマルチェリーノ・ルッキというテストライダーがいてイタリアのムジェロのレースだけワイルドカードで参戦して、現役ライダーを抑えてちゃっかり優勝したりしてたね、40過ぎのおっさんだったけど(笑) ペドロサ選手もそんな存在になってくれると嬉しいね、本当に努力家だし。

今回はドゥカティのバニャイア選手のチャンピオンらしい安定した速さが戻ってきたようですが、このまま突っ走るんでしょうか。

 今回は師匠のバレンティーノ・ロッシが来ていて、「もう少しゆっくり走ったらいい、速いんだから」とアドバイスしたらしいけど、案外それの効果が大きかったかもしれないね。

 マシンのアドバンテージを生かしてぴったり背後につけて、終盤で仕留めるという師匠みたいな勝ち方を身に着けたら無敵かも(笑)

 とはいえ、次のレースはどうなのるのか全く分からないと言うのが本音で、現に前回優勝したアレックス・リンス選手は元々一発屋のイメージが強いとしても、今回はまったく精彩を欠いていたし、理解に苦しむ。前回のレースはライダーのトラックへの適性が勝敗を左右した点で、やはりバイクレースはヒューマンスポーツとか偉そうに言ったけど、結果が明らかなように、今回はマシンのトラックへの適性が結果を左右する大きな要因だったような気がする。

 それが、今回は日本メーカーに共通した現象として悪い方向に表れてしまったことが残念でならない。一方で明らかに良い方向に現れたのがKTM。ライダーの実力が拮抗しているのかもしれないが、2台が揃ってトップ争いに絡むのは明らかにマシンの寄与率が高い。

 KTM機は比較的曲率の小さなコーナーの多いヘレスでも、実に良く曲がっている印象があったので、かつてはドゥカティの十八番だった鋼管トラスフレームの絶妙なしなり具合がマッチしたのかもしれない。とは言えアルミフレームにスイッチしたドゥカティが成功しているのも事実で、結局はそんな単純な理由には帰結しないという事だね(笑)

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