既存のFileMakerユーザーが多くを学び直すことなく新しいことに取り組めるようにしたい - Claris CEOらに聞く【後編】

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2023年05月25日 11:02  マイナビニュース

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すでにお伝えした通り、2023年5月23日にClaris International Inc.(以下、Claris)からFileMaker 2023がリリースされた。日本以外では4月26日にすでにリリースされており、日本では約1か月遅れとなった。また、Claris Connectの料金プランに無料利用枠が新たに登場した。



このリリースのタイミングで来日した同社のCEO、ブラッド・フライターグ氏にインタビューを実施し、日本独自の事情などについてはClaris North Asia Sales Directorの日比野暢氏からも話を聞いた。このインタビューの模様を前後編に分けてお届けしよう。この前編では主にFileMaker 2023や「ローコード開発プラットフォーム」について、後編ではClarisのビジネスについての内容となっているので、ぜひ両方あわせてお読みいただきたい。


-- 3年ぶりのインタビューなので、この3年間についてお尋ねします。Claris社内ではどのような変化がありましたか?



フライターグ ウォーターフォール型からアジャイル型の開発へとシフトし、オペレーションを変えてきました。営業やマーケティングなども含め、お客様により近いところで仕事をするようになってきています。クラリスのプラットフォームで開発をする開発者のエクスペリエンスが、ひいてはプラットフォームを使うユーザーのエクスペリエンスにつながるということを重視しています。企業文化の再構築はCovid-19禍前から始めていたため、短時間でイノベーションを生み出せるようになっています。このため、世界的に経済が厳しい中でも対応でき、良いポジションにいると思っています。



-- ユーザーについては、この3年間の傾向はいかがですか? また、現在のユーザー数はどれぐらいですか?



フライターグ 新規のお客様については、米国では教育市場が最も多く、Apple School Managerと連携する事例が増えています。一方、医療関係については日本がリーダーです。現在の当社の顧客数は、FileMakerのパッケージを購入して使い続けているお客様もいるので正確に把握するのは難しいのですが、組織数で大まかに言うとワールドワイドで100万、日本では20万です。

○既存のFileMakerユーザーが多くを学び直すことなく新しいイノベーションに取り組めるようにしたい



-- 前回のインタビューでフライターグさんは「Claris Connectはより多くの新規のお客様にリーチすることに寄与すると思います」と発言していました。その後3年経ちますが、成果はいかがでしょうか。



フライターグ うまくいっていると思います。Claris ConnectとApple School Managerを統合できることから、特に学校で多く使われるようになりました。そして学校での活用事例から我々が学んだことが、Claris ConnectやFileMaker 2023の開発に活かされています。また、お客様がClaris Connectを入口として、FileMakerやClaris Studio(日本未発売、後述)を使い始めるケースもあります。Claris Connectはリリース当初よりもコネクタの数が増えてワークフローが拡充し、自由度も上がりました。我々は開発者の方々を理解した上で機能を提供しています。今後、2四半期ほどの間にこれまでよりずっと多くの方が使うようになると見ています。



-- 「今後、2四半期ほどの間に」というのは、Claris Connectの料金プランとして新たに無料利用枠が設定されたことを踏まえての見込みでしょうか。



フライターグ それだけではなく、機能の拡充があってのことです。既存のFileMakerのお客様にも新しいイノベーションやクラウドとの統合をぜひ試していただきたいと思っています。クラウドと組み合わせることでいろいろな使い方ができるので、その分野にも我々は投資しています。既存のユーザーが新しいコンポーネントを学び直さなくても、FileMakerを使いながら新しいことができるようと考えています。このようなハードルの下げ方はこれからも継続していきます。例えばClaris Studioに関しても、既存のFileMakerのユーザーが使い慣れた環境で新しいイノベーションに取り組めるようにしています。FileMaker 2023とClaris Connectが、このようなモデルの最初のケースです。



日比野 Claris Studioでの日本での販売開始は、東京データセンターを開設するタイミングになります。11月に、4年ぶりにClaris Engage Japan 2023をリアル開催します。そのときにブラッド(CEO)がまた来日する予定ですが、それまでには。

フライターグ そうですね、私がまた来るときまでに(笑)。

○将来的には1つのプラットフォームに再編、しかし「FileMaker」の名前をなくす計画はない



-- グローバルなプラットフォームとしてそれぞれの国や地域の法律や規制などにどう対応していくか、優先順位などの方針はありますか?



フライターグ 各国の事情に合うようにできるだけサポートしていますが、具体的なポリシーは特にありません。ただ、我々の価値観に照らし合わせて、ロードマップに組み入れています。例えば、プライバシーは人権であるという考え方を我々は重視していますから、データ保護の観点から、高いセキュリティを担保するオンプレミスの環境を残していくといったことです。



-- 「オンプレミスの環境を残す」ということとも関連してお尋ねします。ClarisのUSのウェブサイトには「Clarisプラットフォーム」と「FileMakerプラットフォーム」の比較が掲載されています(インタビューを実施した5月前半現在)。この2つのプラットフォームは、当面、併存するのでしょうか?



フライターグ 短期的には併存します。しかし、できるだけ早く1つに統合したいと考えています。ただし、時期は未定です。開発者も利用者も、どのように利用しているかは多種多様です。プラットフォームが2つあるとどちらを選べばいいのか迷ってしまいますが、1つなら迷うことはありません。1つのプラットフォームであらゆる方に適した使い方ができるようにしたいと考えています。


-- 「FileMaker」という名前はなくなってしまうのですか?



フライターグ なくす計画はありません。FileMakerという名前には歴史がありますし、この名前に対して大きな愛がありますから、決めていません。



-- 「Clarisプラットフォーム」はクラウドを重視しているように見えますが、オンプレミスのサーバや、オフラインでも使えるFileMaker Proはなくならないでしょうか?



フライターグ それらをやめることは視野にありません。当面継続しますし、その「当面」は相当長い期間になります。例えば、オンプレミス環境で利用している場合は、オンプレミスからデータを書き出してウェブやクラウドで活用するというのが典型的なユースケースになるでしょう。



日比野 Claris Studioはクラウドネイティブの開発環境ですが、Clarisプラットフォームがすべてクラウドを前提にしているわけではなということですね。オンプレミス、オフラインでも使用できるFileMakerには多くのお客様がいて、我々のビジネスにとってもきわめて重要な部分です。(小山香織)

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