『怪物』永山瑛太演じる教師の心ない謝罪…坂元裕二のエッセンスが詰まった本編映像

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2023年06月01日 10:01  cinemacafe.net

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『怪物』©2023「怪物」製作委員会
先日開催された第76回カンヌ国際映画祭にて、坂元裕二が脚本賞に輝き、クィア・パルム賞と合わせて2冠となった是枝裕和監督最新作『怪物』。この度、永山瑛太演じる担任教師が安藤サクラ演じる児童の母に“棒読み”謝罪、“坂元節”の効いた会話劇を捉えた本編映像が解禁となった。




「東京ラブストーリー」(91)でトレンディドラマの旗手として脚光を浴び、その後は作風を変化させながら「Mother」「anone」といった社会派ヒューマンドラマや、「最高の離婚」「カルテット」といった大人の恋愛群像劇など、1つのジャンルに収まらない唯一無二の世界観を生み出し、ドラマファンからの絶大な支持を誇る坂元裕二が脚本を務めた本作。

第76回カンヌ国際映画祭では自身初の脚本賞を受賞。今回初のタッグとなる是枝監督のもとで描かれる本作の物語にも注目が集まっているが、その絶妙な会話劇や名セリフ、細部に遊びのあるやりとりを言葉巧みに描く坂元脚本らしさは本作でも顕著に表れている。

そんな本作から解禁されたのは、息子の湊(黒川想矢)が担任教師の保利(永山瑛太)から暴力を受けていることを疑った早織(安藤サクラ)が、学校へ説明を求めに行くシーン。

校長室に案内された早織の前にぞろぞろと教師陣が入室。校長の伏見(田中裕子)が担任教師の保利から謝罪をすると切り出し、保利が座ったままか細い声で「え〜」と話し始めると隣に座っていた教頭の正田(角田晃広)がすかさず「立って」と指摘。

保利は立ち上がり、ボソボソとぎこちない口調かつ、はっきりしない態度で謝罪を述べ始め、早織に頭を下げる。すると周りの教師陣もタイミングを見計らったかのように一同に立ち上がり、保利と共に頭を下げる。あまりにもその場しのぎの様子が見て取れる学校側の対応に早織は不信感を露わにするも、校長は「指導が適切に伝わらなかったものと考えております」と回答。

そんな校長との対話を諦めた早織は、当事者の保利を問い詰めるが、目を見て真摯に問いかける早織に対し、保利は俯いたままティッシュを取り出し鼻を嚙み始める。校長はまるで心がこもっていない弁明を繰り返すのだった…。

シリアスな場面でありながら、役者陣の不自然な言動やしぐさが滑稽でさえ感じられる坂元脚本ならではのエッセンスが散りばめられたひと幕である。

本作では、坂元さんの脚本執筆と登場人物のキャスティングが並行して行われたという。配役が決定することによって、坂元さんによる脚本のキャラクターが膨らみ、物語がますますクリアになっていく過程を目の当たりにした是枝監督は「こうやって坂元さんは本を固めていくんだな」と感心したという。

また、自身の脚本との違いについて「今回は構造も含めて、非常にしっかりとした物語ですよね。僕が普段書くものは“スライス・オブ・ライフ”なんです。日常を切り取り、描写して、その前後を想像させるようなものが多いから、それはたぶん物語ではない。今回も描写の力で持たせているシーンは多少あるけど、基本的に言えば劇映画だと思います。物語のラインが非常に強くて、太いんじゃないでしょうか」と考えを明かしている。

『怪物』は6月2日(金)より全国にて公開。




(text:cinemacafe.net)
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