BreakingDown・瓜田純士「令和は俺が寂聴さんに取って代わる」“コクのある言葉”を紡ぐ理由

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2023年06月01日 17:00  週刊女性PRIME

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アウトローのカリスマ・瓜田純士(43)撮影/矢島泰輔

 1分間最強を決める格闘技エンターテイント「BreakingDown」の人気選手で、元暴力団員という経歴を持つ作家の瓜田純士(43)が、5月19日に日めくりカレンダー『関係ねぇよ』(サイゾー刊)を発売した。

BreakingDownで有名な瓜田純士のワードセンス

 妻・麗子さんと登場するYouTubeチャンネル『瓜田夫婦』は33万人超の登録者を誇り、“アウトローのカリスマ”としても知られる瓜田だが、その秀逸なワードセンスでも支持を集めてきた。

 今回発売したカレンダーにも、彼の壮絶な人生から紡ぎ出されたコクのある言葉が並んでおり、一時期Amazonでは品切れ状態が続いた。

“言葉”によって救われた俺が、言葉こそが物理的な力よりも人を動かす力を持っていることを、真正面から伝えたい」との思いから、今回のカレンダーの企画、発売に至ったと話す。

 タイトルの『関係ねぇよ』に込めた思い、現在参戦している『BreakingDown』との関わり方、最愛の妻・麗子さんとの関係、そして今後について……。
じっくりと語ってもらった。

言葉の大切さに気づいたのは、20代前半に刑務所に入っていたころでした。
生まれて初めて本を読む面白さを知り、世間とシャットアウトされた刑務所の中の人間関係で、先輩受刑者や刑務官たちが発した言葉の重みがダイレクトに伝わってきたんです。

 例えば、某組の元幹部に言われた『ヤクザをしながらも孝行はできる』。その言葉に、親に散々迷惑をかけてきて、出所後が不安だった俺はどれだけ救われたか。

 また、階級章がゴールドの看守長に言われた『それがお前のツッパリか』。上にタテをつくことだけが自分を認めさせる方法ではないということを知りました」

 今回のカレンダー発売のきっかけについて、こう切り出した。顔にまんべんなく彫られたタトゥー。だが、垣間見える表情は、とても穏やかだ。懲役の期間は、瓜田にとって自分の人生を振り返る機会でもあった。

親や他人の言うことなど聞かないで来たはずなのに、『あのときこう言われたよな』という言葉を思い出して、噛み締めた。思えば、俺が魅力的に思い、慕った人たちはみんな、俺の心に響くことを言っていたから好きだったんだ、と気づいたんです。

 とはいえ(刑務所を)出てきてからもいろいろとやらかしてはしまうんですけど(笑)、今の自分を作り上げた大切な経験であることには変わりはありません」

瓜田純士の父親は伝説の暴走族『ブラックエンペラー』二代目総長

 父親は伝説の暴走族『ブラックエンペラー』の二代目総長。東洋一の歓楽街である東京・歌舞伎町で生まれ育ち、“ヤンチャ”という表現では足りないほどの経験をしてきた。10代で暴力団の構成員になり、覚醒剤取締法違反(所持及び使用)で逮捕、懲役に服すことに。

 刑務所内の文芸コンクールで、初めて執筆した小説が大賞を受賞。それをきっかけに出所後は作家という看板を掲げることになる。

 同時に格闘家として、数々の大会にも参加。“アウトローのカリスマ”の呼び名の通り、エッジの聞いた生き様と言動が広く知られるようになっていく。

「10年以上前から作家として活動してきましたが、本や小説となると身構えてしまう人も多い。俺が救われたように、自分や周りの人を大切にする気持ちを育てることができて、小学生くらいの子たちにも刺さる言葉を伝えたいと。そのために何かいい方法はないかと模索していました」

 そんな折、有名人の言葉を集めた日めくりカレンダーの存在を知る。

「これはいいなと。すっと頭に入るし、毎日違う写真ですから飽きないでしょう。
でも、流行っている日めくりカレンダーって、松岡修造さんとか新庄剛志さんとか、ポジティブを売りにしている人が前向きな言葉を言いっぱなしにしているだけな感じがしたんです。

 やたらポジティブな言葉って、実際は突き放しているように俺には思える。ときに攻撃的な言葉だとも思う。学校で先生たちがかけるような、命令口調の言葉にも似ている。そうではなくて、もっと、寄り添えるような言葉を伝えたいと思っていました

 指導したり、導く立場ではなく、悩んでいる人たちに、「あくまでも寄り添う立場でいたい」と語る。

「『お前は今のお前のままでいていい。でも、こう考えたら楽になれるし、もっと自分を好きになれる』って。言葉で受け止めてあげて、いま生きているという、最も大切なことを伝えたいんですね。

 亡くなられた瀬戸内寂聴さんとかの格式張った名言もすごいと思うんですけど。

 それともちょっと違うと思う。『この人、面白いこと言うな、楽しいな。気が楽になったな』と思わせたいというのが基本にあります。ということで、令和は俺が寂聴さんに取って代わるつもりです(笑)」

瓜田純士のカレンダーに並ぶ「言葉」

道で転んだ人に声かける
優しさは大事だが
ウンコ踏んだ奴に
「大丈夫ですか?」ってやるなよ
「見ないふり」も優しさだからな

布団から
出られない時は
布団ごと
移動すればいいんだよ(『関係ねぇよ』より)

 事実、今回のカレンダーに並ぶ言葉はどれも温かく、ユニークだ。このカレンダーのために100近く考え、断腸の思いで31に絞ったのだとか。

 そして、タイトルである「関係ねぇよ」こそに、瓜田の思いが集約されているという。一見すると突き放している言葉のように見えるのだが……。

「『関係ねぇよ』は、俺が最も救われた言葉の一つであり、考え方です。暴力団員のころの思い出ですが、ヘマをやった奴が上の人間に詫びを入れるじゃないですか。できた上の人間ほど『関係ねぇよ』と言う。『お前がここにいるんだからいい。次があるんだからどうってことない』という意味でね。

 出所してから、一時期関わっていた会社の社長も、この『関係ねぇよ』が口癖でした。まあ、結構いい加減な人で、俺もずいぶん迷惑をかけられたんですけど(笑)。
1000万円取られた、関係ねえよ。トラブった、関係ねえよ。そう言って人を許せる人でしたね。

 つまり、何があっても自分がここにいるのなら、たいしたことではない。借金しようが、怖い連中が出てこようが、人生失敗しようが、関係ねぇよ。全てまくってしまえよ。お前の好きにしちまえよ。それが本当の強さなんだよ、と。

 世間のゴタゴタは、自分の生きざまには関係がない。なにより自分の感性を大切にしろ。それを伝えたいんです

自分を大切にすると、人との関わり方がわかるようになる

 言葉の力で変わることができたと確信する瓜田は現在、言葉をかけてくれた人たちへの感謝の思いを込めて、人のために生きることを自分に課しているという。

 話題の『BreakingDown』へも、そのスタンスで参戦しているのだとか。

「いろんなものを受け止めるのが、今の俺の役割だと思っています。選手の思い、運営側の思い、そして見てくれている人たちの思い。俺があえて不良のシンボルになることで、『瓜田さんなら俺の気持ちをわかってくれる』と、救われる奴らが出てくる。

 俺がこの年で身体を鍛えて出場することで『俺もまだまだ頑張れる』と思ってくれる人もいる。単純に、俺が戦っているところを見てスカッとしてくれるのでもいい。
どう思ってもらってもいい。俺が出場することで、多くの人の心を動かすことができているから。まさに『関係ねぇよ』ですね」

 とはいえ、瓜田が『BreakingDown』に出場することに対し、受け止めきれない思いを持っているであろう存在も。連れ添ってきた妻の麗子さんだろう。二人のおしどり夫婦ぶりは時折ネットニュースにも取り上げられるほどだ。

確かに試合でケガをすることに関しては、本当に心配をかけていると思います。
でもうちの奥さんは、俺よりブレないし、強い存在なんです。
そのうえ現実に対してシビア。俺は、たまに面倒くさいことに対して『関係ねぇよ』と放り投げたくなるんですが(笑)、麗子は『BreakingDown』の記者会見での俺の服装や振る舞いなど、細かなところまでよく見ていて、口を出してくる。正直、頭が上がらない。

 今こうやって、冷静に自分を振り返って話せるのも、麗子のおかげでもあります。
一緒になってからずっと、『純士だから大丈夫やで』『誰が何言ってもかまへん。純士のやりたいようにやりや』『うちらが幸せになることが大切や』と、いつも言葉をかけてきてくれた。不安ばかりだった俺に、自分の強さや、生き様を信じていいという確信をくれた。俺の一番のファンでいてくれて、かつ最高のコーチですね」

 麗子さんの言葉からも、瓜田流「関係ねぇよ」の精神が伝わってくる。大切な人からの言葉は、どんな肉体への衝撃よりも遥かに深く、長く影響する。そして、妻へのリスペクトを素直に表す瓜田の姿勢は、感動的なほど清々しい。

 今回の日めくりカレンダーの発売を機に、今後ますます言葉を送り続けたいという。

「まず発売記念のトークライブをするんですが、その後も定期的にトークイベントをやっていきたいですね。まさに寂聴さんの法話会のような(笑)。

 そしてゆくゆくは、麗子と新宿でカフェ的なものを経営して、ファンと交流したり、悩みを聞く仕事をしたいと考えています。

 でも新宿は家賃が高いですから。コーヒー1杯2000円位は取る予定です(笑)。お悩み相談は1回10万円くらいで。そのあたりは麗子に従ってシビアにいくつもりです(笑)

「好きなことだけやるんだ
一度しかない人生」とか
無責任な言葉を信じて
好きなことだけしていたら
借金を抱えて、しまいには
ホームレスになるぞ
やりたくないことも
少しはやれよ(『関係ねぇよ』より)

 受け止めて、笑わせて、少しだけ諭す。アウトローのカリスマの言葉は、どんな道を歩む人の足元でも、優しく照らし続けていく。

著者/瓜田純士 写真/尾藤能暢 発売/サイゾー(定価・1300円+税)

【プロフィール】


瓜田純士(うりた・じゅんし)


1979年、新宿歌舞伎町生まれ。父親は伝説の暴走族ブラックエンペラーの二代目総長。少年時代を不良として新宿や杉並区で過ごし、10代で暴力団の構成員に。獄中で執筆に目覚め、出所後、作家に転身。総合格闘技大会『THE OUTSIDER』旗揚げ戦に参戦後、数々のスキャンダルが話題になる一方、関東連合と対立する友達を描いた『遺書』(太田出版)、『アンサー』(サイゾー)など著書多数。

<取材・文/木原みぎわ>

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